平成20年2月5日15時30分~
於:帝国ホテル 孔雀西の間
各閣僚閣下、
ご列席の皆様、
本日皆様をこのような形で東京にお迎えすることが出来たことをうれしく思います。アフガニスタン・コンパクトに基づく同国の国造りが開始されてから既に2年が経過しました。この間、カブールでの会合を中心としたJCMBのフォローアップ体制自身は軌道に乗り、現地では復興のための必死の努力が続けられています。その結果、復興状況にいくつかの改善の兆しが見られることについて、国連及びアフガニスタン政府のこれまでのイニシアティブを高く評価します。
しかしながら、5年とされたコンパクトのプロセスの折り返し地点にあたり、現在のアフガニスタンは大きな挑戦を突きつけられています。自爆テロ事件や外国人を対象とした誘拐事件によって、カブール市内の治安はかつてより悪くなっていると感じられており、また、南部地域における反政府勢力の活動の活発化は予断を許さない状況です。これらは、新しいアフガニスタンという国家の奉じる様々な価値、その中でもとりわけ、これまで6年という歳月をかけて築いてきた民主化プロセスへの重大な挑戦に他なりません。これらに対応するアフガン政府機構の一層の強化と国際社会からの一層の支援が求められています。
ご列席の皆様、
かねてより日本は、「平和の定着構想」と題して、アフガニスタンの復興支援に関し、政治プロセス・ガバナンス、治安、復興支援の一体的な重要性(ホーリスティックアプローチ)について強調して参りました。
政治プロセスは統治機構の整備をもって完了するのではなく、民主主義すなわち民主的な権力の選択という価値に対する日々のチャレンジに抗する努力を続けることが必要です。特に、次期大統領選挙、国民議会選挙を間近に控えた今年2008年は、アフガニスタンへの民主主義の定着を一層強固なものとする上で鍵となる時期であり、民主主義の裾野を広げる観点から、政治和解に対する努力もまた重要になると考えます。
次に、平和の定着を図る際、治安は復興の前提であると共に、復興は治安改善の為の手段であり、両者は車の両輪の関係にあると言えましょう。アフガニスタンの陸上で治安維持に当たる多国籍軍の努力に改めて敬意を払うと共に、去る1月24日及び25日、海上自衛隊の艦船「むらさめ」と「おうみ」が、テロリストの自由な活動を抑止し、アフガニスタンの治安と安定を下支えしているインド洋での海上阻止活動を支援するため、再び出港するに至ったことについて、ここで皆様に報告できることを大変うれしく思います。また、治安分野改革の観点から、DDRに引き続きこれまで我が国がリードしてきたDIAGについて、今後とも日本としてもアフガニスタン政府の取組を最大限支援して参ります。
復興支援については、アフガン国民の生活手段を確保することがアフガニスタンの安定に直結していると考えます。アフガニスタン開発戦略最終版の完成により、これまでの「復興」から「開発」の段階へとスムーズな移行が行われ、他の分野の改革と共に、アフガニスタン国民に復興の果実が実感を伴う形で行き渡ることを期待しています。
ご列席の皆様、
このように、2008年は政治プロセス、治安、「復興」から「開発」と全ての側面において大変重要な年になることでしょう。平和で安定したアフガニスタンという目標に近づくために、これらの相互に極めて密接に関係する個々の側面が満たされるとともに、テロや治安情勢の悪化といった情勢の変化を踏まえた、限られた資源についての一層の効率的・効果的な使用、そして優先順位についての議論が必要となります。JCMBは単にアフガニスタン・コンパクトの進捗をモニターするだけの機関ではなく、復興状況全般について戦略を練り、状況改善のための提案をし、調整を行う場です。本日はかかる観点から、今後の総合的なアプローチについて焦点を当てて議論が行われると伺っており、有意義な議論となることを期待します。
最後に、昨年来、アフガニスタン・パキスタン和平ジルガやG8による両国協力イニシアティブが開始され、アフガニスタン・パキスタン国境の安定に貢献しようとする国際社会の関心が高まっています。アフガニスタン・イラン国境の安定化についても忘れてはいけません。
日本としても、これまでに実施済みの12.5億ドルに加え、合計約1億1,000万ドル(128億円)の支援を実施する考えであり、そのうち約9,000万ドル(103億円)はアフガニスタン・パキスタン国境地域及びアフガニスタン・イラン国境地域に係わる複数のプロジェクトのために実施する考えです。また、今般、UNESCOを通じた約1,300万ドル(14億円)の識字教育及びアフガニスタン政府を通じた約900万ドル(11億円)の国境管理支援も実施する考えであることをここで紹介し、挨拶といたします。ありがとうございました。