平成20年6月5日
フランスは2008年のOECD閣僚理事会の議長国を務める大いなる光栄に浴した。同閣僚理事会は、「アウトリーチ、改革及び気候変動の経済」というテーマに焦点を当てた。閣僚は、2007年閣僚理事会の歴史的な決定を受けて、OECDへの新規加盟候補国(チリ、エストニア、イスラエル、ロシア、スロベニア)及び関与強化対象国(ブラジル、インド、インドネシア、中華人民共和国、南アフリカ)の本年の閣僚理事会のすべてのセッションへの初めての参加を歓迎した。閣僚はまた、この文脈において、新規加盟及び関与強化に関する報告「主要な新興経済とOECDの間のより強力なパートナーシップに向けて」を歓迎した。また、OECDフォーラムにおける、経済産業諮問委員会(BIAC)、労働組合諮問委員会(TUAC)及び市民社会の代表者との協議も有意義なものとなった。
閣僚は、昨年世界経済を襲ったショックと、それへの対処法について議論した。全体の経済情勢は予想よりも良好であるとの見方で一致したが、今後予期される経済の好転を促すため、緊密な政策協調の継続を求めた。金融市場の状況は3月時点から改善しているが、現在の信用状況は投資を抑制している。商品価格は恐るべき勢いで上昇し、ヘッドライン・インフレ率をつり上げているが、短期的には、更なる上昇はない可能性もある。住宅市場については、多くのOECD諸国において冷え込みが続くと予想される。閣僚は、経済に対する逆風へのOECD諸国の抵抗力は、最近数年間に各国が遂行した構造改革と健全なマクロ経済政策のおかげであるとした。
閣僚は、近年の非OECD諸国における経済発展、特にその経済発展のOECD諸国への影響について議論した。新興市場経済の急速な成長は、商品価格高騰の一因であるとともに、OECD諸国の経済活動を支える歓迎すべき需要の源泉であると認識した。閣僚は、健全な新興経済を支えることが全体の利益となるとの認識で一致した。閣僚は、最近の食料及び商品の価格上昇、特に石油価格の上昇に留意し、こうした傾向の社会的、経済的影響を注意深く見守ることで一致した。
閣僚は、インフレ圧力と、インフレ期待上昇の兆候に懸念を示し、特にインフレ圧力が持続する国々において、財政収支の均衡と構造改革の推進に注意を払う必要があるとの見方で一致した。
閣僚は、「より良い世界経済のための有用性の追求」に関する報告に反映された事務総長の強力な指導力を祝福した。この報告は、OECDの重要な達成事項を強調し、最良の政策上の選択肢を提供する方法論の改善を示すとともに、中長期的視野で持続可能な成長にとっての主要な試練を検討している。閣僚は、OECDがその挑戦となる課題に取り組むことに対し強い支持を表明した。
閣僚は、最近数年間の閣僚理事会の委任事項の進捗を歓迎した。この中には、特に、拡大及び関与強化のアジェンダ、イノベーション戦略及び改革の政治経済のイニシアティブが含まれる。閣僚は、他の国際機関との間でより良く協調すべくOECDが行った努力を歓迎するとともに、事務総長がこの方向に向かって前進することを慫慂した。関与強化のパートナー及び新規加盟候補国は、OECDとの結びつきを強化する機会を得たことについて謝意を表明した。
閣僚は、質の高い政策助言、分野横断的な視野、相互学習といったアプローチに基づく、OECDの前向きな貢献を高く評価した。OECDは、これらのアプローチによって、新たな当事者との関与の幅を拡げ、グローバルで主要な試練に一致して取り組むという、独特な地位を築いている。閣僚は、OECDが引き続き、比較優位が存分に得られる問題に優先度を置き、焦点を絞っていくよう呼びかけた。
閣僚は、OECDが適応しかつ対応する必要がある新たな挑戦が引き続き浮上すると認識した。閣僚は、気候変動の経済、資源の逼迫、格差及び地球規模の貧困が、引き続きOECDにとって優先度の高い課題であり、追求すべきテーマであるとの点で一致した。閣僚は、OECDがグローバルなガバナンス構造におけるOECDの役割を熟慮することを歓迎し、OECDがこの領域における洞察を続けることを慫慂した。OECDは、グローバルな問題への取組みにおけるいくつかの隙間を埋めるための理想的なパートナーとみなされている。閣僚は、開発のための政策一貫性に関する宣言を採択し、エストニア及びスロベニアの閣僚もこの宣言に参加した。
