平成18年7月18日
32回目を迎えたサミット(主要国首脳会議)は、7月15日から17日まで、ロシアのサンクトペテルブルクで開催された。
サミットでは15日のプーチン大統領主催夕食会に引き続き、16日、以下の議事日程にしたがい議論が行われた。
(イ)午前:エネルギー安全保障、教育、感染症(引き続きJ8との出会い(注)を開催)
(ロ)ワーキング・ランチ: 世界経済及び貿易、腐敗との闘い、知的財産、開発援助
(ハ)午後:安全保障及び地域情勢、テロ対策、不拡散(北朝鮮、イラン)
(ニ)ワーキング・ディナー:一般的政治課題、人口動態及び社会問題
(注)G8首脳が、今回のサミットに関連した課題につき、G8各国の青年代表と討論。
議長であるプーチン大統領が、主要議題として提示したエネルギー安全保障、教育、感染症に加え、経済・社会分野では貿易等についても活発な議論が行われた。
一方、政治・安保分野では、レバノン情勢の悪化により中東が大きな焦点となり、総理からは、サミット直前のイスラエル及びパレスチナ訪問を踏まえて現地の最新情勢や各首脳との意見交換の結果を紹介した。更に、北朝鮮の問題については、総理より、ミサイル発射問題に関する安保理決議が全会一致で採決されたことに関し、関係国の協力に対する謝意を表しつつ、G8による明確なメッセージの必要性を強調するとともに、北朝鮮の核や拉致問題の解決への協力も訴えた。その結果、これらの問題に関し、G8として明確なメッセージが発出された(各論参照)。
議論を踏まえ、「議長総括」に加え、エネルギー安全保障、教育、感染症、貿易、腐敗との闘い、知的財産権の保護、アフリカ報告書、中東、テロ対策、不拡散(北朝鮮、イランを含む)、安定化と復興のための行動についての文書を発出。
また、「ムンバイ及びインドの他の地域で発生した野蛮なテロ行為に対する声明」が、G8と招待国及び国際機関等により発出された。
G8首脳は、エネルギー安全保障、感染症、アフリカ、安全保障に対するグローバルな挑戦(中東和平、イラン、北朝鮮等)、貿易(WTOドーハ・ラウンド交渉)について、招待国及び国際機関等(注)との対話を行った。
議長国ロシアからサミットの結果(エネルギー安全保障、教育、感染症)について報告した上で、招待国・国際機関の長から意見が表明された。その中で、我が国のNEPADに対する支援やユネスコの活動に対する評価の発言があった。
(注)招待国は、ブラジル、中国、インド、メキシコ、南アフリカ首脳。これに加え、国連、WHO、IAEA、IEA、UNESCO、世銀、WTO、AU議長国(コンゴ(共))、CIS議長国(カザフスタン)。
(イ)エネルギー安全保障
投資の促進、省エネやエネルギー効率の向上、エネルギー源の多様化の推進、緊急時対応の強化など具体的行動に合意した。
総理からは、石油危機等の経験を踏まえ、3Rを含む省エネ努力の重要性を訴えるとともに、石油価格高騰のピンチをチャンスとし、原子力や風力・太陽光・水力発電などエネルギー源の多様化を進めるべきと主張し、賛同を得た。
(ロ)気候変動
総理から、昨年のグレンイーグルズ・サミットで立ち上げられた「気候変動対話」について、2008年の日本におけるサミットで成果を出したいこと、また、今後すべての国が参加する実効的な枠組みが重要であることを指摘した。
創造性豊かな人材の育成のための取り組みなど革新を生み出す社会の実現に向けた具体的行動や、途上国への教育支援の国際的枠組みである「万人のための教育」(EFA)の一層の推進に合意。
総理から、いわゆるニートがG8各国で増加していることも踏まえ、対策の重要性を指摘した。
喫緊の鳥インフルエンザ対策に加え、これまでG8として取り組んできたエイズ・結核・マラリアの3大感染症対策等を引き続き強化していくことで合意。
貿易について、ドーハ・ラウンドの年内妥結に向けて全力を尽くすことで合意した。
総理からは、歩み寄りに向けて今後一層努力の必要があると指摘した。
腐敗は、民主主義や経済・社会の発展を阻害する問題であるとの認識を共有し、G8として取り組みを継続していくことで合意。
知的財産権の保護のため、総理が昨年のサミットで提唱した模倣品・海賊版拡散防止のための法的枠組みを含め、国際的な取組みを強化することで一致。
G8各国が行ってきた開発支援(特にアフリカ)の実施状況を確認しつつ、2007年のサミットで更に進捗状況を議論することに合意。
総理は、野口英世賞の創設など、4月末のアフリカ訪問の成果を紹介しつつ、2008年には、第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)を開催するなど、感染症をはじめアフリカ開発への取り組みを強化する旨説明。
中東、コソボなど地域情勢を議論した。
中東情勢は、レバノン情勢の悪化によりサミットでも大きな焦点となった。総理からは、サミット直前のイスラエル及びパレスチナ訪問を踏まえて現地の最新情勢や各首脳との意見交換の結果を紹介した。更に、我が国としてイスラエル・パレスチナの共存共栄を目標とし、ヨルダン渓谷で域内協力を進める「平和と繁栄の回廊」構想を説明し、賛同を得た。
G8としてテロとの闘いを断固として継続していくことを確認した。
(イ)北朝鮮
総理より、北朝鮮の弾道ミサイル発射問題を提起し、安保理決議が全会一致で採択されたことに対する関係国の協力に対して謝意を表した上で、北朝鮮が六者会合に即時かつ無条件に復帰すべきであること、また、ミサイル、核、拉致問題を包括的に解決する必要があるとした。特に拉致の問題については、我が国のみならず国際的な広がりを持つ問題であり、その解決には国際的な連携の強化が必要であるとした。
これに対し各国より、日本の立場を支持する発言が行われ、すべての参加国の理解の一致を見た。(別紙)
(ロ)イラン
イランについては、包括提案に対する前向きな対応がみられないことを踏まえ、EU3+3外相会合の決定を支持し、G8としてイランが前向きな対応をとるよう、明確なメッセージを発出。
少子化や民主化などの課題について、ワーキング・ディナーとして、率直な意見交換を行った。
(別紙)
我々は、北朝鮮に関する核及びその他の安全保障上の懸念ならびに人道上の問題を取り上げた。我々は現地時間2006年7月5日の北朝鮮による弾道ミサイルの発射を非難する2006年7月15日の国連安全保障理事会決議1695に対する支持を表明した。
我々は、北朝鮮に対し、ミサイル発射のモラトリアムに関する既存のコミットメントを再確認するよう求める。これらのミサイル発射は北朝鮮の核兵器計画に対する我々の深い懸念を強めるものであり、我々は北朝鮮に対し、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄することを強く求める。我々は六者会合を強く支持し、北朝鮮に対し、速やかに無条件で六者会合に復帰し、2005年9月の共同声明を誠実に履行するために協力することを求める。加えて、我々は北朝鮮に対し、拉致問題の早急な解決を含め、国際社会の他の安全保障及び人道上の懸念に対応するよう求める。