G7 / G8

世界のエネルギー安全保障
(仮訳)

サンクトペテルブルク、2006年7月16日

国際的なエネルギーに関する課題

1.エネルギーは、先進国及び開発途上国における生活の質及び機会を向上するために不可欠である。したがって、市場の基礎的条件を反映した価格での、十分で、確実な、かつ、環境の面での責任を果たすエネルギー供給を確保することは、我々各国及び人類全体にとっての課題である。

2.このような包括的な目標に取り組むために、我々は、次のような重大かつ相互に関連した課題に対応しなくてはならない。

 これらの課題の国際的な性質、また、生産国、消費国及び通過国の間の相互依存の増大は、世界のエネルギー安全保障を強化するためのすべての関係者間の強固な連携を必要とする。我々は、透明性があり、効率的かつ競争的な国際エネルギー市場を発展させることが、この点に関する我々の目的を達成する最善の方法であることに意見の一致をみた。我々は、政府及び関連国際機関もまた、国際的なエネルギーに関する課題への取組みに重要な役割を果たすことを認識する。

3.開発途上国において、現在燃料への持続的なアクセスを有さない24億人と電気への持続的なアクセスを有さない16億人がこれらを持続的に利用できるようにすることなしに、世界のエネルギー安全保障も、国連ミレニアム開発目標も十分には達成し得ない。これらの人々は、忘れられたり疎外されたりしてはならない。

国際社会の対応

4.政治的意志があれば、国際社会は、3つの相互に関連する問題、すなわち、エネルギー安全保障、経済成長及び環境保護(3Es)に効果的に対処することができる。国際的なエネルギーに関する課題に対し、公正で競争的な市場に基づいた対応をとることは、エネルギー源、供給及び通過に影響を及ぼす潜在的な阻害行動を排し、長期にわたり力強く持続的な我々の文明の発展にとって安定的な基盤を創設することに資する。

5.我々は、環境面での共通の目標と整合的で、包括的かつ協調的な方策を通じ、エネルギー安全保障を追求する。我々は、昨年グレンイーグルズにおいて、「気候変動、クリーン・エネルギー及び持続可能な開発のための行動計画」の下で我々の取組みを強化することで意見が一致し、2008年の日本でのG8首脳会合においてその結果を報告することとなっているこれらの問題に関する対話を前進させることを決意した。我々は、このコミットメントを再確認する。

 我々はまた、エネルギー貧困を削減するための我々の精力的な努力と連動して、国際連合気候変動枠組条約(UNFCCC)に対する、そして、温室効果ガスの排出を削減し、地球環境を改善し、エネルギー安全保障を強化し、大気汚染を削減するという我々が共有する複数の目的を達成することに対する我々のコミットメントを再確認する。我々はまた、開発途上国におけるエネルギーへのアクセスの改善に取り組むことについて意見の一致をみた。

世界のエネルギー安全保障についての原則に関する宣言

6.世界のエネルギー安全保障の推進においてエネルギーの生産国及び消費国が共有する利益を認識し、我々G8首脳は、以下についてコミットする。

7.以上の目的、原則及び方策に基づき、我々は、以下の行動計画を通じて、我々共通の世界のエネルギー安全保障についての戦略を実施する。我々は、他の国々、関係国際機関及びその他の利害関係者に対し、この努力に我々とともに加わることを呼びかける。

サンクトペテルブルク行動計画

世界のエネルギー安全保障

1.我々は、これまでのG8首脳会合でエネルギーに関して意見の一致をみた事項を実施し、これに基づいて前進することへのコミットメントを再確認する。我々は、以下の鍵となる分野における行動を通じて、世界のエネルギー安全保障を強化する。

