経済

WTOドーハ・ラウンド
(知的財産権に関する報告書の発出)

平成20年6月10日

  1. 6月9日(ジュネーブ時間)、アーマドTRIPS理事会特別会合議長により、地理的表示(GI)のぶどう酒及び蒸留酒の多数国間通報登録制度に関する報告書が発出された。右報告書は、TRIPS理事会特別会合での論点を整理したものであり、当初より一定の進展は見られるものの、加盟国間に依然として意見の隔たりがあることを示している。我が国としては、今後とも交渉に積極的に参加していくが、いずれにせよ、右報告書の発出により本件交渉が促進されることを期待している。
  2. また、ラミー事務局長により、未解決の実施問題(地理的表示(GI)の追加的保護の拡大及びTRIPS協定と生物多様性条約(CBD)との関係)に関する議論に関する報告書も発出された。右報告書は、ヨークサ事務局次長の下で行われた議論の論点を整理したものであり、これらの点については、加盟国に明確な意見の隔たりがあることを示している。我が国としては、右報告書の発出が、本件の取扱いを含めた議論の促進に少しでもつながることを期待しつつ、今後とも議論に参加していく。

【参考1】TRIPS理事会特別会合議長報告書の概要

 同報告書(IN/IP/18)は、GIの多数国間通報登録制度に関するものとなっている。

  1. 同報告書は、多数国間通報登録制度の要素を3つのカテゴリに分けて示している。

    (1)参加、登録の結果又は法的効果
     意見の隔たりが大きいとして、各提案の文言をそのまま引用するに留めている。

    (2)通報及び登録
     参加、登録の結果又は法的効果の議論によるとしつつも、詳細な議論が行われたとして、意見の収束及び相違について示している。

    (3)その他
     手数料、費用、行政負担、登録の期間、登録の修正及び撤回の手続、コンタクトポイント等については更なる議論が必要としている。

  2. 同報告書は、多数国間通報登録制度の法的形態についての合意はないとし、また、TRIPS理事会特別会合のマンデートを超えるため、GIの追加的保護の拡大及びTRIPS協定とCBDとの関係については盛り込まないとしている。

【参考2】事務局長報告書の概要

 同報告書(WT/GC/W/591;TN/C/W/50)は、ヨークサ事務局次長の下で議論が行われた未解決の実施問題(GIの追加的保護の拡大、TRIPS協定とCBDとの関係)(注)に関するものとなっている。

  1. GIの追加的保護の拡大

     GI対象産品拡大の是非、交渉の対象か否か、一括受諾の対象か否か、モダリティへの盛り込みに関する意見の相違について、賛成派及び反対派の見解を事実ベースでまとめている。

  2. TRIPS協定とCBDとの関係

     上記1.のGIの追加的保護の拡大と同様に、TRIPS協定改正の必要性、交渉の対象か否か、一括受諾の対象か否か、モダリティへの盛り込みに関する意見の相違について、それぞれの見解を事実ベースでまとめている。

  3. その他

     上記1.と2.の論点の関連、更にはこれらと他の論点(GI多数国間通報登録制度を示唆)との関連についても異なる見解が示されたとして、これらを水平プロセスに含めるべきか否かについて意見の相違を示している。

(注)未解決の実施問題
 途上国は、ウルグアイ・ラウンド合意の結果であるWTO協定の実施段階に入って様々な困難な問題に直面していることから、右困難を軽減すべく、「途上国は、途上国に対する義務を遅らせ、途上国に特別な配慮を与え、先進国の義務は前倒しすべし」として、WTO協定の改正を主張している。こうした問題を「実施問題」という。
 具体的には、2001年のドーハ閣僚会議前に101項目が提起され、そのうち42項目についてはドーハ閣僚会議で結論が出た。残りの59項目を「未解決の実施問題(outstanding implementation issues)」という。未解決の実施問題には、GIの追加的保護の拡大及びTRIPS協定とCBDとの関係が含まれる。

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