G7 / G8

サンクトペテルブルク・サミット内外記者会見(要旨)

平成18年7月17日

(小泉総理冒頭発言)

 プーチン大統領の出身地であるこのサンクトペテルブルク、約3年ぶりの訪問であるが、大変美しい町を再び訪れることができ、G8の首脳たちと率直な意見交換できてよかったと思っている。特に昨晩は、ワーキング・ディナーが11時頃終わったのだが、帰ってくると、海の水平線の先、ちょうど日が沈む頃であった。日本でいう夕焼け。夜の11時過ぎに夕焼けの美しさ、黒い雲と赤い夕焼け、見事な自然の美しさに見とれていた。そういう中で、厳しい国際情勢の中で、G8首脳たちとの意見交換、プーチン大統領が議長として、纏め役として大変困難な課題について、すばらしい指導力を発揮したことに対しても、敬意を表したいと思う。

 このサミットに先立ち、私は、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンを訪問し、オルメルト首相、アッバース大統領、ヨルダン国王陛下と会談した。この中東訪問、最近のレバノン・イスラエル情勢を巡っても、今回のサミットでも大きな課題であり、話も集中した。こういう中で、中東についても、G8首脳、結束して、今後の問題について、国際社会が協力して取り組む必要性を感じながら、いい話し合いができたと思っている。中東、この目標は、イスラエルとパレスチナの平和共存、共存共栄である。こういう問題についても、各国それぞれ事情は違うが、我が国としても、できるだけの支援をしていきたいと思っている。

 また、北朝鮮のミサイル問題については、このサミットの始まる前に大きな課題であった。しかし、安保理決議が全会一致で採択されたということは極めて重要だと思う。G8の会議においても、この問題を協議し、明確なメッセージを北朝鮮側に発出することができたと思っている。核の問題、ミサイルの問題、拉致の問題、この解決のために国際的な連携が必要だということでも一致した。

 経済面においては、現在、石油価格が高騰している。70ドルを超えている。こういうエネルギー安全保障についても議論し、日本は、エネルギーの依存度が海外に圧倒的に強い国であるが、そういう中で、エネルギーの安全保障、環境保護と経済発展を両立させる、これに極めて積極的に取り組んできた国であるので、日本の省エネ努力の例を紹介しながら、私は今後も、このエネルギー安全保障については、バイオマスと環境保護も重視した取り組みが必要だということを申し上げた。

 また、WTOドーハラウンド、この年内妥結に向けて、特にこれからの一ヶ月が大変に重要であるという認識でも一致できたと思う。お互い、歩み寄る姿勢が必要である。今のところ、なかなか、歩み寄る姿勢を見せていないが、是非とも成功させるべきだという意見が強かったと思う。知的財産権保護の問題についても、G8が連携して取り組んでいこうということで一致した。

 また、アフリカの問題については、私は特に感染症との問題、病気の問題、これについては、我が国の著名な医学博士であった野口英世氏が、80年前に、アフリカのガーナで、黄熱病の研究最中に亡くなった。この野口博士を記念し、アフリカに限定した、医学・医療にアフリカで従事している、アフリカの病気克服のために懸命に努力している方々に対する野口賞を創設する、という話もした。

 会議の合間に各首脳とも立ち話をしたし、また、特にプーチン大統領とは、今後の日露関係の発展に向けた会議をして、協力継続していこうということで一致をみた。これまでも、日露関係は今まで以上に、経済関係においても、様々な分野の交流においても発展してきたけれども、今後、領土問題を解決して、平和条約を締結すれば、さらにもっと大きな発展がみられるだろうと、この大きな目標に向かって、これからも環境整備で協力していこうということで一致した。

 いずれにしても、様々な諸課題について、この2日間、各国首脳と会談できて、ますます外交と内政は直結しているなと、今後とも主要な国の一員として、国際社会の発展のためにも、日本としても精一杯の努力をしていかなければならないということを痛感した、今回のG8サミットであった。

 プーチン大統領をはじめ、ロシア国民の皆様方の温かいおもてなしに、改めて、厚く御礼を申し上げる。

(質疑応答)