I. 世界のエネルギー市場の透明性、予見可能性及び安定性の向上

2.自由で、競争的かつ開かれた市場は、世界のエネルギー・システムが効率的に機能するために不可欠である。透明性向上のための努力、法の支配の深化及び拡大のための努力、予見可能で効率的な財政及び規制制度を確立し及び強化するための努力、また、健全なエネルギー需給政策の奨励のための努力は、すべて世界のエネルギー安全保障の維持に重要な役割を果たす。これらの努力は、不確実性を減少させることにより、エネルギー市場の動向に関する理解を向上させ、また、その結果、健全な投資決定及び競争力を向上させる。すべての市場参加者の間で、適時のかつ信頼に足る情報を定期的に交換することもまた、世界のエネルギー市場が円滑に機能するためには不可欠である。透明性があり、予見可能な国家のエネルギー政策及び規制環境は、効率的なエネルギー市場の発展を促進する。我々は、エネルギー生産国とエネルギー消費国の間で、各々の中長期的な政策上の計画やプログラムに関する情報交換を行うこと等、これらの問題に関する対話を拡大する方法について検討することを、国際エネルギー・フォーラム(IEF)に呼びかける。

3.我々は、共同石油データイニシアティブ(JODI)の公開開始を歓迎し、石油その他のエネルギー埋蔵量を報告するための国際共通基準の策定等を通じて、石油その他のエネルギー源に関する市場データのすべての国による収集及び報告を改善し及び強化するための更なる行動をとる。この観点から、我々は、IEFに対し、JODIへの参加国の拡大に取り組み、データの質及び適時性を引き続き改善することを呼びかける。

4.腐敗防止のための闘いの重要な手段として、我々はまた、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)及び国際通貨基金の資源歳入の透明性に関する指針(GRRT)の文脈等で、エネルギー輸出により得られる公的歳入の管理をより透明性があるものとするための取組みを進める。

5.明確で、安定し、かつ予見可能な国家の規制枠組は、世界のエネルギー安全保障に大きく貢献するものであり、多数国間の取決めは、これらの枠組を更に強化し得る。我々は、エネルギー憲章条約の原則及びエネルギーについての国際的な協力を向上する参加国の努力を支持する。

6.エネルギーの生産者及び消費者による協調行動は、供給危機に際しては極めて重要である。我々は、緊急時対応措置に関連する国際的なベスト・プラクティスを推進するためIEA支援の下での一層の努力を奨励する。このような緊急時対応措置には、需要抑制及び燃料転換の実施措置と共に、適当な場合には、戦略的備蓄の整備、協調及び放出を含む。我々は、最近の逼迫した市況に対応して石油生産を増加するという主要な生産国の建設的措置に留意し、更なる行動を支持する。

II. エネルギー分野における投資環境の改善

7.十分な世界のエネルギー供給確保のためには、2030年までにエネルギー・チェーン全体を通じて何兆米国ドルもの投資を必要とし、開発途上国がその額の相当の部分を必要とする。我々は、競争的で、開かれ、公平かつ透明性のある市場を通じ、これらの資金をエネルギー分野に引きつけるための条件を創出し維持する。我々は、政府の環境政策及びエネルギー政策が投資についての決定にとって極めて重要であることを理解する。従って、我々は、生産国、消費国及び通過国において、予見可能な規制制度を推進する。このような規制制度には、安定的で市場に基づいた投資のための法的枠組、エネルギー需要の中長期的な予測、明確で一貫した税規制、不合理な行政上の障壁の除去、時宜を得た、かつ、効果的な契約の実施及び効果的な紛争解決手続へのアクセスを含む。

8.我々は、国内的及び国際的に、持続的な世界のエネルギーのバリュー・チェーンへの投資を促進するための措置を次の目的のために講じる。

9.我々は、エネルギー市場の柔軟性と信頼性を向上させ、また、経済的に実現可能な場合には炭化水素製品の貿易を拡大するために、炭化水素処理施設の建設及び開発を奨励する。我々は、特に実施可能な技術的基準の調和を通じて、エネルギーに関する規制制度を改善するために、すべての利害関係者とともに努力する。我々は、国際標準化機構に対し、この文脈における関連基準の調和の方法について検討することを要請する。

10.我々は、発電分野への資本流入を促進することが重要であると考えており、このような資本流入には、新しいより効率的な発電所を建設すること、再生可能燃料のより広範な利用のために既存の発電所を改善すること、そして、国境を越える取決めや通過に係る取決めを結ぶなど、送電線を建設し、複数の地域にまたがるエネルギー・インフラを発展させ、電力の交換を促進することが含まれる。我々は、競争的な電力市場、複数の地域にまたがるエネルギー・インフラ及び電力交換の発展を奨励する。

