演説

国連の場における演説

第63回国連総会第3委員会
議題97「犯罪防止刑事司法」及び議題98「国際薬物規制」
角茂樹国連日本政府代表部大使によるステートメント(仮訳)

平成20年10月9日

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議長、

 グローバル化の急速な伸張に伴い、人身取引、移民の密入国、銃器の不正な製造及び取引、サイバー犯罪並びに資金洗浄を含む国際組織犯罪、テロ、薬物及び腐敗は、我々の市民の安全と我々の社会及び制度の安寧を脅かしています。これらの問題は、いずれも各国ごとの努力のみで防止し得るものではなく、効果的に対処するためには、強い国際的な協力・協調がなければなりません。

 我が国は、これらの脅威に取り組むためのキャパシティ・ビルディングの努力を行う国々への支援の重要性を認識するとともに、これらの協力・協調を行う基礎として、関連する条約やその補足議定書の実施に対する強い支持を改めて表明します。

 この点で、我が国は、3つの重要な点を指摘したいと思います。

 まず、国際組織犯罪、テロ、薬物問題、腐敗が幅広いつながりを有していることを認識し、包括的なアプローチをとることです。

 2つ目は、法の支配の確立、人材育成、社会・経済インフラの果たす役割が、これら問題の解決に不可欠な役割を果たすことを認識するべきです。

 3つ目は、問題を解決するための対策支援に人間の安全保障の観点を付加することです。違法な麻薬の生産や犯罪が起こるコミュニティでは、しばしば個人は甚だしい貧困や社会経済的不安定性といった脅威に晒されています。したがって、個人を保護し、個人・コミュニティを強化するとの人間の安全保障の観点から、措置を講じることが重要です。

議長、

 人身取引の分野では、国連人身取引対策に関するグローバル・イニシアティブ(UN.GIFT)が、国連内外で既に幅広く認知されていることを確認します。我が国は、このイニシアティブが、今後も地道に各国の人身取引との闘いに向けたアドボカシーに役割を果たすとともに、技術協力の効果を上げるのに役立つものとなることを期待します。また、我が国は、これまで人身取引撲滅のためにさまざまな国内措置をとるとともに、現地における被害者支援のための協力を行ってきており、犯罪防止刑事司法委員会の場でも人身取引対策への協力を呼びかける議論をリードしてきたことを指摘したいと思います。

 テロ対策の分野では、我が国は、既に13ある全ての国際テロ対策条約及び議定書を批准しました。また、2003年からは、我が国は、アジア・大洋州諸国を対象に毎年1回、それらの条約及び議定書の批准及び実施を促進するためのセミナーを開催し、これが、アジア・大洋州各国の対テロ法制整備の一助となったことを報告致します。

議長、

 腐敗に関し、我が国として、腐敗対策によるガバナンス向上の重要性を指摘したいと思います。本年のG8サミットにおいては、国連腐敗防止条約(UNCAC)の批准とUNCACの効果的な実施、そして、パートナー国に対する技術支援の重要性の認識などが表明されています。今後、UNCACの実施レビューシステムについてのTORにつき速やかに合意され、右システムがなるべく早く開始することを期待します。

 なお、この関連で、我が国に本拠を置く国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)は各国の刑事司法実務家を対象に腐敗に関してもさまざまな研修・セミナーを実施しておりますが、その一つとして、本年初めに世界各国の刑事司法担当の高官を対象にセミナーを開催し、腐敗対策のための包括的な議論を行い、認識を深めることができたことを紹介したいと思います。

 薬物問題に関し、来年は、UNGASS後の10年のフォローアップが行われます。我々は、UNGASSのモメンタムと、薬物問題への取組への意思を維持しなければなりません。この10年間、我が国は、UNGASSで設定された目標を満たすために努力し、UNGASS関連事業を強く支援してまいりました。アフガニスタン、イラン及びパキスタンを含むその周辺国の薬物のみならず、アフリカを経由地とした薬物の不法流通の問題、また、アジアにおける化学薬物の問題が益々深刻化されていることが認識されています。また、我が国は麻薬対策支援のシナジーを高めるために、過去3年間薬物に関するドナー調整会合(中央ダブリン・グループ)の議長を務めました。我が国は、かかる問題を踏まえたUNGASSのフォローアップに関する麻薬委員会での議論を歓迎します。 

議長、

 結びに、世界から国際組織犯罪、テロ、薬物及び腐敗を根絶するための国際的な努力への我が国のコミットメントを再確認したいと思います。これらの問題は複雑で、解決するには長期間の関与が不可欠です。その関連で、我が国は国連薬物犯罪事務所(UNODC)の果たしている役割を高く評価します。我が国は、UNODC及び関連する国際機関と密接に協力していきます。

 我が国は、国際社会の努力の結集が状況を変えることができると信じ、今後も全ての者の利益のために、国際組織犯罪、テロ、薬物及び腐敗のない社会の実現を目指して努力を強化していきたいと考えています。

 ありがとうございました。

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