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ザンビア国別評価

1.テーマ:国別評価

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2.調査対象国:ザンビア
3.評価チーム:
(1)評価主任:田中弥生
(大学評価・学位授与機構助教授)
(2)アドバイザー:島田周平
(京都大学大学院教授)
 アドバイザー:児玉谷史朗
(一橋大学大学院教授)
(3)コンサルタント:
坂野太一 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 
国際研究部 主任研究員
荒川 潤 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 
公共経営 公共政策部 主任研究員
左近靖博 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
公共経営 公共政策部 研究員
前村明佳子 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 
国際研究部 研究員
=現地調査団メンバー
4.調査実施期間:2006年8月~2007年3月

5.評価方針

(1)目的
 2002年10月に策定された「ザンビア国別援助計画」を中心とするわが国の対ザンビア援助政策を全般的に評価し、同援助計画の改訂と今後のより効果的・効率的な援助の実施にとって参考となる教訓・提言を得るとともに、当該評価の結果を公表することで、国民に対する説明責任を果たすことを目的として実施したものである。

(2)対象・時期
 「ザンビア国別評価計画」を中心とするわが国の対ザンビア援助政策全般を対象とし、同援助計画策定の2002年10月から2006年12月までに同援助計画に基づき実施されたすべての援助事業(技術協力、無償資金協力、開発調査等)を概観した。また、ザンビアにおいては貧困削減戦略ペーパー(PRSP)の策定(2002年)、ドナー共同支援戦略の策定(2007年署名見込)などを通じたドナー間の役割分担・権限委譲を含む援助協調が急速に展開しているところ、こうした援助協調の動きのレビューを試みた。

(3)方法
 「ODA評価ガイドライン第3版」(2006年5月)に準拠し、対ザンビア国別援助政策の、1)「目的の妥当性」、2)「結果の有効性」、3)「プロセスの適切性」について調査・分析した上で総合評価をとりまとめ、提言を行った。

6.評価結果:

(1)「目的の妥当性」に関する評価
 わが国の対ザンビア援助政策については、基本的には日本の上位政策・ザンビアの開発ニーズと十分な関連・整合性がある。但し、国別援助計画の「目的-手段」関係の明確化及び重点分野の絞り込みが必要である。また、ザンビア共同支援戦略(Joint Assistance Strategy for Zambia: JASZ)でわが国が担当しているセクターは基本的に国別援助計画と整合的である。

(2)「結果の有効性」に関する評価
 評価期間の日本の援助総額は減少している。分野別では農業セクターの援助額の減少額が大きい一方、保健セクターの援助額は増加している。経済開発セクターは2004-2005年に減少が見られるものの、年平均援助額は他ドナーと比較しても大きな貢献を維持している。保健セクターでは地域限定的ではあるがプロジェクトの連携等によりコレラ等の感染症対策に効果を上げており、経済開発セクターもわが国のインフラ案件の知名度が高く、効果を上げている。また人材育成(教育・地方分権)セクターでは、「地方分権」のリード・ドナーとして現地での評価が高い。

(3)「プロセスの適切性」に関する評価
 国別援助計画策定はザンビア側の多様な意向を踏まえて作成されている。ザンビア政府側との政策協議は毎年実施されている。また、現地ODAタスクフォースの中で重点項目別のワーキンググループ(WG)が組織されている。援助協調への対応もなされている。各WGの専門能力向上、及び、わが国の重点項目の絞り込み及び現地体制の強化が今後の課題である。

