演説

国連の場における演説

第63回国連総会第3委員会
議題60「児童の権利促進・保護」
(a)「児童の権利促進・保護」及び(b)「児童特総フォローアップ」
黒崎伸子政府代表代理によるステートメント(和文仮訳)

平成20年10月15日

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議長、

 世界人権宣言採択60周年の記念すべき年に、我が国は、児童の生存及び発達を確保する同宣言の基本原則を再認識し、国際社会の協力の下で、将来ある子どもたちが健やかに成長できる社会作りに向けて、決意を新たにする。

議長、

 我が国は、2001年の日本での開催に続き、本年11月にリオデジャネイロにて「第3回児童の性的搾取に反対する世界会議」が開催されることを歓迎し、主催するブラジル政府、ユニセフ、国際エクパット(NGO)、児童の権利条約NGOグループに敬意を表する。今回協議される5つのテーマ(性的搾取の形態とその新しいシナリオ、法的枠組みと説明性、セクターを越えた政策統合、社会的責任のイニシアティブ、国際協力のための戦略)について、様々なセクターからの参加者による活発な議論が、児童の性的搾取根絶に向けた国際社会による公約のモメンタムを維持することを希望する。また、前回主催国である我が国も、引き続き各国政府、国際機関、市民社会と協力し成功につなげていきたい。

議長、

 武力紛争下の児童の問題に関し、各国政府や国連機関を含む国際社会の取組を通じて具体的な改善が見られることを歓迎するも、同時に課題は残っている。

 紛争復興過程で、児童に関する課題の一つには、解放された元児童兵のコミュニティへの再統合がある。全ての関係者を関与させた包括的なアプローチと持続的な国際社会の支援が必要であり、心身のケア、教育、職業訓練といった児童に対する支援と保護提供のみならず、児童に優しい環境を提供するコミュニティ開発も含まれる。それは、貧困や紛争に起因する脅威にさらされている個人及びコミュニティの保護と能力強化にフォーカスする、人々を中心としたアプローチの重要性を示している。すなわち、我が国が、人間の安全保障フレンズ会合の開催や人間安全保障基金を通じた支援により、世界で促進してきた人間の安全保障のアプローチである。例えば、我が国は同基金を通じて、国連児童基金(UNICEF)及び国連食糧農業機関(FAO)がコンゴ民主共和国において実施する「コミュニティ参加を通じた子供に優しい環境整備支援プロジェクト」を支援しており、教育、保健、水・衛生に関わる環境整備を促進している。

議長、

 児童の生存及び発達の権利は、児童の権利条約における基本原則のひとつであり、いかなる状況においても保障されなければならない。武力紛争、貧困や飢餓の状況において、児童は最も脆弱で生命の権利がおびやかされており、実際に多くの児童が命を失っている。そして、サブサハラ・アフリカにおける女性のHIV感染の急速な拡大は、母子感染やエイズ遺児の問題の深刻化を招き、また、世界には、重度の栄養不良にかかっている5歳未満児が2,000万人おり、緊急に治療を必要としている。したがって、児童の生存及び発達の権利の保障は、貧困と飢餓の撲滅、教育、ジェンダー、保健を含む幅広い問題として対応が必要であり、これらはミレニアム開発目標(MDGs)に深く関連する。本年は2015年の達成に向けたMDGsの中間年であり、我が国は、第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)及びG8北海道洞爺湖サミットを開催し、国際努力の取組強化のための議論を主導した。我が国は子供たちの良質な医療サービスのアクセス改善をはじめとする積極的な貢献を続けることで、児童の生きる権利の保障に努める所存である。

議長、

 児童虐待問題は我が国を含め世界中で起こっている。今日では、子どもの貴重な命が奪われるなど重大な事件の発生も稀ではなく、児童虐待問題は社会全体で早急な対応が必要である。この問題には、虐待の発生予防、早期発見・早期対応から虐待をうけた子どもの自立に至るまでの切れ目のない総合的な支援が必要である。我が国は、関連国内法の強化のみならず、児童虐待防止のための広報・啓発活動など様々な取組を実施し、家庭や学校、地域など社会全般にわたり、当該問題に対する深い理解が得られるよう取組を推進している。我が国は、社会はすべての子どもの権利を尊重し、子どもらしく生きやすい場所であるべきだと強く信じ、その実現に向けて、引き続き加盟国、国際機関、市民社会と協力していく所存である。

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