G7 / G8

ムスコカ・サミット

G8ムスコカ・サミット首脳宣言:回復と新たな始まり
(主要なポイント)

2010年6月

1.導入

  • G8は,主要課題に対するビジョンを共有し,課題に取り組むためのアプローチの形成を主導。ムスコカ・サミットでは,開発,国際の平和と安全及び環境保護にリーダーシップを発揮。過去のコミットメントへの「ムスコカ説明責任報告書」を歓迎。人々の幸福の向上及び効果的な評価に更なる注意を払いつつ,世界経済の回復を,より安全,公平,包括的かつ持続可能な国際社会の構築につなげる。

2.開発

  • 途上国との連携を強化し,開発に向けた支援を確認。途上国にも社会経済的発展とガバナンスに対する責任を果たすよう要請。本年はミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)達成に向けた節目の年。MDGs達成には,人間の安全保障に焦点を置きつつ,更なる努力が必要。9月の国連首脳会合における努力の加速,また,民間セクターを含む関係者の行動を要請。
  • 母子健康の進展は遅れている。G8は既に年間41億ドル貢献しており,本日,G8は他のパートナーとともに,MDG4(乳幼児死亡率の削減)及び5(妊産婦の健康の向上)の進展を加速するためのムスコカ・イニシアティブを立ち上げる(詳細は別添I)。我々G8は,今後5年間で,本日現在で50億ドルの追加的拠出を約束。G8の支援は触媒であり,より集合的努力を生み出すため,他の政府等の同イニシアティブへの参加を歓迎。蘭,ニュージーランド,ノルウェー,韓国,スペイン,ゲーツ財団及び国連財団は,23億ドルの追加的拠出にコミットした。2010年から2015年の間で,それぞれの予算プロセスに従いつつ,ムスコカ・イニシアティブが100億ドルを遙かに超える額を動員することを期待。我々の支援により,(i) 乳幼児の死亡を130万人防ぎ,(ii) 妊産婦の死亡を6万4000人防ぎ,及び(iii) 追加的に1200万組の男女が家族計画の近代的方法へアクセスすることを支援。また,途上国にも母子保健のための自らの努力の強化を奨励。
  • 食料安全保障は,依然として喫緊の課題。昨年のサミットで合意した3年間で220億ドルを最終的に動員し,4月30日現在,65億ドルの資金を拠出,配分。世界銀行,地域開発銀行,FAO(国際連合食糧農業機関:Food and Agriculture Organization),UNCTAD(国際連合貿易開発会議:United Nations Conference on Trade and Development)及びIFAD(国際農業開発基金:International Fund for Agricultural Development)による,農業投資に関する原則の策定を支援。

3.アフリカ

  • 安定的,民主的かつ繁栄したアフリカのためのアフリカ主導の努力を支援し,G8とアフリカとの連携継続を再確認。また,アフリカ首脳は,保健及び特にアフリカの平和維持訓練センターを通じた平和・安全保障促進のための能力強化に対するG8の取組を歓迎。

4.環境の持続可能性及びグリーンな回復

  • 2050年までに世界全体の排出量の少なくとも50%を削減し,排出量を可能な限り早期にピークアウトさせる必要があることを認識。この一部として,先進国全体で80%又はそれ以上2050年までに1990年又はそれ以降に比べて削減するとの目標を再確認し,国連気候変動枠組条約の交渉を支援。コペンハーゲン合意を支持し,COP16議長国のメキシコに協力。我々は,包括的,野心的,公平,実効的かつ拘束力のある,すべての主要経済国による温室効果ガス削減のための責任を含む,すべての国に関係する2012年後の合意を求める。
  • 生物多様性の価値を認識し,10月に生物多様性条約COP10を開催する日本への支持を表明。

5.貿易・投資

  • これまでの進展の上にWTOドーハ開発アジェンダを成功裏に妥結するとのコミットメントを新たにする。同アジェンダの立ち上げ以降の世界経済の変化を認識しつつ,我々は,ギブ・アンド・テイクの精神で,あらゆる交渉形態を用いて,交渉を促進するために必要なより高い野心のレベルを達成するという目標をもって,交渉に従事することを担当者に指示する。保護主義への対抗及び貿易・投資の自由化の促進を継続。

