
OECD「閣僚理事会」
第44回OECD閣僚理事会(概要)
平成17年5月
1.総論
(1)5月3日(火曜日)午後から4日(水曜日)午後まで、経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会が開かれ、我が国からは、町村信孝外務大臣のほか、中川経済産業大臣、西川内閣府副大臣が出席しました。加盟30ヶ国、及び非加盟国15ヶ国、その他一部の国際機関よりハイレベルの参加があり(招請国・機関については注:参照)、今次閣僚理では我が国は副議長(議長:スウェーデン(パーション首相)、副議長国:日本、米国)を務めました。
注: 招請された非加盟国
- 経済及び改革を除く全てのセッション:BIG6(ブラジル、中国、インド、インドネシア、ロシア、南ア)
- 3日の非公式ワーキングディナー及び4日の貿易セッション:
貿易委オブザーバー国・地域(アルゼンチン、チリ、香港、シンガポール)及びベナン、エジプト、ケニア、ルワンダ、ザンビア
- IMF、世銀、WTOもオブザーバーとして招待。
(2) 今年で第44回を迎えるOECD閣僚理事会は、「グローバリゼーションの実現」のテーマの下、開発、OECD改革、貿易、マクロ経済、エネルギー、経済構造改革について議論され、特に、OECDの「開発」への取組と関連し、「ミレニアム開発目標及びモンテレイ合意のフォローアップに関するOECD声明」を発出しました(「声明の概要」参照)。町村大臣はこれらの議題のうち、開発、OECD改革、貿易の3つの議題に出席しました。
2.各議題の概要(各議題をクリックして下さい。)
(1)グローバリゼーションの経済見通しに与える影響(マクロ経済)
- グローバリゼーションをどのように考えるべきか、また、グローバリゼーションが各国の経済にどのような影響を与えるか等についての議論がなされた。
- 全体としては、グローバリゼーションは各国の成長や競争を促進し、貿易を拡大させ、更にインフレ抑制にも貢献することから、グローバリゼーションの流れは、総じて前向きに捉えるべきとの議論であった。
- さらに、グローバリゼーションはこれまで、製造業が議論の中心であったが、これからは、サービス分野も重要であることや、グローバリゼーションは貿易の保護主義を招くおそれがあり、これを防ぎ、うまく管理する必要があること、長期的にはメリットをもたらすグローバリゼーションも短期的には調整コストをもたらしうることなど、課題も指摘された。
- 日本からは、グローバリゼーションは先進国・途上国両方の利益にかなうものがあるという認識を共有し、今後の各セッションでの議論を進めるべきである旨発言した。また、日本経済について、今後は民需中心のゆるやかな回復が見込まれること、これまでの日本の改革は、バブル期の負の遺産を解消するための守りの回復であったが、今後は攻めの改革を積極的に推進していくことなどを表明した。
(2)エネルギー分野への投資:OECD・IEA合同閣僚会議
- IEA・OECDの合同セッションとして「エネルギーと投資」について、エネルギー価格を安定化させるための政策、エネルギー供給に関する投資の障壁、投資環境改善のために課せられた役割、途上国のエネルギーアクセス改善のための投資について議論された。
- 各国は、需給データの透明性確保、それに基づく時宜を得た投資促進、エネルギー効率の改善のための研究開発、再生可能エネルギー利用によるエネルギーアクセス改善の必要性について認識を共有した。
(3)グローバリゼーションと構造調整
- グローバル化が進展する中、グローバル化から利益を得るための政策、すなわち貿易・投資環境、イノベーション、労働市場、市場開放等について議論された。
- 安定と成長を推進するマクロ経済枠組、社会セーフティネット、効率的な規制枠組、開放的な貿易・投資政策、人的資源開発、能動的な労働市場政策、生涯学習、及びイノベーション政策は、構造調整にとって重要な要素であるとの意見が共有された。また、ベスト・プラクティス、政策対応、調整の課題にいかに対応するかに関して研究し、経験を共有する必要があるとの意見があった。
