平成20年3月20日(木曜日)20時~
ご紹介有難うございます。
少し遅れてしまいましたが、やっと皆様にお会いすることができました。
「元気なアフリカ」を引っ張って行っておられる皆様から、わたくしも少し元気を分けていただき、5月に横浜で開きます本番へ向け、わたくし自身、スパートをかけていきたいと思っております。
今年は1月にタンザニアへお邪魔し、今回はガボンへ来ることができました。
5月のTICAD IVへ向け、アフリカに関する仕事をすることが最大の課題であると、我と我が身に言い聞かせつつ、過ごして参っております。
ディナーの場ではありますが、5分ほど頂戴し、TICADプロセスに寄せます、わたくしの期待を申し述べたいと思います。
TICADプロセスとは、何でないか、ということからまず申し上げます。
TICADとは、「日本の」外交手段では、ありません。
「日本が、日本のためにだけ」していることでは、ございません。
ではTICADとは、一体何なのか。
アフリカ開発におけるオーナーシップの大切さを、最も早くから、かつ一貫して、強調してきたのがTICADでありました。
オーナーシップを獲得したアフリカ諸国と、日本など支援国・機関が結ぶ、パートナーシップの大切さを、繰り返し説いたのも、TICADでありました。
かくしてTICADは、一国から一国へ、というアフリカ支援の単線経路を打開し、ネットワークの触媒となり、作り手となったのであります。
国境にとらわれない、広域開発を推し進める方向が、ここから生まれ、NEPADの創設につながりました。
アフリカ各国、地域、ドナー国や国際機関、それにシビルソサエティー(NGOなど)を、場所やテーマに応じ、縦横無尽に組み合わせていく、今日当たり前となったネットワークのダイナミズムを生み出したのも、わたくしたちのTICADプロセスでありました。
実はこの発展に関わり合いながら、日本人自身、日本の役割を再発見したのであります。
「ネットワークの触媒であり、作り手であって、その推進役である」。
それが、TICADプロセスにおいて、日本が自らに見出した役割でありました。
日本はそんな自らの役割をさらに強くしていくため、具体的な新機軸を、7項目考えています。
第一に、道路網・電力網における、広域インフラ作りのお手伝い。
第二に、ODAを民間投資の呼び水となる方向に振り向けること。
第三が、農業・農村開発支援を推し進めたい、ということであります。
第四は、HIV/エイズ、結核、マラリアといった感染症対策を始め、妊婦、新生児、幼児の健康増進、そして、医療従事者の人材育成を包括的にやっていくこと。
第五は、万人のための教育(EFA)達成、成長と自立につながる教育を支援すること。
第六に、安全な水と、基礎的な衛生施設へのアクセスを改善すること。
そして第七が、平和定着への支援をすることであります。
「経済成長を通じた貧困の克服」という、アジアの先行事例は、アフリカでも必ずや有効であるに違いない――。
TICADはそう、信じて参りました。
インフラ作り、ODAによる投資の誘発、農業支援という日本の提案は、この方向を推し進めるものであります。
またそのためにも、「人間の安全保障」や「平和の定着」が大切である。
これも、TICADが弛まず主張してきたことでありまして、日本の新提案は、ここに十分な目を配ろうとしています。
次にわたくしは、いま日本政府で進めております「クールアース・パートナーシップ」に、皆様のご関心をいただくようお願いしたいと思います。
御承知のとおり、アフリカは、気候変動に最も脆弱な大陸と言われています。
温室効果ガスの排出を減らしていきながら、同時に経済を成長させるという課題の両立を目指し、2013年以降の実効的な気候変動の枠組の構築を目指す途上国と、日本とが、政策協議を入念に実施します。
そして合意のできた国に対し、日本として支援していこうとするのが「クールアース・パートナーシップ」であります。
そのため日本は、向こう5年、100億ドルを支援する用意があります。
今年に入り、アフリカでは、マダガスカル、セネガル、ナイジェリアとの間で、政策協議を経て、環境と開発を両立させていくことになりました。
マダガスカルとセネガルに対しては、「クールアース・パートナーシップ」に基づく支援が実施されております。
また、ガボンとも政策協議を行う予定です。
この際門戸は、志の高いアフリカ諸国に大きく開かれているのだと申し上げたいと存じます。
世界は、アフリカに目を見張りつつあります。
アフリカの未来に夢を託してやまなかったのは、本日この場にお集まりの皆様始め、TICADプロセスを長年にわたって続けてきた、わたくしたち自身だったのでありますから、いまや世界の認識は、ようやくわたくしたちに追いついたのだと申すべきでありましょう。
いま自分が目の前にしている光景が、もしかすると歴史に残るものかもしれないという感覚は、皆様にも、あるいは身に覚えがおありかもしれません。
わたくしは今しもまさに、その感じを味わっております。
アフリカは力強い前進を始めました。
日本の外務大臣としてその一翼を担うことのできる幸運を、わたくしは噛み締めております。
さあ今夜はどうぞ存分に寛いで、明日一日、実り多い議論をしてまいりましょう。
有難うございました。