(質問) 国連安保理とサミットが北朝鮮にメッセージを送ったが、いまのところ北朝鮮はこれに反発し、受け入れる様子がない。これをどのように受け止めているのか、それから、日本が直接、北朝鮮と対話をする手立てがなくなる中で、今後、北朝鮮をどのように六カ国協議の場に引き出していくのか、その道筋をどう考えているのか。

(小泉総理) 今回の北朝鮮のミサイル発射に関して、各国が、全会一致で安保理の決議採択をみることができた、これは極めて重要だと思っている。おそらく北朝鮮側も、こういう形で中国・ロシアも含めてP5、全会一致でこのような決議がなされるとは想像していなかったと思う。これは極めて重要であるし、このメッセージを北朝鮮は重く受け止めるべきだと思っている。我々は北朝鮮に道を閉ざしていない。早く六者会合の場に出てきて、その中で、北朝鮮の安全保障と、北朝鮮のこれからの経済発展を考えればいいではないか、国際社会の責任ある一員になることが、北朝鮮の発展にとっても、北朝鮮の現在の安全保障を図る上でも一番良いのだということを、重ねて今まで言ってきたが、そういう見解を国連安保理決議の中においても、G8首脳会議の中でも、はっきり、明確な形でメッセージを送ることが出来たと思う。これを北朝鮮側は真摯に受け止めて、出来るだけ早く六者会合の場に出てくるべきだと思う。また、私は、北朝鮮側がアメリカとの二国間対話を望んでいるということは解るが、これについても、六者会合の場に出てくることによって、さまざまな場で二国間対話が出来ると思う。水面下でもできる。日本としてもさまざまな手段を講じながら、各国と連携し、また、北朝鮮が特にアメリカとの対話を望んでいるようであるが、日米は連携して、この北朝鮮が無謀な行動に走らないように、責任ある誠意ある対応をとるように引き続き粘り強く努力していきたいと思う。そういう観点から今回の安保理決議、G8でのメッセージの発出というのは意義深いものであったと思っている。

(質問) 日本が北朝鮮の状況を活用して軍事力を強化するということが報道で言われているが、どうか。

(小泉総理) 北朝鮮の今回のミサイル発射を契機に軍事力を強化するということかどうかという質問だと思うが、これは、日本としては常に安全確保にしっかりと取り組んでいかなければいけないということは当然である。しかしながら、日本は平和国家として今まで外国で武力行使を戦後したことはないし、今日、イラクでサマワ地域の陸上自衛隊の部隊が全員無事、任務を立派に終えてクウェートに撤収したと報告を受けている。そのイラクでの活動においても、自衛隊の職務は人道支援・復興支援、一発のピストルも撃たず、人に対して、他人に向けて銃口を向けず、人道支援・復興支援に取り組むことができ、イラク住民から高い評価を受けて撤収することができた。我々は専守防衛である。日本を攻撃しても日本は抵抗しないであろうというような誤った見方をさせないような抑止力維持はしっかりとしなければならない。しかし、不必要な、他国を先制攻撃するような意図はまったく持っていないし、日本は独自の安全保障、米国との安保条約の中でしっかりと確保していきたい。今回の北朝鮮のミサイル発射についても、変な気を起こさせないような、日本としての独自の抑止力を維持する、ということを図ることは必要だと思っている。

(質問) 総理は今回のサミットに先立って中東を訪問され、中東の和平実現に向けた「平和と繁栄の回廊」構想を提唱された。しかし、イスラエルのレバノン攻撃によって、中東情勢は極めて憂慮すべき状況にある。総理は今後中東問題にどのように取り組まれるか。また、総理は今回が6回目のサミット出席で、歴代総理として最多になった。総理は今回が最後のサミット出席になると発言されているが、小泉外交の総括をお願いする。