11.急速に拡大するLNG貿易は、パイプラインによる既存の地域的なガス供給システムを次第に補完しつつある。巨大な投資のリスクを削減し、形成されつつある世界のLNG市場の円滑な機能を促進するために、我々は、適切な投資条件を創出するよう努める。

12.ますます高まる投資機会は、エネルギー・サプライ・チェーンにおけるすべての利害関係者の間でより適切にリスクを分散させることを必要としており、このようなリスク分散が信頼性が高く持続的なエネルギーの流れを確保することとなる。市場に基づく長期契約やスポット契約等の異なる種類の契約の間で経済的に健全な多様化を行うことは、時宜を得た意思決定や契約内容の適切な遵守及び実施と同様に、そのようなリスクの緩和に貢献し得る。

13.我々は、エネルギー投資及び貿易にとっての障壁を削減するために努力する。エネルギーの供給国及び消費国双方の企業が、国際的に互恵的な方法で、また、エネルギー生産及びエネルギー消費の世界的な効率性を改善するために、競争ルールを尊重しつつ、上流及び下流の資産に投資したりこれらを取得できたりすることは、特に重要である。市場に基づく国家間での投資の流れもまた、市場や供給源へのアクセスへの信頼性を増大させることにより、エネルギー安全保障を強化する。

14.エネルギー分野全体において熟練した労働力を長期的に確保することは、エネルギー安全保障にとって重要である。我々は、高等教育機関や民間部門に対して、より長期的なエネルギー安全保障の確保のために必要な、新しく技術革新的なエネルギー源や技術等、エネルギー分野における人材の十分な育成のために適切な訓練を提供するために必要な措置をとることを奨励する。

III. エネルギー効率及び省エネルギーの向上

15.省エネルギーは、エネルギーの生産と同じであり、多くの場合、増大するエネルギー需要に応えるための、より入手可能で、かつ、環境の面での責任を果たす選択肢である。エネルギー効率及び省エネルギーを向上させるための努力は、経済発展におけるエネルギー集約度を引き下げ、もって世界のエネルギー安全保障の強化に大きく貢献する。エネルギー効率の向上及び省エネルギーは、インフラに対する負荷を軽減し、温室効果ガスや汚染物質の排出を削減することにより、より健全な環境に貢献する。

16.我々は、「グレンイーグルズ行動計画」の迅速な実施に向けて前進する。我々は、我々の関係閣僚に対して、「気候変動、クリーン・エネルギー及び持続可能な開発に関する対話」を継続し、2008年のG8首脳会合にその成果を報告するよう指示した。我々は、他の国々、特に急成長している開発途上国に対して、対応するG8のイニシアティブに参加するよう求める。これらの成果は、国連気候変動枠組条約の下での、気候変動に対応するための長期的協力に関する対話にも関係するものとなり得る。我々のうち京都議定書を締結した国は、エネルギー効率の促進における柔軟なメカニズムの役割を認識する。民間部門及びその他の利害関係者をこれらの目的の達成に参加させることが重要である。

17.この点においては、ベスト・プラクティスの共有を含む、省エネルギー、エネルギー効率及び関連努力をすべてのエネルギー・バリュー・チェーンに拡張する包括的な取組みを国際社会において行うことが重要である。この目的のため、我々は、次のことを実施する。

18.我々は、世界銀行、IEA及びその他の適当な機関に対し、各機関の任務及び比較優位に従って、国際的に受け入れられている基準、ラベル付け及びベスト・プラクティスの向上、そして公衆啓発運動を行うことを呼びかける。

19.我々は、全体的な資源循環への一体的な取組みの一部として、3Rイニシアティブ(発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)及び再生利用(リサイクル))において資源循環を最適化するための包括的な措置に対する我々のコミットメントを再確認する。この努力を更に進めるために、我々は、資源生産性を考慮して、適切な場合に目標を設定する。我々はまた、各国の及び国際的な努力を通じて、エネルギー効率及び環境保護の重要性に関する認識を高める。

