
世界のエネルギー安全保障(仮訳〔骨子〕)
I. 政治宣言
- エネルギーは先進国及び開発途上国における生活の質及び機会の向上のために不可欠。
- 我々は、高値かつ不安定な石油価格、増大するエネルギー需要、輸入依存の増大、莫大な投資の必要性、環境保護及び気候変動への対処の必要性、重要なエネルギー・インフラの脆弱性、政治的不安定や自然災害その他の脅威といった重大かつ相互に関連した課題に取り組まなければならない。生産国・消費国・通過国の相互依存が増大する中、世界のエネルギー安全保障を強化するため、すべての関係者間の強固な連携が必要。透明性があり、効率的かつ競争的な市場の発展が目的達成の最善の方法であることに意見の一致をみた。
- 開発途上国におけるエネルギーへのアクセス向上なしに世界のエネルギー安全保障も国連ミレニアム開発目標(MDGs)も十分には達成し得ない。
- 公正かつ競争的な市場原理に基づく対応は、潜在的な供給阻害行動の防止に資する。
- 「気候変動、クリーン・エネルギー及び持続可能な開発のための行動計画」に関する対話を進め、その成果について2008年の日本サミットで報告を受けるとのコミットメントを再確認。
- G8首脳は、世界のエネルギー安全保障についての以下の原則にコミットする:
(1)力強い世界の経済成長、効果的な市場アクセス、サプライチェーンのすべての段階における投資、
(2)開放的で、透明性があり、効率的かつ競争的な市場、
(3)透明性があり、公平、安定的かつ効果的な法規制の枠組、
(4)増大する相互依存、需要及び供給の安全保障についての利害関係者の展望に関する対話の強化、
(5)需要、供給、エネルギー源、市場、輸送路及び輸送手段の多様化、
(6)国内的及び国際的イニシアティブを通じた、省エネ及びエネルギー効率のための措置の推進、
(7)気候変動への取組みに資する、環境上適正なエネルギーの開発及び使用、クリーン・エネルギー技術の展開及び移転、
(8)腐敗抑制のための透明性及び良い統治の推進、
(9)協調的な緊急時対応、
(10)重要なエネルギー・インフラの保全、
(11)開発途上国の最貧困層のエネルギー課題への取組み。
- 我々は行動計画を通じ、共通の世界エネルギー安全保障戦略を実施する。
II. 行動計画
1.世界のエネルギー市場の透明性、予見可能性及び安定性の向上
- 自由、競争的かつ開かれた市場が世界のエネルギー・システムの効率的機能にとり不可欠。
- 共同石油データイニシアティブ(JODI)の開始を歓迎し、石油その他のエネルギー源に関する市場データの収集及び報告の改善及び強化のため更なる行動をとる。
- エネルギー憲章条約の原則及びエネルギーについての国際的な協力の強化のための参加国の努力を支持。
- 供給危機に際しては生産者及び消費者による協調行動が極めて重要。国際エネルギー機関(IEA)支援の下での戦略的備蓄の整備、協調及び放出を含む緊急時対応に関するベスト・プラクティスの推進を奨励する。
2.投資環境の改善
- 十分な世界のエネルギー供給確保のためには莫大な投資が必要。競争的、開放的で、公平かつ透明な市場を通じ、これらの資金をエネルギー分野に引きつけるための条件を創設、維持し、予見可能な規制制度を推進する。
- 巨大な投資リスクを削減し、世界のLNG市場の円滑な機能を促進するため、適切な投資条件を創出するよう努める。
- 契約の多様化、エネルギーの貿易・投資にとっての障壁の削減等を進める。
3.エネルギー効率及び省エネルギーの向上
- エネルギー効率及び省エネルギー向上の努力は、経済発展におけるエネルギー集約度を引き下げ、世界のエネルギー安全保障を強化。
- グレンイーグルズ行動計画の迅速な実施に向け前進。「気候変動、クリーン・エネルギー及び持続可能な開発に関する対話」を継続し、2008年の日本でのサミットにおいて報告を受ける。また、特に急成長している開発途上国に対し、G8のイニシアティブに加わるよう求める。民間部門及び他の利害関係者を参加させることが重要。
- エネルギー集約度低減のための国別目標の本年末までの報告を検討する。
- エネルギー効率に関するラベル付けのベスト・プラクティスを推進。技術的に可能で経済的に合理的な最も厳格なエネルギー効率基準の採用に努力。
- 3Rイニシアティブに関し、資源生産性を考慮し、適切な場合には、目標を設定。
- エネルギー自体の生産及び輸送におけるエネルギー損失の減少に一層の注意を払う。
- 運輸分野のエネルギー効率向上のためのベスト・プラクティスの共有等を行う。
4.エネルギー・ミックスの多様化
- エネルギー・ミックスの多様化は世界のエネルギー安全保障上のリスクを減少させる。我々は低炭素及び代替エネルギーの開発、再生可能エネルギーの利用拡大、違法伐採への取組みを含む森林保全、革新的技術の開発及び導入に取り組む。
- 安全かつセキュリティの確保された形での利用と開発を計画する国にとり原子力エネルギーは気候変動問題等への対応と同様にエネルギー安全保障に資する。
- 確固たる核不拡散、原子力安全及びセキュリティに基づく原子力エネルギーの利用は、世界のエネルギー安全保障、気候変動等の課題の対処に資する。
5.重要なエネルギー・インフラの保全
- 我々は、重要なエネルギー・インフラに対する脅威及び脆弱性に対処し、国際協力を推進することにコミットする。また、専門家に対し、エネルギー・インフラの保全における課題に対処することについての検討及び勧告を行うため、必要に応じ会合し、議長国ロシアへ本年末に包括的報告書を提出するよう指示する。
6.エネルギー貧困の削減
- エネルギーへのアクセス促進を含め、国連ミレニアム開発目標(MDGs)に向けた我々のコミットメントを確認する。我々は、脆弱な国がエネルギー価格のマクロ経済に及ぼす衝撃と最貧国層のエネルギーへのアクセスの促進との長期的な課題を克服することを支援する。
- エネルギー投資の多くは、民間部門による必要があり、また、国際金融機関が重要な役割を果たす。我々は既存の二国間及び多国間の開発メカニズムを強化する。
- 個々の具体的ニーズに即したインフラ整備、政策・制度の整備、再生可能エネルギーの推進、地方電化の推進、民間セクターとの協力による人材育成等の開発途上国の取組を支援し、エネルギー効率の向上及び省エネルギーの推進、エネルギーへのアクセスの向上に努める。
7.気候変動及び持続可能な開発
- 我々は、グレンイーグルズでのコミットメントを実行し、国連気候変動枠組条約の究極目的へのコミットを再確認して、温室効果ガスの削減に引き続き努力する。
- 我々は、相互に関連するエネルギー安全保障、大気汚染管理、温室効果ガス削減という課題に対して、多くの方策を実施している。我々のうち、京都議定書の成功にコミットしている者は京都議定書の重要性を強調し、更なる発展を期待する。また、我々の全部又は一部は「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)」をはじめとする様々なイニシアティブに参加している。また、気候変動枠組条約下での長期的対話が進められている。こうした全ての取組みは、2012年以降も含め、将来の行動についての包括的な対話の基礎となる。
- 本年10月にメキシコで行われる閣僚級会合において、引き続き気候変動への取組みに関するより一層の協調の機会を特定する。また、よりクリーンでより効率的かつ低炭素のエネルギー技術の展開や、CDM等を含む市場制度の展開等を通じ、エネルギー安全保障と持続可能な開発を追求する。