平成22年3月
ロシアとの間で、捜査、訴追その他の刑事手続に関する共助に係る要件、手続等について定める。
(1) 近年の国境を越えた犯罪の増加等を受け、2005年11月、プーチン大統領(当時)訪日の際に刑事共助条約締結のための正式交渉を開始することで一致した。2006年12月の第1回交渉以降、累次交渉を重ね、2008年4月、東京において第5回交渉を行った結果、実質的な合意に達し、2009年5月12日、プーチン首相訪日の際、東京において中曽根外務大臣(当時)、コノヴァロフ法務大臣により署名を行った。
(2) 日露間では、特に、水産物の密漁・密輸出、麻薬、銃器、盗難車両の不法取引に双方が協力して対処する必要性が高く、この条約を早期に締結する必要がある。
この条約は、一方の締約国が他方の締約国の請求に基づき、捜査、訴追その他の刑事手続について共助(注)を実施すること、そのための枠組みとして中央当局(日本:法務大臣及び国家公安委員会等、露:法務省及び最高検察庁)を設置し、相互の連絡を直接行うこと等を定める。
(注)この条約に定める共助の主なものは、以下のとおり。
1) 証言、供述又は物件の取得(捜索又は差押えによるものを含む。)
2) 人、物件又は場所の見分
3) 人、物件若しくは場所又はこれらの所在地の特定
4) 被請求国の立法機関、行政機関、司法機関その他の国家機関又は地方公共団体の保有する物件の提供
5) ある者に対する請求国における出頭の招請の伝達又はある者に対して請求国における出頭を求める文書の送達
6) 被請求国の領域において拘禁され又は刑に服している者の一時的な身柄の移送であって、証言の取得その他の共助の請求に示された目的のためのもの
7) 刑事手続に関する文書( 5)に規定する文書を除く。)の送達
8) 犯罪の収益又は道具の没収及び保全並びにこれに関連する手続についての共助
(1) この条約の締結により、日露双方がより充実した内容の刑事共助を実施することができ、また、その確実性を高めることができる。
(2) この条約の締結に伴い、両国で中央当局を設置し、中央当局間で直接連絡を行うことにより、事務処理の効率化・迅速化が期待できる。