G7 / G8

G8キャンプデービッド・サミット(概要)

平成24年5月19日

1.議題・日程

 本年のG8サミットは,5月18日,19日に米議長の下,以下の日程でキャンプデービッドにて開催された。我が国からは野田総理が出席した。

5月18日(金曜日)
ワーキング・ディナー: 地域・政治情勢
5月19日(土曜日)
議題1: 世界経済
議題2: エネルギー・気候変動
ワーキング・ランチ: アフリカ・食料安全保障(注)
議題3: アフガニスタンの経済的移行
議題4: 中東及び北アフリカにおける移行
議題5: 総括セッション

(注)G8首脳に加え,ヤイ・ベナン(AU議長国)大統領,メレス・エチオピア首相,ミルズ・ガーナ大統領,キクウェテ・タンザニア大統領,カベルカ・アフリカ開銀総裁,その他民間関係者5名が出席。

2.概要

(1)総論

 議長国・米は,G8サミットの原点に立ち返ることを重視し,大統領の別荘であるキャンプデービッドでサミットを開催。政治・経済の幅広い問題について,首脳間で率直な意見交換が行われた。

(2)地域・政治情勢

  1. (ア)イラン:核問題に対する深刻な懸念を共有し,「対話と圧力」を通じた外交的解決が重要であることで一致。EU3+3とイランの次回協議における具体的進展への期待が各国から表明された。野田総理からは,東日本大震災後の困難な状況下でもイラン産原油の日本への輸入が削減されている旨紹介し,EU3+3やIAEA等によるあらゆる努力によって取組が進展することを期待する旨述べた。
  2. (イ)シリア:各国首脳から,人命の損失と人道危機の継続を深く憂慮する発言があり,暴力の即時停止や人道支援関係者によるアクセスの容認等を改めて求めることで一致した。また,アナン特使の「6項目提案」を含む調整努力を評価しつつ,政治的移行を含む同提案の様々な側面の進め方について活発な議論があった。
  3. (ウ)北朝鮮:野田総理から,4月のミサイル発射の際,G8が緊急外相声明を出し,強い内容の安保理議長声明発出への流れを作ったことを評価しつつ,国際社会として悪行に対価を与えず,更なる挑発行為を防ぐためにも国際社会が一致して北朝鮮に確固たる意志を伝える必要性を指摘した。また,拉致問題に関しG8各国の引き続きの支持を要請した。各国からは,野田総理に賛同する発言があった。
  4. (エ)ミャンマー:各国とも,民主化・国民和解に向けた実質的な進展を歓迎し,改革を後戻りさせないためにも国際社会として支援していくことが重要であるとの点で一致した。野田総理からは,テイン・セイン大統領とのこれまでの会談の中で,同大統領は改革に真剣であると確信を持ったこと,前進したところは前向きに評価しながら更なる進展に繋げていくアプローチをとるべきである旨発言した。

(3)世界経済

  1. (ア)再燃しつつある欧州債務危機への対処や,財政健全化と経済成長の両立の重要性について議論があった。欧州債務危機については,ギリシャがコミットメントを尊重しつつ,同国がユーロ圏に残ることへのG8の関心を確認した。
  2. (イ)野田総理からは,欧州債務危機に日本としても傍観者でいる訳にはいかず,IMF資金基盤強化等を通じて解決に貢献していることや,チェンマイ・イニシアティブ強化等を通じてアジアへの波及防止に努力していることを説明した。また,日本も含めて財政再建と成長を両立させる旨が重要であることや,社会保障と税の一体改革等の取組につき説明した。また,成長の原動力たる自由貿易の推進,経済連携推進の努力,保護主義抑止の重要性を主張した。
  3. (ウ)石油市場に関し,今後の石油市場の状況を注視し,来る数ヶ月間の需要増大などを見据え,国際エネルギー機関(IEA)に対して適切な行動をとるように要請する用意があるとの「世界の石油市場に関するG8首脳声明」を発出した。

(4)エネルギー・気候変動

  1. (ア)非在来型ガス,再生可能エネルギー等多様なエネルギー源を安全・効率的に活用し,各国がエネルギー安全保障の改善に向けて努力すべき点で一致。
  2. (イ)気候変動につき,本年末のCOP18に向けた国連の気候変動交渉プロセスの推進の重要性について確認すると共に,米が示した短期寿命気候汚染物質(ブラックカーボン,メタン)にG8が共同して取り組んでいくこととなった。

(5)アフリカ・食料安全保障

  1. (ア)アフリカの食料安保改善のために民間投資の活性化を目指す「ニュー・アライアンス」につき,アフリカ首脳及び民間関係者を交えて議論。アフリカ首脳や民間関係者からは,インフラ整備や技術革新の重要性等を指摘しつつ,農業生産拡大に向けた取り組みの成功例を紹介した。
  2. (イ)野田総理からは,TICAD IVの成果を踏まえつつ,来年のG8議長国である英とも協力しつつ,来年のTICADVを成功させる決意を表明した。

(6)アフガニスタンの経済的移行 

  1. (ア)2014年末の部隊撤収後のアフガニスタンにつき,G8直後のNATO首脳会合で治安面を議論するところ,G8では開発面について議論。
  2. (イ)野田総理から,7月に予定されている東京会合につき,オバマ大統領から求められ,冒頭に説明。アフガニスタンが開発面で1)2015年以降も持続可能であることを裏付けるための政策的な枠組を,国際社会とアフガニスタン政府との相互コミットメントとして示すこと,その下で2)持続可能なアフガニスタンの経済開発戦略を示し,それに対する国際的な援助調整を行うこと,3)同時にアフガニスタンのガバナンス改善をはかっていくこと,4)そのために2年毎のレビュー・メカニズムを設けること,5)また,地域経済協力の側面も取り上げること等を説明。G8として東京会合を政治的に後押しすることで一致した。

(7)中東・北アフリカの移行

  1. (ア)「アラブの春」から1年が経過し,地域の人々への改革の促進への願望に応えるためには,改革の継続が必要との認識で一致。G8として昨年立ち上げたドーヴィル・パートナーシップの下で,支援を継続していくことを確認。エジプトをはじめ,パートナー対象国の政治の現状につき,首脳間で議論。
  2. (イ)1)安定化,2)雇用創出,3)ガバナンス,4)貿易・地域統合の4分野での進展を歓迎し,特に,欧州復興開発銀行(EBRD)の対象地域を中東・北アフリカ地域に拡大するための協定改正推進に向けた動きを歓迎。

 以上を踏まえ,「G8キャンプデービッド首脳宣言」,「G8の行動に関するファクトシート」及び「世界の石油市場に関するG8首脳声明」が発出された。

3.次回G8サミット

 キャメロン英首相より,来年のサミットを主催することを楽しみにしている旨言及。


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