平成21年12月3日
今般ジュネーブで開催された、第7回WTO閣僚会議の概要は以下のとおり。我が国からは、直嶋経産大臣(12月1日~2日)、赤松農水大臣(11月29日~12月3日)及び武正外務副大臣(11月29日~12月1日)が出席し、直嶋経産大臣が会合二日目(1日午前の全体会合)に代表演説を実施。
日時:11月30日(月曜日)~12月2日(水曜日)
場所:CICG(ジュネーブ国際会議センター)
議長:ベラスコ・チリ財務大臣(※一般理議長国)
副議長:ロイタード・スイス経済大臣(先進国)
ラシード・エジプト経済大臣(アフリカ諸国)
マリ・尼商工大臣(アジア諸国)
(※地域バランスからそれぞれ選定)
議題:
全体会合 「WTO:多角的貿易システムと現下の世界経済の状況」
分科会(1日)「ドーハ・ラウンド交渉を含むWTOの活動を振り返る」
(2日)「成長、回復、発展へのWTOの貢献」
全153加盟国及び56のオブザーバーから3000人近い代表団員が参加し、2日間半にわたる議論を実施。金融経済危機の下でその緩和のためにWTOが果たしている役割にかんがみ、経済回復のために何ができるかについて議論の焦点があてられた他、幅広く議論を実施。
ドーハ・ラウンドが、途上国における経済回復及び貧困緩和にとって重要であることについて意見が一致。また、開発側面は引き続きラウンドの中心事項であるべき。閣僚は、2010年中の交渉終結及びそのための来年第1四半期のストックテーキングの必要性を再確認した。これに向け、高級事務レベルがロードマップを準備することについて支持があった。一方で、サブスタンスについてギャップが残されており、今後数週間(over the coming weeks)残された特定事項についてリーダーシップを発揮しエンゲージメントする必要性について幅広く認識された。交渉を、今日までの進展の上に進めていくことについて幅広い支持があり、既に安定しているテキストをリオープンしないことについて支持。農業とNAMAを優先する一方で、サービス、ルール、貿易円滑化といったその他の分野を進展させることも重要であることが指摘された。また、無税無枠、綿花、サービスのLDCウェイバーといったLDC関連事項、更に、小規模経済関連事項に注意が払われる必要があることも指摘された。
二国間及び地域の貿易協定の数の増大が多角的貿易体制に影響を与えていること、両者が補完的である必要性について概ね一致。最終的に両者を統合(convergence)するべきとの意見も示されたが、反対もあった。RTA透明性メカニズムは基本的に上手く機能しているが、改善の余地はあり、メカニズムを恒久化させる中で、RTAの共通要素や年次レヴューを導入すべきとの意見があった。
WTOをより幅広く力強い組織とするための加盟の重要性及びこのための技術支援の重要性について強い意見の一致がみられた。2002年のLDC加盟ガイドラインの遵守の必要性が強調され、新規加盟国の経験共有の必要性が指摘された。一方で、加速化の方法については意見が分かれた。
途上国及びLDCへの市場アクセス提供だけでは不十分であり、キャパシティビルディングの重要性が指摘された。貿易のための援助(拡大統合フレームワークを含む)の重要性も強調された。
WTOの機能強化について活発な議論が行われ、モニタリング及び分析については保護主義防遏のために重要との指摘が多くなされた。通報改善、データの修正、分析及び配布を改善する必要性について意見の一致があった。WTOにおける透明性及び包括的参加の重要性について指摘され、組織の効率改善のためにこれら原則が軽視されてはならないとの指摘があった。
紛争処理制度の重要性について多くの指摘があり、貧困国のニーズに応える必要性についても指摘された。
WTOが現在および将来直面する事項について多くのコメントがなされた。気候変動が多くのメンバーにより指摘され、WTOがなし得る貢献は環境物品・サービスの自由化であることが幅広くエンドースされたが、同時に「Green Protectionism」についての懸念も表明された。食料安全保障、エネルギー安全保障についても焦点があてられ、また、民間規格に対する懸念も表面された。政府調達、競争、投資といった事項に関しても提案がなされ、一方で疑問も呈された。WTOが新たなチャレンジに対し信頼性のある(credible)機関であり続けなくてはならないことに幅広いが合意があり、WTOのマンデートを尊重しつつ他の国際機関との関係を深めていくべきとの呼びかけがあった。WTOがラウンドを超えて行い得ることの重要性についても幅広く認識された。WTOが価値ある機関であり続けるためにはラウンドを終結させることが重要であることも指摘された。