平成20年6月5日(木曜日)17時30分~
於:国連ハウス5階エリザベス・ローズ・ホール
本日は、国連PKOが創設されて60周年を記念するセミナーの開催、誠におめでとうございます。
このセミナーに出席するため、国連よりゲエノPKO局長、赤阪広報局長、更には、ネパールからマーティン国連ネパール政治ミッション特別代表、ついこの間までスーダンのPKOミッションで活躍され、現在はキプロスにおられるゼリフーン国連キプロス平和維持隊特別代表という、4名の事務次長レベルの高官に日本にお集まり頂きました。このような機会は、滅多にあるものではなく、このセミナーを主催された国連広報局をはじめ、国連広報センター、そして国連大学の関係者の皆様に厚く御礼申し上げるところであります。
既に国連PKOに関して、ご列席の皆様方の間で、熱い議論を交わされた後だと承知しておりますので、私からは簡単に挨拶させて頂くに留めたいと思います。
我が国はいま、世界の平和と発展に貢献する「平和協力国家」として責任ある役割を国際社会において果たそうとしております。平和構築を河の流れに喩えれば、未だ治安が覚束ない上流において治安をある程度確保し、中流以降においては復興開発に向けた流れが本格化すると言えましょう。源流において細い流れを、みんなで大河にし、平和の海に流し込んでやる必要があるのだと思います。
我が国はこれまで、カンボジアからはじまり、東ティモールからボスニア、コソボなどいろいろな国や地域で平和構築の経験を積んで参りました。また、イラク特措法に基づくイラクへの復興支援、アフガニスタンでの「テロとの闘い」への積極的な貢献としての旧テロ対策特措法や補給支援特措法に基づく補給支援活動などの実績を一歩一歩重ねてきた訳であります。
治安がある程度確保され、復興開発に向けた流れが本格化する中流以降の部分において日本が果たしている役割については、既に国際社会から一定の評価を得ています。しかし、日本といえば平和構築に頑張る国と内外の人に思い浮かべてもらえる国になるためには、平和構築の大河において更なる貢献をしていくことが不可欠であります。具体的に我が国としてどのような貢献ができるか、スーダンやアフガニスタンでの可能性を含め幅広く検討していく所存でございます。
本日のテーマである国連PKOについて申し上げれば、日本が初めて国連PKOに参加したのは、今から16年前のカンボジアでありました。陸・海・空の自衛隊員と文民警察官、そして選挙要員の延べ約1300名が、カンボジアの復興のために従事しました。その時には痛ましくも尊い命の犠牲も払いました。その時に我が国が一生懸命支援したカンボジアが、今やアフリカ・スーダンのPKOミッションに146名もの要員を派遣し、スーダンの治安の維持・復興に尽力していることに、深い感慨を覚えるのは私だけではないと思います。
世界各地の平和維持に貢献してきたPKOが、今年で創設60周年を迎えました。日本では、TICAD IV‐第4回アフリカ開発会議‐と G8洞爺湖サミットが、その意義ある年に開催されます。まさに先週、横浜において、アフリカ40ヵ国の元首、首脳級を含む51ヵ国の参加を得たTICAD IVが開催されたところです。会合では紛争予防、早期警戒措置、紛争解決及び新たな紛争の勃発の予防を含む切れ目のない平和構築努力が決定的に重要であると指摘された訳であります。
平和構築の分野では、この1年間、日本が議長を務めてきた国連平和構築委員会の活動においても、日本は積極的に貢献しております。この1年間で、同委員会の活動基盤はかなり整備されたものと自負をしております。同委員会が現在取り扱っているシエラレオネ、ブルンジについて、取組を着実に進められるのも、治安の不安定な「上流部分」の時期に、PKOが尽力してきたことがあってのものだと考えております。
私は、従来の停戦監視という伝統的任務に留まらず、難民支援、DDR、復興開発支援調整といった複合的任務を果たしている現在の国連PKOこそ、平和構築において重要な役割を果たすものであると思います。先程も申し上げたように、平和構築の中流以降は、我が国の得意分野であります。PKOが軍事・警察部門と文民部門とが益々一体となった形で機能する中、我が国としても、PKOの文民部門への貢献やPKOの活動と相互作用をもたらすような援助について、これまで以上に積極的に考えていきたいと思います。
また、国連PKOへの要員派遣については、これまでの16年間という短い期間に、延べ5000名近い日本人が参加し、世界の平和と安定に貢献して参りました。今この瞬間に、世界各地で9万人近い方々が、PKO要員として働かれている事実に照らせば、日本にはまだまだ貢献できる余地が多いのではないかと思っています。
この点については、今後国内で更なる議論を尽くし、私が1月のスピーチで申し上げたとおり、現行制度の下でも参加できるPKOには積極的に参加していきたいと考えております。平和構築の大河において貢献の幅を広げていきたいという私の決意を述べ、挨拶とさせて頂きます。
御静聴ありがとうございました。