20.省エネルギー及びエネルギー効率を向上させる上で、我々は、生産及び輸送における損失を削減することによりこの目的に大きく貢献し得るエネルギー分野自体に一層の注意を払う。我々のこの分野における優先的な措置には、次のものが含まれる。

21.世界の石油の3分の2が運輸分野において消費され、運輸分野における燃料消費の速度は、エネルギー消費一般の速度を上回っているため、我々は、この分野のエネルギー需要に特別の注意を払う。運輸をよりエネルギー効率的かつ環境上より進んだものとするために、我々は、次の措置を講ずる。

22.我々は、すべての国に対し、エネルギー効率を高め、省エネルギーを促進するためのインセンティブを提供することを求める。

IV. エネルギー・ミックスの多様化

23.エネルギー・ミックスの多様化は、世界的なエネルギー安全保障上のリスクを減少させる。我々は、低炭素及び代替エネルギーを開発し、再生可能エネルギーをより幅広く利用し、また、すべてのエネルギー分野を通じて革新的な技術を開発し導入するための取組みを行う。

代替的な、よりクリーンな低炭素エネルギー

24.我々は、二酸化炭素の回収貯蔵、そして二酸化炭素を一切排出しない電力設備の開発に関する紹介プロジェクトの準備及び実施を目指した炭素隔離リーダーシップ・フォーラム(CSLF)の活動を更に奨励する。この文脈で、我々は、あらゆる適当な場合にクリーンな石炭技術の開発及び導入を推進する。

25.我々は、すべての石油産出国及び民間部門の利害関係者に対し、精製及び燃料や石油化学製品への加工を含む、随伴ガスの利用を促進することにより、天然ガスの放出及び燃焼を最小水準まで削減することを奨励する。この点に関し、我々は、「グローバル・ガス・フレアリング削減パートナーシップ」の活動、及びメタン市場化パートナーシップ(M2M)による、特に開発途上国において埋立地、農業廃棄物及び炭層メタンから市場取引可能なメタンを生産するプロジェクト実施活動を支援する。

26.我々は、水素経済のための国際パートナーシップ(IPHE)の枠組におけるものを含む、水素経済への移行を支持する。この取組みにおいて重要なことは、水素電力の商業的開発、インフラ及び安全性要件の分野について、共通の国際的基準を策定することである。

原子力エネルギー

27.我々は、G8各国がエネルギー安全保障及び気候保全の目標を達成するために異なった方法をとっていることを認識する。

28.チェルノブイリの事故から20年が経過して会合していることを受け、我々は、原子力安全と核セキュリティに関する1996年のモスクワ首脳会談でのコミットメント、また、安全、セキュリティ及び不拡散の最重要性を強調する。

29.我々のうち、安全かつセキュリティの確保された原子力エネルギーの使用及び/又は開発に関連する計画を有しあるいは検討している国は、その開発が、有害な大気汚染の削減、気候変動の課題への対応と同時に、世界のエネルギー安全保障に資することを確信する。

30.我々は、次のことにコミットする。

31.我々は、不拡散に係るコミットメント及び基準と整合しつつ、競争条件の下ですべての国が原子力エネルギーへの確実なアクセスを認められるべきとの2004年の不拡散に関するG8行動計画に謳われた目的を再確認する。この行動計画に基づき、我々は、各国がすべての関連する国際的な不拡散に関するコミットメントを守り、その義務を遵守することを条件として、適当な場合には多数国間でのメカニズム等を通じ、原子炉燃料用の低濃縮ウラン及び使用済み燃料の再利用手段への信頼できるアクセスが確保されるようにするために追加的に共同で努力する意図を有する。

32.この関連で、我々は、IAEAの枠組において最近提出された多国間燃料供給保証に関する最近の潜在的に補完的なイニシアティブや、原子力の機微技術の拡散の防止を含む核燃料サイクルの拡散抵抗性を高める方法で平和的な原子力エネルギーを更に開発することを目指した、ロシア及び米国の提案に留意する。