閣僚は、気候変動が国際経済の直面する最も重大な問題の一つであると認識し、緊急の行動が必要である点につき一致した。閣僚は、各国の現状に即した包括的政策の組み合わせを考案する必要性について一致した。多くの閣僚が税や排出量取引、物品サービス、金融及び税による奨励、補助金の撤廃、融資保証、環境関連関税の撤廃といった市場的措置は気候変動への対応において鍵となるとの見方を示した。これらの仕組みは、ほかの手段、とりわけクリーン技術への投資、規制措置や基準、そしてセクター別アプローチによって補完されなければならない。
閣僚は、気候変動対策の緩和と適応における国際的協力の重要性を強調した。多くの閣僚が、気候変動に関する共通だが差異ある責任とそれに応じた能力の原則は、野心的かつ負担可能な国際的合意を達成するための基本的理念であることを強調した。何人かの閣僚は、対策費用を国際的に分担するための、そして気候変動対策への一層の国際的支持を得るための資金メカニズムや仕組みの必要性を強調した。対策費用を低く抑えるため、そのようなメカニズムにはすべての主要な温室効果ガス排出国及びセクターが参加する必要がある。2012年後の効果的な国際的フレームワーク及び関連する国内政策は、イノベーションを刺激しなくてはならないし、低炭素技術・実践、とりわけエネルギー効率、炭素固定・貯蔵技術、再生可能エネルギー及び原子力の開発普及に貢献しなければならない。途上国への技術普及はとりわけを加速されるべきである。
OECDは気候変動分野において、少なくとも20年間の実績を有し、気候変動に取り組むために経済分析を提供することによって、国際的な努力に対し重要な貢献をすることができる。閣僚はOECDにIEAや他の国際機関と協力し、気候変動の分野において適切な作業を続けることを求めた。閣僚は、将来の作業について様々な示唆を与えた。(1)様々な活動から生じる温室効果ガス排出を削減するための国内的および国際的な政策の選択肢を分析・比較すること。(2)気候変動が異なる地域とセクターにもたらす影響に対する理解をはじめ、主要排出国が国際的な行動に参加するインセンティブの分析。(3)代替的政策が競争力、カーボン・リーケージ、金融、技術開発・移転に対してもたらす影響の評価。(4)民間投資家に確信を与えると同時に柔軟性を確保する方法の検討。(5)気候変動の適応と緩和に関する経済的コスト、利益及び分配の側面の分析。多くの閣僚は、このようなOECDの分析は北海道洞爺湖サミット、2008年12月ポズナニでのCOP14、2009年コペンハーゲンでのCOP15への有意義なインプットになるであろうとの認識を示した。適応の主流化に関するDACステートメントが歓迎された。
議長は、最初に、自身の経験に照らし効果的と認める改革の戦略を説明し、その中で、改革の時間工程表と改革の一体的実施を強調した。メキシコ、スロベニア及びスウェーデンが、財政及び労働市場に係る改革の政治経済上の教訓を提供した。閣僚は、非公式な議論の中で、バランスのとれた改革パッケージが一般国民による受容を得て、特定の利益団体からの抵抗を克服する上でしばしば助けとなることを見出した。閣僚は、アドホック委員会のような助言のメカニズムが、野心的な改革計画を設計する上で有用であるとの点で一致した。閣僚は、改革の意義について理解を増進するために、市民に直接語りかける明確なメッセージを発出することの重要性に光を当てた。閣僚は、改革へのアプローチは、国ごとの事情に依存することを指摘した。多くの場合、政治的多数派を超えるような幅広い連盟を構築することが、改革実施の成功のために有用である。
閣僚は、改革の設計、実施及び政治経済的側面に対し、実証的な比較分析と相互審査という手法に基づきOECDが長年にわたり果たしている貢献に認められる価値を強調した。また、閣僚は、OECDが改革の政治経済に関する分析に引き続き取り組み、各国の国内改革プロセスを一層支援することを期待した。
閣僚は、今次OECD閣僚理事会により、多角的貿易交渉の現状及び将来の優先課題について率直な意見交換を行う時宜を得た機会が提供されたことを歓迎した。アルゼンチン、香港、中国、国際決済銀行(BIS)、欧州自由貿易地域(EFTA)、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)の代表が、この議論に参加した。
閣僚は、農業及び工業物品及びサービスの貿易に対しより開かれた市場の必要性を強調し、WTOドーハ・ラウンド交渉の迅速、野心的且つバランスのとれた妥結を呼びかけた。経済の不確実性や市場の混乱という昨今の文脈において、国際貿易は、世界経済の成長及び発展にとって重要な貢献ができるほか、長期的には貧困削減や気候変動等、地球規模の課題にも対応することができる。また、国際貿易は、世界的な供給と需要の均衡に向けた市場の潜在力を引き出すことにより、食糧価格の高騰により生じた問題を緩和することができる。
