演説

国連の場における演説

第63回国連総会第3委員会における
議題56「女性の地位向上」
(a)「女性の地位向上」及び(b)「北京フォローアップ」
黒崎伸子政府代表代理によるステートメント(和文訳)

平成20年10月13日

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議長、

 我が国は女性の発展は全ての人のための発展であると信じており、その原則は、北京行動宣言・行動綱領を含む国際的に合意された文書を実施するためにも遵守されなくてはならない。右実施を中心とし、我が国は、国内、国際レベルでジェンダー平等な社会を創設するための活動に継続して取り組んでいる。本日は、特に女性に対する暴力撤廃及び社会におけるジェンダー平等と女性の地位向上のための我が国の考えとそれに基づく取組について述べる。

議長、

 我が国は、重大な人権侵害である女性に対する暴力撤廃に向けた取組に力を入れている。我が国では、例えば配偶者暴力防止法(「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」)を一部改正し、2008年1月から施行している。同改正では、各市町村に配偶者暴力相談支援センターの設置が努力義務として課せられた他、被害者のみならず被害者の親族等への接近禁止命令を発することができることとなるなど、被害者保護の拡充が図られた。

議長、

 国際社会は、包括的にかつ一致してこの問題に取り組む必要がある。紛争地域における女性に対する暴力は引き続きまん延しており、我が国は、安保理が「女性・平和・安全に関する安保理決議1325」を2000年に初めて採択したのに続き、本年6月の「決議1820」で右問題に対する政治的コミットメントを再確認し、具体的な方策の実施を要請した点を評価しており、他の51ヶ国とともに共同提案国となった。

 紛争の再発を防止するためには、和平プロセスの意思決定に男女が平等に参画すること及び、男女双方が平和教育を受けることが重要である。また、紛争後の社会再建において、法律、政策、制度の構築にジェンダーの視点を組み入れることも必要である。平和構築の関係では、女性を単に紛争の被害者として捉えるのでなく、平和構築に貢献する主体としての女性の参画が重要であると考えている。これらの視点に基づく我が国の支援は、コンゴ、リベリア、エリトリア、アフガニスタン等の国々で実施され、当該地域の社会再建に貢献している。

議長、

 我が国は、事務総長主導の女性に対する暴力撤廃キャンペーンの開始、及びミギロ副事務総長主導の「FGMの撲滅」キャンペーンのアピールに賛同し、我が国としても引き続き積極的にこれに参加したいと考えている。

 また、UNIFEMが行っている女性に対する暴力反対(Say NO to Violence against Women)キャンペーンに、既に多くの国の閣僚が署名していることを承知している。女性に対する暴力撤廃について広く理解してもらうため、我が国では毎年11月12日~25日まで「女性に対する暴力をなくす運動」を実施しているところであり、国際社会と協働し、世界の全ての国において女性に対する暴力を根絶するためにも、同なくす運動と本キャンペーンとが連携して積極的に推進すべく、我が国の閣僚が本キャンペーンに署名するための準備を進めているところである。

議長、

 来年(2009年)は「男女共同参画社会基本法」の制定から10年を迎え、我が国における男女共同参画社会の実現に向けた取組は、新たなステージへと向かっている。

 例えば、我が国は、2008年をいわば「仕事と生活の調和元年」とし、働き方の改革を最優先課題として取組んでいくとともに、保育サービスをはじめとする子育て支援の社会的基盤の充実を通じ、男女ともに仕事、家庭生活、地域活動など様々な活動を希望に沿った形で調和して実現できるようにするための取組を進めている。

 昨年(2007年)末には、「仕事と生活の調和憲章」と、具体的な数値目標を含む「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を定めた。この中において、2017年までの目標値として、男性の育休取得率10%、女性の育休取得率80%、第一子出産前後の女性の継続就業率55%を掲げた。

 我が国は、他国の実践例も参考としながら、引き続きワーク・ライフ・バランス実現のための社会的気運の醸成、企業の取組の促進、長時間労働の抑制のための重点的な指導等に取り組み、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」の目標値達成を含むワーク・ライフ・バランス推進のための取組を推進する所存である。

議長、

 女性に対する暴力、ジェンダー平等、女性の地位向上を含め、国連の活動に横断的に関与するジェンダー問題に対応するためには、国連システム内での調整と戦略的なパートナーシップ構築が極めて重要である。我が国は、国連が一貫性をもって、効率的かつ効果的にジェンダー関連事業を推進することができるよう、我が国も現在進行している議論に積極的に参加し、貢献する所存である。

議長、

 社会通念、社会システムや政策は、一般的に、男性の視点に基づいて形成されていることが多く、ジェンダー主流化が十分進んでいるとは言えない状況が依然多く見られる。我が国は、女性の地位及び権利向上のために、ミレニアム開発目標の中間年である本年、その達成に向け、国際機関、国際社会、そしてNGOを含む市民社会と共に一層取り組んでいく決意を新たにしている。

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