平成20年1月26日
(英語版はこちら)
シュワブ世界経済フォーラム会長、ご紹介いただき有り難うございます。
御列席の皆様、
こうして皆様にお話する機会を頂いたことを光栄に思います。本日は、我が国の「人間の安全保障」の考え方についてお話し申し上げます。
「人間の安全保障」の生みの母である緒方貞子さんやエバンズ元オーストラリア外相が参加された国連のハイレベル・パネルは、2004年、報告書を作成しました。その中で平和と安全の実現は、紛争前の予防活動から紛争後の復興開発までを視野に入れた長期的な課題であるとしております。私は、この長く複雑なプロセスに継ぎ目のない支援を行うためには、「人間の安全保障」の視点が欠かせないと思います。
私が注目するのは、紛争状況下や紛争終結直後の状況下に置かれている人々、特に女性や子供達です。国際社会は、彼らとコミュニティの「保護と能力強化」に草の根レベルで取り組むことが不可欠です。また、紛争への後戻りを防ぎ、平和を根付かせるためには、法の支配や民主化のための制度を整備し、「人間の安全保障」を持続的なものにする必要があります。
我が国は、現在議長を務める国連平和構築委員会においても、こうした考え方を踏まえ、議論に積極的に貢献しています。
我が国は、「保護する責任」が問われるような紛争下の事態に対して、武力をもって介入することは国家の政策として行っておりません。これまで人道支援や復興支援に力を注いできた国であります。
我が国は、二国間ODAや国連に設けた人間の安全保障基金を通じて、ボスニアやコソボ、スーダン、カンボジアなどにおいて、復興と平和の定着のための支援を行ってきました。また、現在、アフガニスタンにおいて我が国は、NATO・PRTと連携し、教育や保健の分野で活動するNGOや地方行政機関を支援しています。緒方さんの指導の下、JICAがアフガニスタンの民生向上や貧困削減のために活動しています。
私は、平和のために前線で活躍する人道・復興要員の安全確保の重要性を忘れてはならないと思います。
我が国は、世界の平和と発展に貢献する「平和協力国家」として、地域や世界の共通利益のために汗をかく、志のある国を目指します。そのため私は、これまでの活動に加え、我が国が平和構築分野での人材育成や研究・知的貢献の拠点となることを目指します。また、紛争地域の現場活動に対する我が国の貢献を強化するための諸策を検討します。
以上、「人間の安全保障」をさらに推進して行く私の考えを申し上げました。私は、このあと退席いたしますが、皆様が活発に議論され、国際社会の抱える課題の解決に向けて前進されることを祈念し、開会の挨拶といたします。
ご清聴ありがとうございました。