
「国際テロリズムとの闘いにおける協力に関する日ASEAN共同宣言」に関するプログレス・レポート
平成17年6月
2004年11月、日ASEAN首脳会議において採択された「国際テロリズムとの闘いにおける協力に関する日ASEAN共同宣言」に基づいて、我が国がこれまでASEAN各国に実施し、または、今後実施する予定のテロ対処能力向上支援について、6月15日、カンボジアで開催された「国境を越える犯罪に関するASEAN+日本SOM会合」において以下の通り報告を行った。
2004年11月30日の日ASEAN首脳会議において採択された「国際テロリズムとの闘いにおける協力に関する日ASEAN共同宣言」において明記された協力分野につき、現時点での進捗状況は以下の通り。
1.情報交換及び法執行機関間協力の強化
- 2005年5月17日から19日、バリにおいて開催された第25回ASEAN警察長官会議(The 25th ASEANAPOL)に、我が国は、中国、韓国、豪、NZ等とともにオブザーバーとして参加。テロの分野では、(1)ASEAN各国間の既存の協力・調整メカニズムの強化、(2)テロ対策の訓練、セミナー、協議、情報共有を通じたASEAN各国の警察の能力強化、(3)テロリスト、テロ組織、テロの手口についての正確かつ時宜を得た情報交換、(4)メンバー国間での合意に従い、拘束されたテロリストの情報共有、及び事情聴取の便宜を図ること、(5)メンバー国間での合意に従い、テロ関連資産の追跡、凍結、押収を含む支援をメンバー国に供与すること、が共同コミュニケで採択された。
- 2005年9月に国際テロ事件捜査セミナー(Seminar on International Terrorism Investigation)を警察庁とJICAの共催で実施予定。
2.テロ防止関連条約の早期締結及び実施、並びに国連安保理決議を含む関連国連決議の完全な遵守
- 2004年12月、我が国はASEAN10ヶ国を含むバリ・プロセス関係国を対象にテロ資金供与防止条約締結促進セミナー(Seminar on the promotion of Accession to the International Convention for the Suppression of the Financing of Terrorism)を東京にて開催。豪州、UNODCテロ防止部、UNAFEIより専門家を招き、条約締結における我が国及びその他の諸国の法制・経験並びに関係国際機関の取組を紹介(テロ資金対策の項にも記述)。
- 2005年12月を目途に、東京において、テロ防止関連12条約締結促進セミナーを開催予定。現在、同セミナーに向けて、ASEAN加盟国や中国、太平洋諸国等に対して、テロ防止関連12条約のために必要な国内法令整備や、締結済みの条約の国内実施法令の整備を今後如何に進めるかにつき、可能な限り具体的な時限を付してとりまとめた具体的行動計画案の自主的作成を呼びかけている。
- 2006年1月、我が国が運営を支援する国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)は、ASEAN加盟国を中心とする30数カ国を候補対象として、刑事司法分野におけるテロ対策(諸条約締結促進も含む)をテーマとする研修(第132回高官セミナー:The 132nd International Senior Seminar)を開催予定。
- ASEAN各国のテロ防止関連12条約の締結状況は、国連のデータによると、昨年11月の時点から現時点まで、各国国内において批准に向けた様々な動きが見られるが、目に見える結果には至っていない。
3.テロ資金対策
- 2004年7月、我が国はAPECのイニシアティブにより創設されたFRTFSI(Fund for Regional Trade and Financial Security Initiative)に100万米ドルを拠出。2004年12月以降、テロ資金対策プロジェクトを1件承認。
- 2004年12月、我が国はASEAN10ヶ国を含むバリ・プロセス関係国を対象にテロ資金供与防止条約締結促進セミナーを東京にて開催。豪州、UNODCテロ防止部、UNAFEIより専門家を招き、条約締結における我が国及びその他の諸国の法制・経験並びに関係国際機関の取組を紹介した(テロ防止関連12条約の項にも記述)。
- 2004年7月、我が国はAPG(Asia / Pacific Group Money Laundering, アジア太平洋マネー・ロンダリング対策グループ)の共同議長に就任し、2005年7月、豪州において開催されるAPG年次会合に共同議長国として参加する。同会合では、マネー・ロンダリング、テロ資金対策セミナーが開催されるほか、技術支援要請の調査や、提供国選定等の調整が行われる。
4.出入国管理の強化