7.提言

(1) より明確な援助戦略の策定
1)外交的な配慮も見据え、より戦略性が求められる援助計画
・ 援助協調が進み、かたや中国援助の台頭が目立つ中、日本には外交上の効果も踏まえた援助戦略の策定が必要になっている。
・ そのためには援助効果に加え、外交上の考えをより一層明らかにし内部で共有するとともに、外部に対しても可能な範囲で説明していく必要がある。
・ また、現在は重点5分野が設定されているが、その選定理由と背景をより明確にし、優先分野の中でも、さらにメリハリをつけ、効果的に資金と人材を投入する必要がある。
2) 日本の援助戦略の認知
・ 援助戦略(国別援助計画)策定がある程度整った時点で、ドナー・コミュニティの中で議論し、日本の援助戦略に対する理解を促す工夫が重要である。
3) 広報の工夫
・ 援助戦略文書はHPに掲載し、ペーパー(英文)で用意するなど、広報的な努力がより一層望まれる。
(2) 日本の援助の伝統的な強みとモダリティ議論
1) 日本の援助の伝統的な強みを生かす
・ ザンビア政府とドナー間で協議されているMOUの中でも財政支援は援助協調を実現する上での重要な手段として扱われている。しかしザンビア政府の能力、オーナーシップなどを総合的に調査した上で、財政支援を実施しないと判断することは可能である。
・ また、日本の援助の評判の高さは、明らかに、当該プロジェクトの形成の仕方、それを裏付ける援助の姿勢や方針に裏打ちされたものである。このような日本の援助の伝統ともいえる「良さ」「強さ」は今後も大切に生かすべきであると考える。
2) モダリティの多様性を確保すべく理論武装するための調査研究
・ モダリティの多様性は、ドナー会合において日本側が主張しているところである。今後、モダリティの多様性の効果、あるいは効果的なモダリティの組み合わせについて具体的かつ論理的に説明してゆくことが求められる。このような理論武装のためには、「モダリティの多様性と有効な組み合わせ」に関する調査研究を提案したい。
(3) 援助協調への取り組み
1) 公共支出管理分野
・ ザンビアでは財政支援が進められようとしているが、参加ドナーの複数からザンビア政府の実施能力について懐疑的な意見が聞かれた。日本は、むしろ、公共支出管理能力の現状調査やアセスメント、その結果に基づく、キャパシティビルディングやシステム設計の部分で、技術協力や助言を行うことを提案したい。
2) 上流の政策への目配り
・ ザンビアにおいては、他ドナーは政策の上流の部分に、日本は現場の部分にアプローチする傾向がある。しかし他国のドナー協議の例にみられるように、ザンビアにおけるドナー協議においても、政策や制度面に議論が集中することも予想される。したがって、日本の援助は現場の強みを生かしながらも、政策や制度について注意深い目配りが必要であるし、また場合によっては、制度改革については、現場情報を根拠に訴えていく必要もあるだろう。
・ 特にリード・ドナーとなった分野においては、制度設計の技量や法律案を解釈する能力をもとに、全体の意見をまとめてゆく力量が求められる。
3) 援助協調を見据えたプロジェクト形成
・ プロジェクト形成において、援助協調という新たな援助潮流と日本の伝統的アプローチを共存させるような視点をより積極的に取り入れることを提案したい。
(4) 実施体制
1) リードCP(Co-operating Partner)に参入する際の人材投入
・ リードCP、アクティブCPとしての参加に伴い、人員の配置、投入量を見定めてゆく必要がある。特にリードCPとして参加した場合には、担当者に相当の力量・技術と作業量が求められている。より長期間取り組むことのできる人員配置体制か、もしくは代替要員の配置の仕方を工夫する必要がある。
2) 現地ODAタスクフォースの更なる強化
・ 援助協調が進む中で、日本の援助戦略、スタンスをより明確にし、必要であれば理論武装しながら、それらをタスクフォースで共有し、これまで以上に連携、役割分担を行っていく必要がある。外交上の効果も配慮した援助戦略が望まれる中、ハイレベルの人物の考えを含めタスクフォースの考えを整理し共有することはより一層重要になってきていると思われる。
3) 現地機能強化の浸透
・ 援助協調や外部環境の早い変化に対応するためには、現地機能の強化にかかる対処方針に基づいた現地のマンデートを認識し、現地ODAタスクフォース主導でスピーディーに対応することがより一層求められている。
4) ザンビア政府、ドナー・コミュニティとの「日常対話」の重視
・ 専門家派遣などを通してザンビア政府とのコミュニケーションは良く進められており、それが日本の援助に対する高い評判にもつながっている。しかし援助協調がすすむ中で、日本の立場を明確にしつつ、ザンビア政府、ドナー・コミュニティの理解を得られる努力がより一層必要になっている。ドナー会合などの公式協議に加え、特に専門家派遣をしていない分野においては、日常的なコミュニケーションの機会を工夫する必要があるのではないか。

)ここに記載されている内容は評価実施者の見解であり、政府の立場や見解を反映するものではありません。

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