6.国際の平和及び安全

  • 核軍縮・不拡散
    • NPT運用検討会議の成果を歓迎。核兵器のない世界のための状況をつくることをコミットする。このため具体的な軍縮努力を行う。核セキュリティ・サミットにおいて行った約束を実施する。
    • 大量破壊兵器の拡散の脅威について引き続き取り組む重要性を認識し,「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップ」の2012年以降の選択肢を策定するため,これまでの結果を分析する。
  • イラン
    • 安保理決議1929は,イランの核問題に対する国際社会の懸念を反映しており,すべての国に対し完全な実施を求める。イランが約20%までの濃縮活動の継続を表明したことを深く懸念。イランは濃縮活動を停止し,核問題について対話を行うべき。
    • イランが人権を尊重するよう求める。
  • 北朝鮮
    • 韓国哨戒艦沈没事件について,合同調査団は北朝鮮に責任があると結論を出し,この文脈で攻撃を非難。事件の説明責任を追及する韓国を支持。北朝鮮が攻撃を行わないこと,韓国に対する敵対行為をとらないことを要請。
    • 北朝鮮の核・弾道ミサイル計画は国際の安全に対する脅威であり,その放棄を要請。拉致問題を含む北朝鮮の人道問題の改善のための措置をとることを要請。
  • アフガニスタン・パキスタン
    • 7月のカブール会議は,アフガニスタン政府が治安・腐敗対策,統治の改善に計画と進展を示す重要な機会。アフガニスタンへの治安権限移譲,アフガニスタン主導の和解・再統合プロセスを支持。
    • アフガニスタンとの国境地域におけるパキスタンによる過激派根絶の努力を歓迎。G8アフガニスタン・パキスタン国境繁栄イニシアティブの下での高速道路、鉄道接続事業の進展を評価。
  • 中東和平
    • パレスチナとイスラエルとの間接交渉の開始を歓迎,直接交渉のための状況をつくることを促す。5月31日のガザ沖の事件における暴力的な人命の損失は深く遺憾。イスラエルによる独立の調査委員会の設立の決定を歓迎。ガザの人々に人道・復興物資が届けられることを促す。一定の措置はとられたが,現在の措置は持続可能ではなく変更が必要。
  • ミャンマー:

    本年予定されている選挙が,自由,公平,完全に包含的かつ透明なものとなるよう要請。アウン・サン・スーチー女史を含む全ての政治犯の釈放を求める。

    キルギス:

    最近の民族的緊張を懸念。当事者は抑制を示すべき。

    スーダン:

    ダルフール紛争を解決,包括和平合意が完全に実施されるよう要請。

    ハイチ:

    自然災害後の支援のコミットメントを再確認。

  • テロリズムや国際組織犯罪等の安全保障上の脆弱性に対処するため,文民専門家の能力向上,海上安全保障,国際的な平和活動を強化する。G8外相に対し,アフリカ,南北アメリカ大陸及び他の国々のパートナーと連携して安全保障上の脆弱性について更なる取組を行うことを指示。
  • イエメン,ソマリア,サヘル地域におけるテロの拡大や中南米,西アフリカ及びアジア一帯における薬物問題の拡大を懸念。テロリスト及び犯罪者ネットワークを弱体化させる取組を進化させるための行動計画を採択。テロ対策に関する独立の声明を発出。

7.次回会合

  • 首脳は2011年にフランスで次回サミットをフランスが主催するとの申し出を歓迎した。

別添I:G8ムスコカ・イニシアティブ:妊産婦,新生児及び乳幼児の健康

  • 本イニシアティブは,長期持続的な成果のための原則に基づき,その範囲として,保健システムの強化に焦点を当てつつ継続的ケアを重視し,産前ケア,助産師による立会い出産等の要素を含む。また,定期的な世帯調査を含む保健情報システムの改善やイノベーションの重要性を認識。
  • 2010年から2015年の間,MDGs4及び5の目標を達成するため,G8は,国際社会の多数のパートナーと共に協力する。目標の達成には,先進国,新興国,途上国,財団,国際機関,非政府機関,民間セクター及び他の主体を含む,世界的努力が必要。
  • 進展を評価するための中核的指標をWHOが特定。コミットメントの実施の進ちょくは,2011年の説明責任報告書で保健と食料安全保障を通じて追求。

別添II:文民による安全保障システムの強化

  • 紛争・危機後に即応可能な,かつ訓練された文民専門家の慢性的な不足に対し,国際社会と協力し,途上国・新興国における文民専門家の能力向上に貢献する。
  • 海賊や密輸等の海上安全保障分野の問題に対処するため,沿岸国や地域機関への支援を継続する。
  • 国際的な平和活動における,国連の警察部隊(FPU)の質と量の不足に対応するため,訓練や装備面の支援にコミット。

独立文書:テロ対策

  • テロ行為を断固として非難し,テロの脅威を根絶するため協力する決意。交通保安,核及び放射能物質テロの防止,テロ資金対策,暴力過激主義対策等に取り組むとともに,法の支配,人権,民主主義,開発ニーズ等に対処する途上国への支援にコミット。
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