再生可能エネルギー

33.再生可能エネルギーの大規模な利用は、気候への悪影響を及ぼすことなく、長期的なエネルギー供給に大きく貢献する。太陽光、風力、水力、バイオマス及び地熱といった再生可能なエネルギー源は、次第に費用の面で従来燃料と競争力を有するようになってきており、現在の様々な形態での応用は、既に費用対効果が高い。従って、我々は、グレンイーグルズ行動計画に定める措置を実施することに対する我々のコミットメントを再確認する。

34.我々は、再生可能エネルギーとエネルギー効率のパートナーシップ(REEEP)、21世紀のための再生可能エネルギー政策ネットワーク(REN21)、地中海再生可能エネルギー・パートナーシップ(MEDREP)等の、再生可能エネルギーを取り扱う国際的なメカニズムやプログラムにおける関係者の作業を歓迎する。我々は、国際バイオ・エネルギー・パートナーシップ(GBEP)の設立を歓迎する。我々は、開発途上国と協同して、再生可能エネルギーの利用促進に取り組む。

35.我々は、バイオマスの潜在能力の活用及び先進的な持続可能な森林経営の実施方法という両分野における国際的な協力を引き続き強化する。これらの協力は、地域的なエネルギー消費を多様化し及び炭素隔離に重要な貢献を行い、また、幅広い経済的利益及び環境上の利益を増進する。

36.我々は、森林管理の分野、主に森林減少、森林劣化、違法に伐採された材木の貿易及び森林火災への取組みにおける国際協力を促進する。我々は、森林減少が気候変動に重大な影響を与えることに留意する(国連食糧農業機関(FAO)によれば、1年間に排出される温室効果ガスの実質上25%をもたらす)。我々は、違法伐採への取組みの重要性を再確認し、各国が最も効果的に貢献することのできる措置を講じることにより、更なる行動を起こすことについて意見の一致をみた。このような行動は、持続可能な森林経営を促進し、木材の生産国及び消費国双方の関連する国の政策に違法伐採に取り組むための適当な措置を導入することを含む。我々は、欧州・北アジアの森林法施行とガバナンスに関するサンクトペテルブルク閣僚宣言、国連森林フォーラム(UNFF)、国連気候変動枠組条約、国際熱帯木材機関(ITTO)及びアジア森林パートナーシップ(AFP)等、最近の国際的な森林関連の政策イニシアティブを歓迎する。

革新的なエネルギー技術

37.我々は、この分野における投資を奨励する市場先導型の政策を支持することにより、革新的なエネルギー技術の市場への参入及び活用を加速化するために、民間部門と協調して作業する。

38.エネルギー・ミックスにおける代替エネルギー源の果たす役割が増大してきているにも拘わらず、炭化水素は、今世紀の相当の間は全エネルギー消費において引き続き主導的な役割を果たすと予想される。従って、我々は、炭化水素のより効率的な生産を進め、炭化水素の生産及び使用が環境に及ぼす影響を削減する革新的技術の利用を加速化するために、民間部門とともに取り組む。これらの技術には、深海からの石油及びガスを生産する技術、瀝青(れきせい)砂からの石油の生産、炭素の回収貯蔵等のクリーンな石炭技術、ガス・ハイドレートからのガスの抽出、そして合成燃料の生産が含まれる。

39.我々は、先進的な電力網の建設、超電導、超微少生物工学(ナノ・バイオ技術)を含む超微少技術(ナノ・テクノロジー)等のその他有望な技術を開発するための措置を講じる。我々は、国際熱核融合実験炉(ITER)協定の参加各国による仮調印が最近行われたことを歓迎し、この機会に同協定の枠組における核融合エネルギーに関する研究開発プログラムを奨励する。

40.我々は、これらの技術が経済的に実現可能な形で最も早期に市場参入することを促進するために、基礎研究及び応用研究間のより緊密な連係を促進する。

V. 重要なエネルギー・インフラの保全

41.世界のエネルギー・インフラの保全は、関連し、相互に依存している。エネルギー・インフラの国際的な性質にかんがみれば、我々は、如何なる国も危険から自国を隔絶することはできないということを認識する。従って、我々は、世界のエネルギー網の安全保障を確保することにコミットし、その脆弱性についてのより良い理解及び意図的な攻撃による妨害を防ぐための取組みを改善する方法についてのより良い理解を得るために努力する。我々は、エネルギー・インフラに対する危険を評価するための協調的な国際的プロセスを支持し、エネルギー・インフラの保全に関するベスト・プラクティス及び専門知識を共有するより効果的な方法を支持する。

