G7 / G8

G8ハイリゲンダム・サミット(概要)

平成19年6月8日

1.日程・場所

 33回目を迎えたサミット(主要国首脳会議)は、6月6日(水曜日)~8日(金曜日)までドイツのハイリゲンダムにて開催された。サミットでは、6日のメルケル首相主催夕食会に引き続き、7日及び8日、以下の議事日程に従い議論が行われた。

7日 G8セッション

(1)午前:世界経済、気候変動(引き続きJ8(注)との会合を開催)
(2)ワーキング・ランチ:不拡散(北朝鮮、イラン)
(3)午後:コソボ、アフガニスタン
(4)ワーキング・ディナー:中東、アフリカ等
(注)G8首脳が、今回のサミットに関連した課題につき、G8各国の青年代表と討論。

8日 招待国及び国際機関との対話

(1)午前:
   1)アフリカとのアウトリーチ
   2)アウトリーチ
(2)ワーキング・ランチ

2.G8の主な論点

 議長国ドイツは、「成長と責任」をテーマとして、「世界経済」、「アフリカ」を主要議題として提示。世界経済の分野では、気候変動が大きなテーマとなった。

 政治・安保分野では、北朝鮮、イランの核問題を含む不拡散、コソボ、アフガニスタン、中東等について議論。

(1)世界経済

 冒頭、メルケル首相より、世界経済にかかる諸問題の背景(新興国の台頭、経常収支不均衡、ヘッジファンド、投資環境、資源問題等)につき説明。各国より、自国経済の現状、課題、対応につき説明。世界経済の現状認識としては、全体的に肯定的な評価が示されたが、アフリカ等の途上国との成長格差、投資規制に見られる保護主義の問題、DDAの早期妥結の必要性、新興国の建設的な行動への期待、及びそれら新興国を含むグローバルなルール作りの必要性等につき問題提起された。

 総理より、イノベーションの促進と知的財産権の保護を中心に発言した。総理は、様々な地球規模の制約に直面している現況下で、イノベーションの促進を成長の原動力とする必要があること、我が国としても、オープンな姿勢でイノベーションの促進に取り組むため、「イノベーション25」を策定したこと等を紹介するとともに、経済成長、エネルギー安全保障、環境保護両立のために国際社会が協同して革新的技術を開発する必要性を訴えた。

(2)気候変動・エネルギー効率

 今次G8サミットでは、気候変動が大きなテーマとなった。総理から、先に発表した日本提案「美しい星50」を紹介し、世界全体の排出量を現状に比して2050年までに半減することを全世界の共通の目標とするとともに、次期枠組みを構築するに当たっての「3原則」を提案した。その結果、こうした内容を軸に議論が行われ、2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を少なくとも半減することなどを真剣に検討することでG8首脳の合意が得られた。(首脳文書関係部分別添1

(3)地域問題・外交政策

(イ)冒頭、総理より、議論をリードする形で北朝鮮による核兵器開発は容認できず、引き続き国際社会として圧力をかける必要がある、拉致問題は国際的広がりのある人道問題であり、G8として連携して強い対応をとる必要がある、これらについて国際社会は北朝鮮に対して明確なメッセージを送るべき旨述べた。その結果、参加首脳の支持を得、議長総括で力強いメッセージを発出することができた。(首脳文書関係部分別添2

(ロ)イランについては、濃縮活動継続・拡大についての懸念や、国際社会の一致した断固たる対応が必要との意見が表明された。同時に、ソラナEU上級代表とラリジャニ書記との間の交渉への期待も表明された。

(ハ)その他、コソボ、アフガニスタン、中東等につき議論が行われた。

(4)アフリカ

 G8としてこれまでのコミットメントを着実に実施することが重要であり、アフリカにとり信頼できるパートナーであることを示す必要性について認識を共有した。また、アフリカのピア・レビュー・メカニズムを支持していく必要性や中国など新興ドナーが建設的役割を果たすよう対話を行っていく必要性等が指摘された。総理より、アフリカ諸国におけるオーナーシップの重要性を指摘し、アジアでの発展の基礎となった良い統治(ガバナンス)の経験をアフリカにも広めていきたい旨発言した。

