
外務報道官談話
コロンビア政府軍のエクアドル領内への侵入
平成20年3月7日
1.事案概要
●コロンビア政府による説明
3月1日(土曜日)未明、エクアドル領内からFARC(コロンビア人民革命軍)の攻撃を受けたコロンビア政府軍が、空爆により反撃。FARCの対外関係を統括するNo2を含むFARC構成員が17名死亡。同政府軍は、エクアドル領内に入り、構成員の遺体やパソコン等を押収。
●エクアドル政府による説明
コロンビア政府軍は、計画的にエクアドル国境を越えて軍事行動を実施。殺害されたFARC構成員は作戦行動中ではなく就寝中だった。
2.コロンビア・エクアドル両国政府の立場
●コロンビア政府
- 本件は「民主主義の安全」の問題であり、コロンビア政府軍はテロとの戦いのため国境内でFARC幹部等を攻撃した。同人物は、テロ活動、誘拐等の罪を犯している人物であった。外交チャネルを通じた政治的対話による解決を求めたい。エクアドルによる外交関係断絶は残念。
- 押収したパソコンから、エクアドル政府やベネズエラ政府のFARCとの関係を示す証拠が得られている。右証拠をOASの場で分析して頂きたい。
●エクアドル政府
- コロンビアが同国内でFARC対策を行うことは理解するが、今回のコロンビア政府軍によるエクアドルの領土主権の侵害は受け入れられず、コロンビアと外交関係を断絶するに至った。就寝中のFARC構成員殺害は人権や人道に関わる国際法に違反していると考えられる。
- コロンビア政府による謝罪では不十分であり、徹底的な調査が必要である。具体的にはOASの枠組みで調査委員会を設置し調査を行うとともに、外相会合の実施を求める。
3.各国の反応
- 中南米諸国は平和的解決を求める一方で、コロンビア政府軍の国境侵犯については批判的。
- 特に、FARCとの人道的人質交換に関わっているベネズエラは、国境侵犯に加え右交換プロセスの停滞を招くとしてコロンビアを非難し、在コロンビア大使館の閉鎖、在ベネズエラ・コロンビア大使館員の追放、国境地帯への軍隊の派遣を実施。コロンビアと領土問題を抱えるニカラグアも外交関係を断絶。
- 全面的にコロンビア政府の立場を支持しているのは米国のみ。
4.今後の見通し
3月4日~5日にかけて開催されたOAS(米州機構)常設理事会特別会合において、以下の内容の決議が採択され、平和的解決に向けた道筋がつけられ、事態は沈静化の方向。
- 国家の領土は不可侵であり、いかなる条件下でも、武力による侵害の対象とはならない。
- 実地調査を行い、OAS外相評議会に対し報告書及び和解のための解決策を提示するため、OAS事務総長及び同事務総長より指名された4名の大使からなる委員会を設立する。
- 3月17日、事実関係を調査し、適切な勧告を行うため、OAS外相協議会を開催する。