42.我々は、重要なエネルギー・インフラに対する脅威とその脆弱性に対処すること、また、この点に関して国際協力を推進することにコミットする。我々は、我々の専門家に対し、エネルギー・インフラの保全における多くの課題に対処することについての検討及び勧告を行うために必要に応じて会合を開催するよう、また、次のことに関する包括的な報告書を本年末に議長国ロシアに提出するよう指示する。

43.我々は、船舶及び港湾施設の保安に関する国際規則(ISPSコード)を各国政府が完全に実施することを求め、海上の保安の管理への考慮を奨励する。

VI. エネルギー貧困の削減

44.我々は、エネルギーへのより良いアクセスを促進すること等を通じて、国連ミレニアム開発目標への我々のコミットメントを確認する。エネルギー貧困の課題に取り組むことなしに、開発途上国において、一般的な貧困を劇的に削減し、保健サービスを支援し、きれいな飲料水や衛生を提供し、より生産的な農業や食糧生産を増進し、また、雇用の創出に資する事業への投資を確保することは、どれも不可能である。我々は、エネルギー価格に関連するマクロ経済的な衝撃や最貧困層のエネルギーへのアクセスを促進するとの長期的な課題を、脆弱な国々が克服することを助ける。

45.エネルギー貧困に取り組むための健全な戦略は、次のものに関連付けられるべきである。

46.エネルギー投資の大部分は、民間部門によりなされる必要がある。開発途上国に対する支援プログラムは、これらの資本を引きつけるために必要な政策及び規制体系の改善を促進するように機能するべきである。

47.国際金融機関(IFIs)は、これらの課題への対応に重要な役割を果たす。我々は、多数国間開発銀行が、代替的エネルギー源、エネルギー効率の一層の向上及び開発途上国における適応への投資を促進する努力を再び活性化しているという進展を歓迎する。我々は、国際金融基金の外生ショック・ファシリティーの立ち上げを歓迎し、他のG8以外の国々に対しても同ファシリティーに貢献することを呼びかける。我々は、他の国々及び国際金融機関に対し、官民パートナーシップの促進を通じて最貧国におけるエネルギーへのアクセスを促進することを求める。

48.エネルギー貧困である開発途上国の国民に対する、信頼に足り、近代的で、持続的なエネルギー・サービスへのアクセスを向上させるために、我々は、既存の二国間及び多数国間の開発メカニズムを強化する。我々は、特にアフリカにおいてエネルギー・ギャップを埋めることを目指すプロジェクトに共同出資するために無償資金協力を利用する欧州連合のエネルギー・ファシリティを、そして、日本が「アフリカの民間セクター開発のための共同イニシアティブ(EPSA for Africa)」を促進するためにアフリカ開発銀行と共同で行っている活動を歓迎する。我々は、「持続可能な開発のためのエネルギー」の議題に関する見直し及び政策協議を専ら行う国連の持続的開発に関する委員会による2年周期の作業(2006年-2007年)の成果に期待する。

49.我々は、開発途上国における貧困削減及び長期的なエネルギーの持続性に資するために、中心的な発電技術を基盤とした開発や、水力、風力、地熱、バイオマス及び太陽光エネルギーの効果的な利用等の再生可能エネルギーを基盤とした開発を含め、地方におけるエネルギー源の開発を促進する。これらの方策は、特にエネルギー・ショックに対する脆弱性を削減することが可能なエネルギー・インフラの開発を含む。

50.我々は、我々の専門家に対して、他の国々、国際的及び地域的な金融機関(世界銀行、地域的開発銀行、国連の関連機関等)、民間部門、そしてその他の利害関係者とともに、エネルギー効率、省エネルギー、再生可能なエネルギー及び分散化した地方毎のエネルギー源の分野における技術移転を促進し、エネルギー貧困を削減し、もって開発途上国においてエネルギーへのアクセスを向上させ、エネルギー効率を強化すべく取り組むよう指示した。グレンイーグルズ行動計画を基に協調してこれらの努力をすることは、次の行動を通じて、開発途上国におけるエネルギー効率改善及び省エネルギー促進に役立ち得る。