- 2004年11月、法務省は、第18回東南アジア諸国出入国管理セミナー(Seminar on Immigration Control)を開催し、ASEAN各国、中国、韓国等が参加して、水際におけるテロ対策等について情報交換・意見交換を実施。
- 2005年3月、東京において第2回アジア諸国旅券政策協議(The 2nd Meeting of Asian Workshop on Passport Policy)を開催し、渡航文書へのバイオメトリクス導入、旅券関連犯罪及びその防止措置、変偽造防止対策、紛失・盗難旅券情報の共有、今後の情報交換体制等について協議。同協議には、ASEAN+3諸国よりブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、韓国、中国(香港、マカオを含む)が参加。
5.ARF、ASEAN+3及び日ASEAN交通大臣会合の枠組みにおける航空保安、海上安全保障、コンテナ保安を含む交通保安の強化
- 2004年7月、我が国はAPECのイニシアティブにより創設されたFRTFSI(Fund for Regional Trade and Financial Security Initiative)に100万米ドルを拠出。2004年12月以降、航空・港湾保安関連プロジェクト等の検討を進めている。
- 2005年6月、日アセアン交通大臣会合の枠組みの下、岐阜において、第3回日アセアン交通政策ワークショップ(次官級会合)(The Third ASEAN-Japan Transport Policy Workshop)を開催予定。連携プロジェクトとして実施している海事セキュリティプログラム及び航空セキュリティプロジェクトの進捗状況を報告し、今後の取組について審議を行うこととしている。
(航空保安)
- 航空保安の分野では、国土交通省協力の下、JICAが2006年1月に航空保安セミナー(Seminar on Aviation Security)を実施。ASEAN各国よりインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、カンボジア、ラオスが参加予定。
(海上安全保障)
- 2005年3月、東京において、第2回日ASEAN海事セキュリティ・海賊対策セミナー(The 2nd ASEAN-Japan Seminar on Maritime Security and Combating Piracy)を開催し、ISPSコード発効後の各国の取り組みについて情報交換を行った。また、海賊件発生時のコンタクトポイント、海事政策当局間のコンタクトポイント及び船舶・港湾施設のセキュリティーレベルのリストを作成することで合意した。
- 2005年10月に東アジア地域海上犯罪取締り研修(Maritime Law Enforcement)をJICAと海上保安庁により実施。ASEAN各国及び中国、韓国等が参加予定。
- ARFの枠組みにおいては、我が国は、本年秋、東京において海上安全保障のキャパシティ・ビルディングに関するARFワークショップ(ARF Workshop on Capacity Building of Maritime Security)を開催予定。
(港湾保安)
- 2005年10月、横浜においてASEAN諸国を対象としたJICA地域研修として港湾保安セミナー(The Seminar on Port Facility Security)を開催予定(ASEAN諸国より インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジアの7ヶ国が参加予定)。同セミナーは、国や港湾管理者の港湾保安担当者に対し、ISPSコードに基づく保安対策の強化と着実な実施のためのPDCA(Plan, Do, Check, Action)プロセスを身につけさせ、以て東南アジアにおける物流の円滑化と安全性の充実による経済発展を図ることを目的としている。
6.マレーシアの東南アジア地域テロ対策センターにおける協力プロジェクト及びタイの国際法執行アカデミー、インドネシアのジャカルタ法執行センターとの協力を検討
- 2004年7月、我が国は、マレーシア政府との共催で、東南アジア地域テロ対策センターにおいて、化学テロの事前対処及び危機管理セミナー(Seminar on Prevention and Crisis Management on Chemical Terrorism)を開催。ASEAN、中国、及び韓国の化学テロ対策担当者に対し、我が国、カナダ、及びOPCWの化学テロ専門家より、化学テロに関する知見を提供。
- 2005年7月、同センターとの共催で、ASEAN、中国及び韓国の生物テロ対策担当者に対し、我が国を始め、米国、フランス、WHO等の専門家が知見を提供する生物テロの事前対処及び危機管理セミナー(Seminar on Prevention and Crisis Management on Biological Terrorism)を開催予定。