(冒頭)
- 我々がこの場で児童の権利の保護・促進について議論をしている中,何人の児童がどれ程の危険にさらされているだろうか。残念ながら,あまりにも多くの児童が許し難い程の危険な状況に置かれている。児童を取り巻く問題は,虐待や犯罪等の暴力から,児童労働,性的搾取,貧困や紛争下の徴兵といったより複雑な要因まで多岐に亘り深刻である。
(国際社会及び政府による取組)
- このような状況から児童の権利を守り,児童を取り巻く様々な課題に取り組むために,国際社会は児童の権利条約をはじめとする様々な司法メカニズムを構築してきた。併せて,教育環境や保健衛生環境といった具体的な状況改善を図るべく,ミレニアム宣言に基づきMDGらがとりまとめられ,期限を定めた具体的目標を自ら掲げられた。
- これら一連の制度を機能させ,国際社会が掲げた目標を達成できるか否かは,各国の努力次第である。多くの児童は,未だ子どもらしい生活からかけ離れた生活を強いられており,更なる努力が求められている。
(新たな脅威)
- 一方で,新たな脅威も出現している。パイス児童に対する暴力担当事務総長特別代表も指摘するとおり,情報技術の発展とグルーバル化に伴い,国境を越えての児童の権利の侵害といった大きな課題に国際社会は直面している。
- 我が国は,国際組織犯罪防止条約人身取引議定書の趣旨を踏まえ,人身取引の防止,撲滅及び被害者保護を中心として国内外における対策の実施及び協力を促進してきている。2009年12月には,従来の行動計画を改訂し,「人身取引対策行動計画2009」を策定した。また,被害が深刻化している児童ポルノについては,その取締り強化に加え,被害防止,インターネット上の児童ポルノ画像等の流通・閲覧防止,被害児童の早期発見・支援等を充実させるため,児童ポルノ排除総合対策(2010年7月策定)に基づき,官民が連携して児童ポルノの排除に向けた諸対策を推進・実施している。
(コミュニティ・レベルでの取組の重要性)
- 国際社会として児童の権利・保護を推進する上で,時として文化的,社会的,経済的な背景が複雑に絡み合い,社会において弱い立場にある児童,その中でも,特に女児や障害をもつ児童等の権利が適切に尊重されない事態が起こる。こうした問題を克服するため,我々は国レベルのみではなく,地方自治体,地域社会,家族といった重層的なレベルで努力を行っていくことは不可欠であり,各国政府はこれら地域社会等の取組をサポートする施策を講じていくことが必要である。
- 我が国政府としても,乳児の健全な育成環境の確保に向け「乳児家庭全戸訪問事業」や,地域で子育てを支援する場を提供する「地域子育て支援拠点事業」等の取組を行っている。
(結語)
- 健全な未来を望むのであれば,未来を担う子どもたちが,享受すべき権利を享受できる社会を構築することが不可欠である。子どもたちが希望を持てる社会を作ることは我々の責務であり,我が国は,引き続き加盟国,国際社会及び市民社会と協力しつつ,このような社会の実現に向けて努力する所存である。