3.成果文書

 議論を踏まえ、「議長総括」に加え、世界経済(不均衡、ヘッジファンド、投資、イノベーション、気候変動・エネルギー効率、天然資源、腐敗、ハイリゲンダム・プロセス)、貿易、アフリカにおける成長と責任(ガバナンスの強化、投資と経済成長、平和と安全、保健と感染症)、不拡散(核不拡散体制強化、イラン、北朝鮮等)、テロ対策(テロ対策宣言、国連におけるテロ対策報告書)、スーダン(人道状況の改善、AU・国連との協力)についての文書を発出。

4.招待国及び国際機関との対話(アウトリーチ)

(1)アフリカとのアウトリーチ(注1)

 G8側首脳より、グレンイーグルズでの各国のコミットメントの着実な実施の重要性、AUやNEPADとのパートナーシップを通じて、ガバナンスの向上を支援していく必要性等が指摘された。アフリカ諸国の首脳からは、これまでのG8の取組に感謝が表明される一方、更なる支援の要請を求める発言も見られた。総理より、来年のG8サミットに関し、7月7-9日の日程で、北海道洞爺湖で開催する、テーマについては環境立国日本として環境、気候変動問題を取り上げることを考えている、また、運営においても徹底的に環境に優しいサミットにしたい旨を発言した。また、アフリカについても、来年5月にTICADⅣを開催する予定であり、サミットでも議論されるであろう、日本が戦後、廃墟の中から経済成長を実現した経験をふまえ、アフリカにおける貿易・投資の促進を支援するため、無税無枠の拡充や一村一品運動などの取組を推進している旨を発言した。

(注1)アフリカの招待国は、南アフリカ、エジプト、アルジェリア、ガーナ(AU議長国)、ナイジェリア、セネガル、エチオピア(NEPAD議長国)。

(2)アウトリーチ

 G8首脳は、気候変動を含む世界経済の諸課題への対応について、中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカの首脳との対話を行った。気候変動への対応について、G8側首脳より、本対話に参加している新興国が多大の温室効果ガスを排出している事実を提起し、主要排出国が大きな責任を有している、この問題への対処につき新興国側と対話を深めていく必要があると発言。これに対し、新興国側からは、途上国の目標設定は時期尚早であるとの意見や、緩和、適応の面での協力を得たい、「共通だが差異のある責任」の原則に立脚した上で、議論を深めていきたいとの発言等があった。

(3)ワーキング・ランチ(注2)

 G8及びアウトリーチ諸国に加え、国連、IMF、世銀、WTO、OECD、IEAの長又はその代理も参加し、WTOドーハラウンド交渉を中心とした世界経済の直面する諸課題への対応につき、意見交換を実施。WTOドーハラウンド交渉につき、昨年の交渉中断後、本年に入り交渉のペースは加速化しており、合意が可能な状況にあるとの評価が共有された。ドーハラウンドの失敗は大きなリスクを伴うことが強調され、交渉参加国が早急にカードを示す必要性が指摘された。総理より、途上国の開発が重要であり、特にキャパシティ・ビルディングが重要である旨、ドーハラウンド交渉の成功のため、日本として柔軟性を示すべく、努めている旨を発言した。

(注2)ワーキング・ランチ参加国、国際機関等:G8、アフリカ招待国、中国、インド、ブラジル、メキシコ、南ア、国連、IMF、世銀、OECD、IEA、WTO、AU

5.2008年日本主催G8サミット

 2008年7月に北海道洞爺湖でG8サミットを開催することを歓迎する旨「議長総括」に盛り込まれた。


別添1

気候変動

49. We are therefore committed to taking strong and early action to tackle climate change in order to stabilize greenhouse gas concentrations at a level that would prevent dangerous anthropogenic interference with the climate system. Taking into account the scientific knowledge as represented in the recent IPCC reports, global greenhouse gas emissions must stop rising, followed by substantial global emission reductions. In setting a global goal for emissions reductions in the process we have agreed today involving all major emitters, we will consider seriously the decisions made by the European Union, Canada and Japan which include at least a halving of global emissions by 2050. We commit to achieving these goals and invite the major emerging economies to join us in this endeavour.

