演説

国連の場における演説

第63回国連総会第3委員会における議題64「人権の保護・促進」
(b)「人権問題(人権及び基本的自由の効果的な向上のために選び得るアプローチを含む)」及び
(e)「障害者権利条約」
黒崎伸子政府代表代理によるステートメント(仮訳)

平成20年10月28日

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議長、

 人権は国際社会共通の普遍的価値であり、日本外交の重要な位置を占めてまいりました。我が国は、人権理事会や本第3委員会をはじめとする国際人権フォーラムの、人権問題の改善に向けた基本的アプローチである「対話と協力」に基づき、これまで、アジア諸国を中心に10カ国以上と人権対話を実施してまいりました。対話においては、各国の人権状況やその改善に向けた取組への理解を深め、各国が抱える課題についての認識を共有することを目指し、司法改革支援等、具体的協力につなげてきております。

 また、先月の第9回人権理事会において、我が国が主提案国として提出し、コンセンサス採択された「カンボジアの諮問サービス・技術協力」決議は、カンボジアとの人権対話の結果を踏まえて我が国が調整したものです。本決議への各国の支持に感謝するとともに、本決議に基づいて国際社会によるカンボジアへの具体的協力が進むことを期待します。我が国としても、我が国の支援で起草された民法・民事訴訟法の適切な運用に向けた支援やクメールルージュ(KR)裁判の完遂に向け引き続き協力していく所存です。

 人権の促進は時間のかかる困難な事業です。我が国は長期的コミットメントを重視しながら、各国のニーズに応じた支援を行い、各国と共に人権問題の改善に取り組んでいく所存です。

議長、

 平和や開発など様々な分野での国連の活動における「人権の主流化」は、個人とコミュニティの保護及び能力強化を通じて人々が自己の可能性を実現し、尊厳ある生命を全うできるような社会造りを目指す「人間の安全保障」のアプローチとも整合性のあるものであり、「人間の安全保障」を外交の柱の一つとして位置付けている我が国として強く支持します。我が国は、国際場裡のみならず国内においても女性の地位向上に取り組んでおり、今後一層女性の視点を施策に取り入れるべく努力していきます。また、高齢者、児童、障害者等の社会的弱者の保護の更なる拡大を目指しております。

議長、

 我が国は、ハンセン病患者及びその家族の人権問題を国際的に取り上げており、本年6月の第8回人権理事会では「ハンセン病差別撤廃決議」を主提案国として提出し、59の共同提案国の下コンセンサス採択されました。我が国は、国際社会と共にハンセン病患者及びその家族に対する差別の解消をさらに進めるために、本決議のフォローアップに尽力し、引き続きイニシアティブを取って活動する所存です。明年1月には、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)主催によりハンセン病差別撤廃に関する会議が開催予定です。同会議は、ハンセン病に対する正しい理解を国際社会において共有し、偏見をなくしていく上で極めて重要と位置付けており、我が国としても会議の成功に向け尽力する考えです。各国政府、NGO関係者からの積極的参加を呼びかけたいと思います。

 ハンセン病は、歴史上古くから差別の対象となった疾病ですが、HIV/エイズなど比較的新しい疾病の患者や感染者の人権の保護も同様に尊重されなくてはなりません。我が国は、主に世界基金を通じてこれらの患者・感染者の健康の権利のために国際的に貢献すると共に、国内の患者や感染者への差別・偏見の解消等を図るための自治体やNGOと連携しての啓発活動や、感染当事者の雇用機会拡大を図るために、雇用者に対し、感染当事者との協働を促進するキャンペーンを実施しております。

議長、

 我が国では、障害の有無にかかわらず誰もが人格と個性を尊重し支え合う社会の実現を目指し、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的に推進しています。障害者権利条約は、障害者の人権及び基本的自由の完全な実現を確保する上で重要な意義を有するものであり、本年5月の条約発効を歓迎します。我が国は昨年9月に条約に署名しており、現在締結のために必要な検討を行っています。障害当事者等関係者の意見も踏まえつつ、可能な限り早期の批准を目指して検討を進めていく所存です。

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