(小泉総理) 私は今回このサンクトペテルブルクを訪問する前に、イスラエル・パレスチナ・ヨルダンを訪問して、まず、オルメルト・イスラエル首相と、日本としてはイスラエル・パレスチナの共存共栄をいかに支持していくか、そのためにもアメリカやヨーロッパとは違った立場でイスラエル・パレスチナの共存共栄を支援していきたいという話をした。具体的な取組みとして、ヨルダン渓谷、この地域、イスラエルもパレスチナもヨルダンも望むような生活基盤の整備、経済発展の必要性、そういう支援をしていく用意があるということを話した結果、これは、賛成だと。是非ともオルメルト首相はアッバース大統領とも同じ話をしてくれ、オルメルト首相は賛成だと。パレスチナのアッバース大統領にも同じ話をした。アッバース大統領も賛成だと。適切な時期に日本、パレスチナ、イスラエル及びヨルダンが政府高官レベルで、どのような事業が必要か、どのようなプロジェクトが必要か、具体的に協議しようと。こういう、今、レバノンとイスラエルとの複雑な事態、深刻な事態が起きている中、難しいだろうと思ったが、こういう時だからこそ早く始めたほうがいいというのがヨルダンのアブドラ国王陛下の意見であった。三者-イスラエル、パレスチナ及びヨルダンとともに日本と一緒にこの「平和と繁栄の回廊」、このプロジェクトを進めていきたいということであるので、かえって今の深刻な事態にひるむことなく、日本政府としてはイスラエル・パレスチナ・ヨルダン政府高官とできるだけ早く具体的な協議に入りたいと、その協議会を立ち上げたいと思っている。各国首脳から賛同をいただいた。

 また、私は今回で6回目の最後のサミット参加であるが、今までの自分の外交がどうだったかというご質問だと思うが、私が評価するよりも、私が辞めてから皆さんがしてほしい、自分で自分の外交を評価しないほうがいいであろう。

(質問) 日本が石油パイプラインの建設に参加することで、これは要するにシベリアのものだが、これは太平洋諸国のエネルギー安全保障を担保するための前提条件になると考えているか

(小泉総理) 東シベリアの石油開発のご質問だが、これは太平洋パイプラインの話だと思うが、これについて、今後日本とロシアが両国にとって利益になるような協力をしていこうということで一致している。それぞれの民間企業も加わることである。政府間の協力も必要だと思う。この問題についても、今後の日露関係、さまざまな交流もあると思うが、エネルギー関係において大変極めて重要な問題であるので、政府間の協力、そして民間側の協力もさまざまな分野があると思うので、今後の日露関係の中においても大きな課題であるので、お互いの意見を聞きながら、双方が利益になるような形で進めていきたいと思っている。こういう考えにおいては、今回のプーチン大統領と自分の会談でも一致を見ることができたと思っている。

(質問) 先ほど総理は自分の小泉外交は他者が総括するべきだとおっしゃった。実はそのことを一番伺いたかったので、ちょっと質問を変える。では小泉外交が常に目指してきたものはいったい何だったのか。そしてそういう小泉外交は日本の外交にどのような変化をもたらしたと思われるか。

(小泉総理) 私が目指したというが、常に考えていたことは、外交というのは、日本の国際社会における責任を果たすことであり、そして日本国民の利益になること、これである。そういう中で、今や経済においても、農業においても、漁業においても、あるいは安全保障においても、医療・感染症においても、まさに国際問題は国内問題と直結している。国内の様々な意見の相違を認識しながら、国際社会の中でも協力できる分野と対立している問題がある。本当にこの問題というのは外交と内政は直結しているなと感じながら、二国間首脳外交あるいは国際会議の場でも、自分の意見を言いながらさまざまな各国の意見も聞いてきた。いわば190カ国以上ある世界の国々の中で、今日の会議のG8にしてもわずか10カ国程度の首脳が集まる。それはとりもなおさず、日本の今までの主要国としての役割を国際社会が認めているからこそだと思う。この国際社会の中で主要な責任を果たすということが、ひいては日本国の利益になるのではないか、日本国民の利益になるのではないか、同時に、この代表として出ているからには、日本の立場、事情、日本の発展を考えていくのが日本の首相の当然の責任だと思っている。これを両立させながらやってきたつもりである。どうであったかというのは、自分が辞めてからそれぞれの方が評価されると思う。

このページのトップへ戻る
目次へ戻る