51.我々は、世界銀行のクリーン・エネルギーに関する投資枠組の完成及び実施に期待し、同枠組がエネルギー・サービスへのアクセスの向上に一層留意すべきことを強調する。

52.我々は、国家の財政運営及び会計制度を強化し、政府予算、調達手続及び権利付与をより透明なものとし、腐敗と闘うための具体的な措置を講じ、良い統治を確保し、国内資源を動員し、また、民間の起業家及び投資家にとっての商業条件を漸進的に改善することは、開発途上国における上記の課題を効果的に解決するために不可欠であるとの見解を共有する。この文脈で、我々は、アフリカに関するグレンイーグルズでの決定にも言及する。

VII. 気候変動及び持続可能な開発への取組み

53.我々は、貧困を削減するための我々の精力的な努力と連動して、温室効果ガスを削減し、地球環境を改善し、エネルギー安全保障を強化し、大気汚染を削減するという我々が共有する複数の目的を達成するために、グレンイーグルズにおけるコミットメントを果たす意図を再確認する。我々はまた、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させるという、国連気候変動枠組条約の究極的な目的への我々のコミットメントを確認する。

 我々は、温室効果ガスを削減し、気候変動に関する課題に効果的に取り組むために引き続き努力する。

 我々は、エネルギー安全保障、大気汚染管理及び長期的な地球規模での気候変動に関係する温室効果ガスの削減という、相互に関連する課題に取り組むため、多くの方策を実施している。我々は、気候変動に関し、国連気候変動枠組条約及びその関連メカニズムの下での共同のコミットメントを再確認する。

 我々のうち京都議定書の成功にコミットした者は、同議定書に我々が付与した重要性を強調し、クリーン開発メカニズム及び共同実施メカニズムを同議定書の中心的要素と見なし、同議定書を更に発展させるプロセスに期待する。

 我々の全員あるいは一部は、他にも、これらの課題に対応するために、クリーン開発及び気候に関するアジア太平洋パートナーシップ、メタン市場化パートナーシップ、水素経済のための国際パートナーシップ、炭素隔離リーダーシップ・フォーラム、再生可能エネルギーとエネルギー効率のパートナーシップ及び国際バイオ・エネルギー・パートナーシップといったイニシアティブにも参加している。

 我々は、国連気候変動枠組条約の実施を強化することにより気候変動に対応するための長期的協力の行動に関する対話を行うことにコミットした、同条約第11回締約国会議(モントリオール、2005年12月)における進展及び5月にボンで開催された、気候変動に関する国連の会合における進展を歓迎する。

 我々は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)での作業の重要性を再確認し、同パネルによる2007年報告書に期待する。

 これらすべての取組みは、気候変動に対処するための我々の現在の努力の基盤であり、2012年以降の時期を含む将来における更なる行動に関する包括的な対話の基礎を成すものである。

54.我々は、グレンイーグルズ行動計画の内容を支持し実施するため、クリーン・エネルギー及び持続可能な開発のための枠組の構築に関して、また、代替エネルギーのシナリオ及び戦略の特定に関して、世界銀行及び国際エネルギー機関により達せられた進展を歓迎する。

55.我々は、昨年11月1日に開催された「気候変動、クリーン・エネルギー及び持続可能な開発に関するグレンイーグルズ対話」第1回会合における進展を歓迎する。我々は、2006年10月にメキシコで開催される次回閣僚級会合に期待する。我々は、同閣僚級会合において、気候変動に取り組むための一層の協調のための機会を引き続き特定する。また、その一方で適当な場合にはクリーン開発メカニズム、共同実施、排出量取引及び適応を含む、よりクリーンで、より効率的な、かつ、低炭素のエネルギー技術の展開や資金的制度及び市場制度の展開を通じて、エネルギー安全保障及び持続可能な開発を追求する。

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