平成20年2月28日
(英文はこちら)
はじめに、日本政府を代表し、新しい議長及びその他のビューローメンバーが選出されたことに祝意を表します。
議長、
今次婦地委の優先テーマである「ジェンダー平等及び女性のエンパワーメントのための資金調達」は不可欠かつ時宜を得たテーマです。ジェンダー平等な社会を創設するために、あらゆる意思決定段階に女性の参画が重要であることは、北京行動綱領をはじめ、これまでさまざまな形で確認されてきたことであり、我が国としても、数値目標を掲げて取組を進めているところです。しかし残念ながら、UNDPによるジェンダー・エンパワーメント指数において低い順位にとどまるなど、未だなすべきことが多く残されており、我が国としても、男女共同参画社会のさらなる推進のためには、結果に結びつく資金調達の仕組の改革が重要であることを認識しています。
議長、
男女共同参画施策の推進を図るため、我が国政府は、5年計画である男女共同参画基本計画を定めるとともに、ナショナル・マシーナリーである内閣府男女共同参画局が、毎年男女共同参画推進関係予算として男女共同参画基本計画に関連する施策に関する予算の取り纏め等を行っているところです。
それでは、日本の取組をいくつか紹介させて頂きます。はじめに、我が国では、2008年を「仕事と生活の調和元年」とし、働き方の改革を最優先の課題として取組んでいくとともに、保育サービスをはじめとする子育て支援の社会的基盤の充実を通じ、男女ともに仕事、家庭生活、地域活動など様々な活動を希望に沿った形で調和して実現できるようにするための取組を進めています。
「仕事と生活の調和の実現」については、2007年末には、今後の取組の大きな方向性を示す「仕事と生活の調和憲章」と、具体的な数値目標を含む「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を定めました。今後は、その内容を踏まえ、仕事と生活の調和の実現のための社会的気運の醸成、企業の取組の促進、長時間労働の抑制のための重点的な指導等に取り組んでいくこととしています。
また、重大な人権侵害である配偶者からの暴力について、その防止及び被害者の保護等を積極的に推進するため、配偶者暴力防止法(「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」)が一部改正され、2008年1月から施行されました。同改正により、地方公共団体の取組を促進し、地方公共団体と民間団体の連携が強化されることで、被害者のニーズに合致したきめ細かな支援が実現できることを期待しています。
さらに、生涯を通じた女性の健康の保持増進と、安心、安全に子供を産むことができるよう支援するため、生涯を通じた女性の健康支援についても取組を進めています。
議長、
我が国はまた、国際協力分野においても第4回世界女性会議(1995年)において「途上国の女性支援(WID)イニシアティブ」を発表して以降、モンゴルにおける「ジェンダーに配慮した予算立案のためのキャパシティー・ビルディング」等開発における女性のエンパワーメントに向けた支援に取り組んできました。
他にも、2007年7月には「女性と貧困撲滅に関するASEAN+3 人間の安全保障シンポジウム」を「女性の人権連合」(Association of Human Rights of Women)と我が国が共催しました。ASEAN各国からジェンダー専門家を招いての専門家会合では、ASEAN諸国と日本・中国・韓国が貧困を撲滅する方策として、「ASEAN+3諸国における貧困の女性化を削減するための提言」が報告されました。
2007年8月には、外務省、UNDP、NGOとの共催の下でシンポジウムを東京で開催し、ジェンダー及びケア・ワークの視点を各国の経済政策や開発援助政策に反映する重要性を広く共有することに努めました。「ケア」という重責は多くの場合、女性による無報酬の労働で担われています。女性の無償労働・過重労働の上に成り立った社会システムのままでは、MDGs達成の大きな障害となります。したがって、MDGs達成のためは、「ケア」におけるジェンダー役割分担を把握し、ジェンダー平等の視点に立って、政策・戦略をたてることが重要であると考えます。
議長、
2008年は、我が国にとり、第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)及び主要国首脳会議(G8サミット)を開催する極めて重要な年です。特に本年5月に開催されるTICAD IVでは、アフリカ開発のための国際社会の知恵と資金を結集するための日本の手腕が試されます。また、7月に開催されるG8北海道洞爺湖サミットでは、国際社会が抱える諸問題への取組、特に気候変動問題への取組につき、日本は議長国としての指導力を発揮することが求められています。国連婦人の地位委員会において「気候変動とジェンダー」が議題「新たな課題」の下で議論され、「女性=弱者」といった通り一遍のとらえ方を越え、新しい切り口の議論が行われることを期待します。
議長、
社会通念、社会システムや政策を如何に変えるかは、一般的に、男性の視点に基づいて形成されていることが多く、家庭における無報酬労働をはじめ、女性の社会への貢献は正当に評価されない状況にあります。ここに、「ジェンダー平等及び女性のエンパワーメントのための資金調達」という野心的なテーマを選んだ婦人の地位委員会に敬意を表するとともに、その成果を持ち帰り、我が国としても、女性の地位向上のために国際社会、国際機関、そしてNGOを含む市民社会と共に一層取り組んでいくことをお約束します。