平成20年12月1日
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パネリストの皆様、
ご列席の皆様、
本日は私どもの主催しますシンポジウムにお越し頂き誠にありがとうございます。
本日のシンポジウムには、アフリカ連合のあるエチオピア、またニューヨークなどから、様々なご知見をお持ちのパネリストの皆様にお集まり頂きました。また、緒方JICA理事長をはじめ、国内からも学識者やジャーナリストの皆様にご出席頂いております。まずは、12月に入りまして師走の大変お忙しい時期に、皆様にご参加頂いたことにお礼申し上げます。
本年2008年も、あと1か月で終わりを迎えようとしております。振り返りますと、この1年ほど、国際的な協調が必要とされた年もなかったのではないかと思います。食料・原油価格の世界的な高騰、そして現在の国際的な金融危機。もはや国際的な協調なくして、私たちがこれらの問題に対処することはできなくなっている、ということは明らかでございます。
国際の平和と安全の問題についても同じことが言えます。現代の世界は、個別の国家や地域のみでは対応が困難な課題に、数多く直面しています。アフガニスタンの安定と復興のためには、国際社会が強いコミットメントを続けていくことが必要です。アフリカの抱える問題、このたびインドのムンバイで同時多発テロが起こりましたが、テロ対策、大量破壊兵器等の不拡散についても、各国が足並みをそろえて対処していかなければなりません。
そのような国際的な課題が山積する時代にありまして、日本はこの1年間、国際的な協調のために様々な努力を行ってまいりました。まず、G8議長国として北海道洞爺湖サミットを主催し、世界経済、環境・気候変動、開発・アフリカ、核不拡散や平和構築を始めとする政治問題などの様々な地球規模の課題に対しまして、議論のとりまとめに努めました。
また、アフリカにおける平和の定着の問題につきましても、第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)の開催、アフリカにおけるPKOセンターへの支援、国連スーダン・ミッションへの自衛官の派遣などを通じて取り組んできました。国連の場におきましては、平和構築委員会の議長国として、その活動を強化し、より広い理解と支持が得られるよう努めてまいりました。
我が国は、今後とも、平和と安全のためのこのような努力を続けていく決意でございます。まず、インド洋における給油特措法延長について、その実現に向けて引き続き全力を尽くして参ります。また、ソマリア沖の海賊対策につきましても、海上輸送の安全確保や日本人の人命・財産の保護といった観点から、急を要する課題であるとの認識に基づき、真剣な検討を行ってまいります。我が国として、できること、そしてやるべきことを、着実に、そして積極的に、実施していく考えでございます。
来る2009年、日本は、国連安全保障理事会の非常任理事国となります。様々な地域紛争、そして、多様化し複雑化する国際の平和と安全の問題について、安保理は日々、議論をし、行動し、そしてその役割の重要性はますます高まってきております。
つい先日、私は、ペルーで開催されましたAPEC閣僚会議に出席した後、南米のコロンビアを訪問致しました。コロンビアと言えば、数年前までは、反政府勢力との攻防、テロ、そして麻薬、地雷と、平和や安全とは遠い社会との印象でございました。
ところが、2002年に就任したウリベ大統領の治安回復への断固たる決意と強いリーダーシップによりまして、都市部を中心に治安が著しく改善し、経済的にも好調な状況が見られるようになっております。治安の回復のお陰で、日本の外務大臣としては23年ぶりの私の同国訪問も可能になった次第でございます。
コロンビアの場合には、指導者の確固たるリーダーシップが鍵となりました。平和と安全を取り戻すためには、各国の自らの努力が重要なことは言うまでもありません。同時に、安保理の果たす役割も、引き続き、決して無視することはできないものと思います。そのような中、先日、各国からの大きな期待を受けて安保理理事国に選出されました我が国として、相応の貢献を行っていく決意でございます。
まず、アジアから選出された理事国として、アジア地域の問題への対処に積極的に取り組みます。2年ほど前まで我が国が非常任理事国を務めた際に、北朝鮮のミサイル発射や核実験の実施発表などの問題に対処するため、我が国が安保理で主導的な役割を果たしたことは皆様のご記憶に新しいことと思います。
また、アフガニスタン、東ティモールにつきましては、前回に続き今回の任期におきましても、安保理内での議論を率先していく考えであります。さらに、アジア地域の問題にとどまらず、中東和平やアフリカにおける紛争問題、テロ、不拡散、平和構築など、国際の平和と安全にとって重大な問題についても、一層積極的に関与してまいりたいと思います。
私は、明日、ノルウェーに向かい、通常兵器の分野で人道上の大きな懸念となっているクラスター弾に関する条約の署名式に出席します。この条約は紛争後も市民に被害を及ぼす兵器の使用を禁止し廃棄を求める、意義ある条約であります。また、明日より、コンゴ民主共和国東部情勢の安定化に向けた働きかけを行うため、御法川政務官にアフリカを訪問してもらうこととしています。これらは、我が国が平和と安全の分野で一層の役割を果たす意思の表れの一例でございます。
このような決意の下、今後2年間安保理理事国として我が国に対する国際社会からの期待に応えるべく努力し、また、我が国の貢献を国際社会に訴えて参る所存でございます。
冒頭で述べましたとおり、国際の平和と安全についてもより緊密な国際協調が必要とされている中で、国連安保理自身もこれらの問題によりよく対処できるよう変わらなければなりません。来年2月末までに、安保理改革に関する政府間交渉が開始されることになっております。これを見すえつつ、改めて、安保理改革の早期実現と、我が国の常任理事国入りに向けて、決意を新たにする次第でございます。
最後に、このシンポジウムにおいて、パネリストの皆様とご来席の皆様により活発な議論がなされることを期待しつつ、私のご挨拶を締めくくらせて頂きます。
ご清聴ありがとうございました。