平成22年3月
EUとの間で、捜査、訴追その他の刑事手続(司法手続を含む。)に関する共助に係る要件、手続等について定める。
近年の国境を越えた犯罪の増加等を受け、刑事共助協定について、平成19年2月にEU側と非公式協議を開始し、平成21年4月から4回の正式交渉を経て、同年11月に実質的な合意に達した。同年11月30日にEU側アスク・スウェーデン法務大臣が、12月15日に我が方岡田外務大臣がそれぞれ署名を行った。
(1) この協定の締約者は我が国及びEUであり、この協定は我が国とEU加盟国との間で実施される刑事共助について定めるものである。
(2) この協定は、一方の国が他方の国の請求に基づき、捜査、訴追その他の刑事手続(司法手続を含む。)について共助を実施すること、そのための枠組みとして、各国がその捜査機関等を中央当局に指定し、相互の連絡を直接行うこと等を定めるものである。
(3) この協定の下での共助として、証言や物件の取得、文書の送達等が規定されている。また、これら従来の条約と同様の共助に加え、請求国の当局がビデオ会議を通じて被請求国に所在する者を聴取したい旨の請求があった場合には、被請求国側がその裁量により、その聴取を可能とすることができる旨の規定も置かれている。
(注) この協定は、共助の拒否事由の一つとして、従来の刑事共助条約と同様に、「重要な利益」が害されるおそれがあると認められる場合を挙げている。「重要な利益」としては、主権、安全、公共の秩序が列挙されているほか、死刑等を科し得る犯罪に係る共助について、被請求国と請求国との間で合意がある場合を除き、これを実施することが「重要な利益」を害する場合に該当すると認めることができるとの解釈が条文上確認されている。
(1) この協定の締結により、共助の実施が協定上の義務となることから、一方の国から請求する共助が相手国において一層確実に実施されることを確保することができる。
(2) 我が国及びEU加盟27か国が中央当局を指定し、共助の実施のための連絡を従来の外交ルートではなく、中央当局間で直接行うことが可能になることにより、共助の実施の効率化・迅速化が期待できる。