49.我々は従って、気候変動の取組において、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において温室効果ガスの濃度を安定化させるため、強固かつ早期の行動をとることにコミットしている。最近発表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告にある科学的知識に鑑みると、地球規模での温室効果ガスの排出の上昇がピークを迎え、これに続いて、地球規模での排出が大幅に削減されなければならない。本日我々が合意したすべての主要排出国を巻き込むプロセスにおいて、排出削減の地球規模での目標を定めるにあたり、我々は2050年までに地球規模での排出を少なくとも半減させることを含む、EU、カナダ及び日本による決定を真剣に検討する。我々は、これらの目標の達成にコミットし、主要新興経済国に対して、この試みに参加するよう求める。

53. To address the urgent challenge of climate change, it is vital that major economies that use the most energy and generate the majority of greenhouse gas emissions agree on a detailed contribution for a new global framework by the end of 2008 which would contribute to a global agreement under the UNFCCC by 2009.

We therefore reiterate the need to engage major emitting economies on how best to address the challenge of climate change. We embrace efforts to work with these countries on long term strategies. To this end, our representatives have already met with the representatives of Brazil, China, India, Mexico and South Africa in Berlin on 4 May 2007. We will continue to meet with high representatives of these and other major energy consuming and greenhouse gas emitting countries to consider the necessary components for successfully combating climate change. We welcome the offer of the United States to host such a meeting later this year. This major emitters’ process should include, inter alia, national, regional and international policies, targets and plans, in line with national circumstances, an ambitious work program within the UNFCCC, and the development and deployment of climate-friendly technology.

This dialogue will support the UN climate process and report back to the UNFCCC.

53.気候変動の緊急な挑戦に取り組むためには、多くのエネルギーを使用し、大部分の温室効果ガスを排出する主要経済国が、2008年末までに、新しい地球規模の枠組みに対する詳細な貢献について合意し、それが、2009年までに気候変動枠組み条約の下において地球規模の合意に資することが必須である。

 従って我々は、主要排出国が、気候変動の挑戦に対する最良の取組のあり方について関与する必要性を繰り返し述べる。我々は、それらの国々と長期的な戦略について共に作業することを受け入れる。このため、我々の代表は、ブラジル、中国、インド、メキシコ、南アフリカの代表と、2007年5月4日にベルリンで会合した。我々は、気候変動との闘いに成功するのに必要な要素を検討するため、これらの、そしてその他の主要なエネルギー消費及び温室効果ガス排出国のハイレベルの代表との会合を継続する。我々は、今年後半にそのような会合を主催するという米国の申し出を歓迎する。この主要な排出国によるプロセスは、各国の状況に応じた、特に、国内、地域及び国際的政策、目標と計画、国連気候変動枠組条約の下での野心的な作業計画、及び気候に優しい技術の開発と展開を含むべきである。

 この対話は、国連の気候プロセスを支援し、国連気候変動枠組条約会議で報告を行う。


別添2

North Korea: We urge North Korea to return to full compliance with its obligations under the NPT and, in accordance with the Joint Statement of 19 September 2005 and UNSC-Resolutions 1695 and 1718, to abandon all nuclear weapons and existing nuclear programs as well as ballistic missile programs. We fully support the Six Party Talks and swift implementation of the initial actions agreed on 13 February 2007 as a first step towards full implementation of the Joint Statement of 19 September 2005 in good faith. We also urge North Korea to respond to other security and humanitarian concerns of the international community, including the early resolution of the issue of abductions

北朝鮮: 我々は、北朝鮮に対し、NPT上の義務を完全に遵守するとともに、2005年9月19日の共同声明及並びに安保理決議第1695号及び第1718号に従って、すべての核兵器及び既存の核計画並びに弾道ミサイル計画を放棄するよう求める。我々は、六者会合及び2005年9月19日の共同声明の誠実かつ完全な実施に向けた第一歩としての2007年2月13日に合意された初期段階の措置の速やかな実施を完全に支持する。我々は、北朝鮮に対し、拉致問題の早急な解決を含め、国際社会の他の安全保障及び人道上の懸念に対応するよう求める。

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