- 日本からは、議長国(スウェーデン)と共同で、OECDの新たなプロジェクトとして「グローバル化と構造調整」に関する研究の実施を提案したところ、多くの国より、有益な成果が期待できるとして支持が表明された。同提案は、理事会に対し実施に移すよう促されることとなった。
(4)ミレニアム開発目標・モンテレイ合意への貢献 (ワーキングディナー)
- ミレニアム開発目標の達成及びモンテレイ合意の実施に向けた取組について議論が行われた。
- ミレニアム開発目標の達成のためには、途上国、先進国ともに引き続き努力し、また協力する必要があることについて意見の一致が見られた。また、開発の促進には、貿易、投資、インフラ開発、教育等多面的な取組が重要であるとの認識が共有された。特に、ドーハ・ラウンドの成功を通じた活性化が開発に重要な貢献を行うとの認識が共有された。
- 日本からは、開発における「人間中心の開発」と「経済成長を通じた貧困削減」の重要性と、ミレニアム開発目標の達成の鍵を握るのはアフリカの開発である点を指摘するとともに、OECDとして、アフリカ諸国を対象とした投資環境整備努力への具体的な支援活動を行うことを提案し、支持を得た。
(関連資料)
(i)町村大臣スピーチ(和文仮訳・英文)
(ii)アフリカ投資イニシアティブの強化の提案
(5)OECD改革
- グローバル化の進展等、国際情勢が変化する中で、OECDが今後も重要な経済機関であり続けるためのOECDの取組やあり方について議論が行われた。
- 特に、非加盟国との協力強化(アウトリーチ)、及び、組織運営のあり方について議論が行われた。
- 非加盟国協力については、主要非加盟国との間で戦略的な関与を強化していくための「多様的関与戦略(Differentiated Engagement Strategy:DES)」を策定し、戦略的に非加盟国との協力を強化していくとの考えが共有された。
- 理事会の運営方法をはじめとする組織運営の改革に早急に取り組むべきとの認識が共有された。
- 日本からは、OECDの存在意義を高めるためには、(1)非加盟国との関与強化の重要性に加え、(2)OECDが原点に立ち返りマクロ経済分析を強化することや持続可能な開発の研究に注力すること等が大切であること、(3)変化する時代のニーズに迅速に対応するために委員会評価を踏まえた委員会の見直しの必要性につき指摘した。
(6)ドーハ・ラウンドの下での貿易交渉
- ほとんど全ての参加国から、WTOドーハ開発アジェンダの成功の重要性が強調され、そのためには、農業、非農産品市場アクセス(NAMA)、サービス等で、バランスのとれた成果を達成する必要性が指摘された。また、12月の香港閣僚会議で、2006年中の交渉の実質的妥結に向けた成果を出すためにも、7月の「たたき台」に向かって、切迫感をもって交渉を行っていくべきとの発言が多くの国からなされた。
- 多くの国から、現在農業交渉の焦点となっている非従価税の従価税換算方法(AVE)の問題を早急に解決し、実質的な議論に移ることの必要性が指摘された。
- さらに、途上国をはじめとする多くの国から、今次ラウンド交渉は「開発」が中心課題であり、途上国の開発に資する成果を出す重要性が強調された。また、世界貿易における南南貿易の拡大を踏まえて、主要途上国の市場開放等の努力の必要性も指摘された。
- 我が方からは、町村外務大臣と中川経済産業大臣が出席した。町村大臣からは、バランスのとれた成果を得ることの必要性、7月の「たたき台」に向けて、具体的な数字を入れて議論することの重要性を指摘した。また、同大臣から、ネガティブ・リンケージ(例:農業が進まないと、サービスが進まない等の主張)を避けるべきことを強調したところ、多くの国がこれに同調した。