市場開放及び国際貿易が意味するものに対する理解を一層深め、かつ改善するとともに、さらなる貿易自由化のための強固な事例を構築する必要が存在する。この点に関し、閣僚は、OECDが、開かれた市場が世界の成長と安全と繁栄を向上させるに当たって重要な貢献をすることを積極的に人々に伝えることに取り組むよう呼びかけた。関税が引き続き引き下げられるにあたって、非関税措置についても、国際貿易に対する不必要な障壁を生み出すことなく、国内の目的が達成されるように扱われる必要がある。閣僚は、貿易分野におけるOECDの分析及び助言に期待するとともに、特に、サービス分野において各種の貿易制限措置を数量化する革新的なアプローチを編み出すべく現在進められている作業への期待を示した。
SWFは、新たな金融の世界における鍵となるプレイヤーとなった。閣僚は、SWFが投資の送出し国及び投資受入れ国の双方にもたらす利益を歓迎し、外国投資に対する保護主義的な障壁が成長を阻害するとの認識で一致した。閣僚は、G7財務大臣会合及び他のOECD加盟国から受けた委任事項に対するOECDの対応の迅速さを認識した。閣僚は、投資委員会によるSWFに関する報告と、投資受入れ国が、正当な国家安全保障上の利益を保護しつつ、SWFによる投資に対し開かれた投資環境を維持・拡大するためのガイダンスを賞賛した。閣僚は、SWFが自主的に取り組むべきベストプラクティスに関するIMFの作業を重要な貢献として支持し、OECDとIMFの協調の継続を歓迎した。閣僚は、各国の国内政策の進展の監視を含む、投資の自由に関するOECDの将来の作業に期待を示した。閣僚は、OECDのSWF及び受入れ国の政策に関する宣言を採択し、またこの宣言には、チリ、エストニア、スロベニアの閣僚も参加した。この宣言は、OECDによる国際基準設定能力を示す新たな一例となるものである。
OECDの関与強化対象国、新規加盟候補国及び加盟国の閣僚は、世界経済の成長と繁栄のための主要な挑戦に取り組む上で、OECDが果たし得る役割について議論した。関与強化対象国及び加盟国の閣僚は、関与強化の具体的なイニシアティブを発展させて、より焦点を絞った、包括的で一貫性のある対話及び協力を可能にすべく、協力して作業を継続する決意を確認した。閣僚は、事務総長に対し、戦略的利益に基づき選ばれた他の国及び地域とOECDの関係をいかに発展させるかについて理事会への勧告の準備を更に進めるように求めるとともに、前回の会合以来、東南アジア諸国のOECDの活動への関心が高まっていることに満足の意を表明した。
閣僚は、特に、食料価格のインフレーションや、代替燃料、気候変動及び各国経済における所得分配並びに成長への影響といった関連する広範な問題を含む喫緊の政策課題に焦点を当てた。閣僚は、食料価格に関するOECDの勧告及び分析並びにOECD-FAO農業アウトルックを歓迎した。最近の価格高騰の原因及び結果について議論が行われ、OECDが正しい中長期的政策の発展に貢献すべきであるという点については幅広い合意がみられた。そうした政策には、開発、農業、環境及び投資の側面が含まれなければならない。閣僚は、人口構成が、経済、経済的及び社会的成果並びに競争力に与える影響についてOECDが研究を進めるように慫慂した。閣僚は、世界の農業の供給を強化する観点から、特に比較的開発の進んでいない諸国において、投資及び生産性増大を進めるためにさらなる努力が必要であることを確認した。閣僚は、また、保護主義と補助金が与える潜在的な価格歪曲効果を強調した。閣僚は、農業分野における情報の改善、教育及び技能の発展の重要性を強調した。閣僚は、農産品市場における進展を監視し続けていくとともに、食料価格を引き上げる長期的な要素に対する健全な国際的政策のために更に作業が行われることを歓迎した。
閣僚は、拡大という文脈においてOECDが長期にわたり強力で持続可能な財政基盤を確保するため、OECDの大幅な財政改革に合意した。この改革は、OECDの影響力、重要性及び優秀さを今後も保持し、主要な非加盟国経済との関与をより幅広く深みのあるものとし、OECDが今後浮上する優先課題に立ち向かうことを可能とするであろう。この合意は、加盟国にとってのOECDの重要性と、加盟国がOECDから得ている利益の大きさを反映している。議長は、巧みに成果を達成したネプレ・ノルウェー大使の指導力に深甚なる謝意を表明するとともに、これに先立つスミット・デンマーク大使の努力及び事務局によるコミットメントと支援を賞賛した。