
世界経済における成長と責任(骨子)
平成19年6月7日
1.世界経済の成長のためのG8アジェンダ
- 世界経済は引き続き堅調。世界的不均衡は、長期間かけて拡大してきたものであり、(為替レートのみによる短期的な調整ではなく)各国が国内の経済政策や構造政策を適切に遂行することで、円滑に調整すべき。
- 日本は、成長力加速プログラムを通じた生産性向上、財政健全化の目標達成に向けた財政改革の着実な実施にコミット。
- 我々は、新興経済国や産油国にも努力を求める。多額かつ増加する経常収支黒字を有する新興経済国においては、為替レートが、必要な調整が進むように変動することが重要。
2.金融市場のシステミックな安定性と透明性/ヘッジファンド
- ヘッジファンドは、先端的手法を駆使し、金融システムの効率性に貢献。他方、取引が複雑化しているため、その潜在的なリスクの評価がより困難となっており、警戒が必要。
- 我々は、ヘッジファンドの取引相手である金融機関によるリスク管理の強化や、業界団体による実務慣行の見直し、各国監督当局間の協力等を通じて、市場の不安定化のリスクに対応すべきとのG8財務大臣による合意を支持。
3.投資の自由、投資環境及び社会的責任
- オープンで透明性の高い投資の枠組みを強化。投資規制は安全保障に関連する極めて限定的なケースにのみ適用。
- 新興国が投資から裨益し、新興国からの投資が活発化する中、全ての投資家が同じ競争条件の下に立つ必要性を認識。また、新興国に対しOECDにおける投資条件に関するハイレベル対話に参加するよう求める。
- 一方で、多くの途上国は十分に投資の利益を享受していない。健全な投資環境を整備するため、OECDの「投資のための政策枠組み」を支持。
- グローバル化の社会的側面に対応するため、企業の社会的責任に関する原則を強化し、国連グローバル・コンパクトの重要性を強調。
4.イノベーションの促進と保護
- イノベーションは経済成長と繁栄の基礎。イノベーション促進のためのOECDグローバル・サイエンス・フォーラム等においてG8と新興国が協力することを支持。
- イノベーションのもたらす利益を持続的なものとするには、知的財産権による保護が必要。その観点から、模倣品と海賊版との闘いへの我々のコミットを強く再確認。その関連でいくつかの途上国と能力開発を目的とした技術協力パイロット・プランを開始することに合意。また、知財保護の国際的な法的枠組みを強化するための努力を継続。
- OECDにおいて、イノベーションの促進と知的財産権の保護に関する新たな国際的対話のためのフォローアップ・プロセスを立ち上げ、新興国の参加を求める。
5.気候変動・エネルギー効率と安全保障:世界経済にとっての挑戦と機会
- 気候変動は真の脅威であり、温室効果ガス削減に向けた断固たる協調的な国際社会による行動が緊急に必要とされていることに強く合意。気候変動はグローバルな参加と異なる事情を考慮した多様なアプローチを要する長期的課題。
- また、これまでG8における主要議題であった3Rやエネルギー憲章条約の原則への支持を含むエネルギー分野については、気候とエネルギー安全保障に係わる挑戦に効果的に貢献すべく、本年はエネルギー効率に焦点。
- これまでの気候変動、クリーン・エネルギー及び持続可能な開発に関するグレンイーグルズ対話の進展を歓迎し、今後ドイツと日本が本対話を主催することを歓迎。日本でのサミットで本対話の報告を受けることに期待。
- 排出削減の地球規模での目標を定めるにあたり、本日我々が合意したすべての主要排出国を含むプロセスにおいて、我々は2050年までに地球規模での排出を少なくとも半減させることを含む、EU、カナダ及び日本による決定を真剣に検討する。
- 国連の気候に関するプロセスが将来の行動を交渉する適切な場であることを認識し、全ての主要排出国を含む、2013年以降の包括的な合意の達成に向け、2007年12月のインドネシアにおける国連の気候変動会議に積極的かつ建設的に参加するよう、全締約国に呼びかける。
- 主要排出国が2008年末までに新たなグローバルな枠組みのための具体的な貢献を行うことが決定的に重要。それは2009年までのグローバルな合意に貢献するであろう。そのために必要な内容を検討すべく主要排出国が引き続き会合を行う。本年後半に、米国がかかる会合を主催するとの申し出を歓迎。
- また、技術の開発・普及、市場メカニズムの活用、違法伐採を含む森林減少対策、適応対策について協力。
- 建築物、運輸、発電、産業分野におけるエネルギー効率の向上に努力。
- 多様化はエネルギー安全保障と低炭素エネルギーへの移行に決定的に重要であり、再生可能エネルギーの利用促進、不拡散、安全、セキュリティに配慮しつつ、原子力の平和利用のさらなる発展に留意。
6.天然資源への責任:透明性と持続可能な成長
- 天然資源は持続可能な成長の鍵となる要因であり、採取セクターの透明性の向上を支持し、採取産業透明性イニシアティブのような良い統治と反腐敗のイニシアティブへの支持を継続。
7.腐敗との戦い
- 腐敗との戦いはG8の最も重要な任務の一つ。国連腐敗防止条約の全ての国による批准の支持、その実施促進のための調整、国連薬物犯罪事務所などの活動支持、OECD贈賄防止条約の活用等、効果的に腐敗と戦うための共通の努力を強化。
8.G8メンバー国と新興経済国間のハイレベル対話プロセス「ハイリゲンダム・プロセス」
- 今や、G8、主要新興国の協調なくして世界経済における主要な挑戦に効果的に対処することはできない。今後2年間で、G8と新興国の間でイノベーション、投資、開発、エネルギー効率の4つをテーマとした対話を実施。
- このため、OECDに対し、IEAの支援も得つつ、この対話プロセスの場を提供することを要請。本対話は本年後半に始まり、2008年の日本サミットで中間報告を行い、2009年のイタリアサミットで最終報告を提出。