演説

国連の場における演説

第63回国連総会第三委員会
議題55社会開発
黒崎伸子政府代表代理によるステートメント(仮訳)

平成20年10月6日

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議長

 「社会開発」とは比較的新しい概念であり、経済発展に伴い生じがちな貧富の格差を是正する必要から生じたものです。社会開発の重要性を認識し、1995年にコペンハーゲンで初めて社会開発サミットが開催されました。同サミットでは、「人間を開発の中心におく」ことがコンセンサスで決まりました。つまり、「人間の安全保障」を開発の中心におくということです。また、1)貧困撲滅、2)雇用拡大、3)社会的統合の推進を社会開発の中心課題として、広い範囲にわたる社会問題が総合的に取り上げられました。これら三分野は相互に関連・補強するものですが、2009~2010年の社会開発委員会の優先分野である社会的統合について述べさせていただきます。

議長

 経済社会理事会は、社会的統合政策は、不平等をなくし、基本的な社会サービスへのアクセス、万人への教育、医療を促進し、社会的グループの参加と統合を進めるべきと確認しました。社会開発サミットから10余年が経過しましたが、未だ数多くの国が貧困の最中にあり、社会的統合の段階に達していません。日本は、社会的統合を強化するために、国内及び世界において、様々な活動を行ってきています。

議長

 「万人のための社会(“society for all”)」を実現するにあたり、すべての個人及び集団の生涯にわたる社会貢献を促進させる必要があります。そのためには、市民の相互依存と生涯学習の二点について考慮する必要があるのです。「万人のための社会」の重要な要素の一つに高齢者による参加を保障する「すべての年代のための社会(“society for all ages”)」があります。我が国では、急速な高齢化が進行しており、65歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合は、2007年には21.5%を占め、将来、更に高齢者の割合が増加し続けると予測されています。こうした人口の変化に対応するため、各種施策を総合的に推進しています。例えば、2007年については、労働者の募集・採用における年齢制限を原則として禁止する雇用対策法の改正や、高齢化・多様化する福祉ニーズに適切に対応できる人材を確保・養成するための制度の強化が行われました。

議長

 我が国では、障害の有無にかかわらず誰もが人格と個性を尊重し支え合う社会の実現を目指しています。障害者の自立と社会参加を総合的に推進するため、昭和58年度以降10年間の長期計画を策定してきています。現在の「障害者基本計画」は平成15年度~24年度を対象としており、日本政府は「障害者基本計画」を策定しました。現在、同基本計画の後期5年間における障害者施策の着実な推進を図るための「新5か年計画」の着実な実施に向け努力していきます。

 また、昨年9月に我が国は障害者権利条約に署名し、現在締結のために必要な検討を行っています。障害当事者等関係者の意見も踏まえつつ、可能な限り早期の批准を目指して検討を進める所存です。

議長

 我が国政府は、HIVやハンセン病などの感染症への正しい理解と偏見や差別をなくすための啓発活動を促進しています。これらの感染症にかかった患者等が、これらの感染症に対する正しい知識と理解が十分でない周囲の人々の誤った知識や偏見などにより、日常生活、職場、医療現場などで差別やプライバシー侵害などを受ける問題が起きています。我が国は、被害者の人権保護のため、差別事案についての相談及び調査を行っています。

 ハンセン病差別問題に関し、我が国は本年6月の第8回人権理事会に「ハンセン病差別撤廃決議」を提出し、59ヶ国の共同提案国の下でコンセンサス採択されました。本決議は全世界でハンセン病に関連する差別問題に苦しむ人々の人権を守るため人権理事会においてハンセン病差別問題を議論し、差別を撲滅するための実効的な方法等を検討することを目的としており、この決議が国際社会で適切にフォローアップされるよう努めていきたいと思います。

議長

 我が国は、貧富の格差、男女の格差、人権・民主主義や環境への留意等、当該国の社会的統合の推進を考慮し、政府開発援助(ODA)を実施してきました。我が国は、ODAを実施するに当たり、個々の人間に着目した「人間の安全保障」の視点を基本方針としている。我が国は、個々人の生活や尊厳を守るため、二国間援助に加え、国連に設置した人間の安全保障基金を通じて、プロジェクトを実施・支援してきています。

 例えば、UNDP、UNFPA及びIOM他が人間の安全保障基金よりの支援を受けてモルドバにて実施する「モルドバ共和国における人身取引及び家庭内暴力の被害者の保護及び能力強化プロジェクト」は、人間を開発の中心におき、社会への全面的参加、社会保護の強化、脆弱性の低減を目的としています。これらの問題は、第36回社会開発委員会報告書において社会的統合の達成のために対処すべき諸点として扱われています。

議長

 我が国は、1995年のコペンハーゲン社会開発サミット及び第24回国連特別総会のコミットメントの実施を引き続き支持するとともに、国連ミレニアム宣言及び首脳会合成果文書を含む国際的に合意された開発目標を実施するとのコミットメントを今後とも実施していく所存です。

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