平成21年3月
国及びその財産に関して他の国の裁判所の裁判権からの免除が認められる具体的範囲等について定める。
(1)かつては、国及びその財産については、すべて無条件に他の国の裁判所の裁判権からの免除を認めること(「絶対免除主義」)が一般に受け入れられた国際ルールであった。しかし、19世紀末以降、国による経済活動が活発に行われるようになり、現在、国の商業的な行為に関しては免除を認めないとする「制限免除主義」が多くの国において採用されている。
(2)他方で、具体的にいかなる範囲まで免除が認められるかについての国際ルールが確立されるには至っていない。このため、1977年、国連総会は、国連国際法委員会に対し免除に関する国際法規の作成を検討するよう勧告した。同勧告を受けて、同委員会及び国連総会第6委員会(法務担当)において審議が行われた後、2004年12月2日、国連総会において本条約が採択された。
国及びその財産に関して免除が認められる具体的範囲等について主に以下のとおり定める(注)。
(1)国は、当該国が明示的に同意した場合等を除き、他の国の裁判所の裁判権からの免除が認められる。ただし、商業的取引から生じた裁判手続、雇用契約に関する裁判手続等本条約に定める裁判手続については免除が認められない。
(2)国の財産に対する強制的な措置(差押え等)は、当該国が明示的に同意した場合等を除き、とられてはならない。
(注)本条約は、刑事手続及び軍事的な活動については対象外としている。
(1)私人が外国との間で取引等を行う場合に、当該外国に関して免除が認められる範囲等が明確化されることにより、このような私人がより安全に取引等を行うことが可能となるほか、我が国政府等が外国において取引等の活動を行う場合についても、当該外国の裁判所の裁判権からの免除が認められる範囲等が明確化されることにより、より円滑な活動を行うことが可能となる。
(2)また、我が国が本条約を率先して締結することは、このような国際ルールの確立を促進するとの見地から有意義である。
2009年1月時点では、オーストリア、イラン、レバノン、ノルウェー、ポルトガル及びルーマニアの6か国が締結している(本条約は、30か国が締結することにより発効することとなる。2009年1月時点では未発効。)。我が国は、2007年1月11日に本条約に署名している。