国連の場における演説
第63回国連総会第三委員会
議題64(c)国別人権状況
奥田紀宏大使によるステートメント(骨子)
平成20年10月29日
(英文はこちら)
1.冒頭・総論
- 本年、世界人権宣言60周年を迎えた。60年前、第二次世界大戦で傷ついた世界では、人種差別や言論統制や不平等が当たり前となっていた。その中で、人々は、人種、皮膚の色、信条、社会的出身等による差別のない、基本的自由を保護する世界を目指してできたこの宣言は、今では最も基本的なものとなった。それは、世界各地で人権擁護に尽力してきた人々の努力なくしては実現しなかっただろう。
2.人権理事会
- 同宣言を初めとして多くの人権条約を策定してきた人権委員会は、国連システムにおける人権の主流化に向け2006年に人権理事会として格上げされた。同理事会は、対話・協力を基礎として、人権状況の改善に向けた「実施」により重点を置いたフォーラムとなることが期待されており、活動も軌道にのりつつある。
- UPRも本年より始動し、我が国も5月に審査を受けた。UPRが真に有効なメカニズムとして確立し成功していくためには、各国の積極的な関与と審査後のフォローアップが重要。我が国は人権理事会理事国として、人権理事会が世界の人権状況の改善に実効的な機能を果たすことが出来るよう、引き続き建設的な役割を果たしていく。
- また、我が国は、OHCHRが現場でのプレゼンスを高め、それぞれの国の状況に応じた複合的な対応・支援を実施することを支持するとともに、そのための支援を継続する考えである。
3.対話と協力
- 我が国は、人権の推進において、「対話と協力」のアプローチを重視。
(カンボジア)
- 我が国はそのアプローチの一環として各国との人権対話を実施している。最近では、カンボジアと人権対話を行い、同国の取組み、課題等への理解向上を図ると共に、効果的な協力分野を検討するための重要な機会として活用している。我が国はこれまで同国に対して、民法・民事訴訟法の起草支援やKR裁判の進展に向けた協力を実施してきている。今後も対話を通じた相互理解の向上と支援分野の特定という我が国のアプローチを堅持していく。
(スリランカ)
- 我が国は、スリランカ政府の人権に関する行動計画(National Action Plan)策定に向けた取組を歓迎しており、キャパシティ・ビルディング等の支援を継続していく考えである。他方で、人権状況の改善にはスリランカ政府の主体的取組が不可欠である。国内の治安維持の重要性には理解するものの、IDPの安全確保を含め、人権保護・促進のための更なる取組を期待している。
4.個別の人権状況への取り組み
- 全般的な世界の人権状況は改善されつつあるものの、残念ながら人権侵害は引き続き存在する。継続的かつ深刻な人権侵害に対しては、国連機関が然るべく迅速に対処し、国際社会としての一致してメッセージを発出し、改善を求めていく必要がある。
(1)北朝鮮
- 事務総長及び特別報告者の報告から、北朝鮮では、引き続き広範にわたり、組織的な人権侵害が行われていることが改めて明らかになった。北朝鮮は、こうした指摘に対して、具体的に対応すべきであろう。
- 拉致問題については、北朝鮮は、調査のやり直しを実施することをを約束しながら、未だに着手していない。我が国は、日朝平壌宣言にのっとり、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸なる過去を清算して国交正常化を図るとの方針。北朝鮮が、調査委員会を立ち上げ、調査のやり直しを行うとの約束を早期に履行することを改めて求めたい。
(2)ミャンマー
- ミャンマー政府がキンタナ特別報告者の訪問を受け入れたことを評価。今後、ミャンマー政府がガンバリ国連事務総長特別顧問を始めとした国連の周旋努力に、対話を始めとしたより具体的な形で応じ、すべての関係者が参加する形で同国の民主化及び人権状況の改善が進展することを強く希望する。
4.結語
- 人権の保護・促進のためには、各国がこれに不断に取り組んでいく必要がある。我が国も例外ではなく、国内の人権問題の解決、法制度の改善のための努力を継続している。
- 我が国は、人権状況の改善を自らの課題として取り組むと共に、国際社会の共通の問題として、国際社会、特に国連と協力しつつ、世界各地における人権状況の改善に取り組んでいく所存。