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ザンビア国別評価

1.対象国名:ザンビア
 面積:743.4千km2(日本の約2倍)、人口:9,443千人、
 名目GNP:3,536百万米ドル、
 1人当たりGNP:320米ドル(99年統計)

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2.ザンビアへの援助実績:
 1993年から1999年までの日本の対ザンビアODA援助累計額は、無償資金協力・技術協力を合わせて409.9百万ドルであり、日本は、1999年には約56百万ドルの援助をザンビアに供与している。日本の対ザンビア援助対象は、農業、水資源開発、教育、医療、公衆衛生、基礎インフラ、建設等広範な分野をカバーしている。

 (1995-1998年ではドナー国の援助の約14%で英国の約18%に次いで第2位であり、日本はザンビアにとり最も大きな援助国の一つとなっている。)

3.評価調査団:
 半澤和夫 日本大学生物資源科学部助教授(団長)
 若井 晋 東京大学医学部教授
 浜野 隆 武蔵野女子大学現代社会学部専任講師
 松本 茂 関西大学経済学部講師(元国際開発センター研究員)
4.現地調査実施期間:2000年1月6~21日
5.評価の目的:
 日本のザンビアへの援助が、ザンビアの社会・経済開発及び国民の生活レベルの向上にどのような効果を上げているのかを調査・分析し、今後のザンビアに対する援助政策策定の際に活用するもの。
6.評価結果:
(1)全般的評価
 (イ) マクロ経済レベルでのわが国の対ザンビア援助の定量的評価を行うことは容易ではないが、農業、保健、教育、基礎インフラ等の分野においてははっきりとした効果を上げていると言えよう。
 (ロ) カルンバ大蔵経済開発大臣は、わが国のバランスのとれた援助はザンビア国民の人造りに大きく貢献したとの見解を示しており、日本の対ザンビア援助は広くザンビア政府・ザンビア国民から高く評価されている。
 (ハ) 日本の援助は有効に活用されており、ザンビアの社会・経済開発及び貧困削減に貢献し、ザンビア国民の生活向上に貢献したと言える。
(2)分野別結果:評価分野毎の具体的な効果としては、次の通りである。
 (イ) 農業分野:日本の援助は、農村道路整備、穀物倉庫の拡充等を通じ、食糧増産、地方部における所得及び雇用機会の増加に対して非常に効果的であった。また、農村道路の建設及び維持管理は、農業振興及び地方開発のために必須条件である。
 (ロ) 保健分野:日本の援助は、保健分野における人的資源開発・財源増の必要性を認識させると共に、保健分野の専門家の育成に貢献したと言える。
 (ハ) 教育分野:日本の援助は、教育分野では、初等・中等教育段階での学校建設が主となっており、メヘバ、ルコナ、ジュンベ、ジンバ地区で教育施設を建設したことにより、就学者数の大幅な増加が達成されると共に、当該地区での高等学校への進学率の上昇をもたらした。
 (ニ) 基礎インフラ分野:日本の援助は、水資源開発及び道路網整備等を通じ、ザンビアの経済開発及び社会インフラ開発に貢献した。近年では、日本はベーシック・ヒューマン・ニーズ(人間の基本的ニーズ)の充足を目指した社会インフラ開発を重点とし、ザンビア国民の社会インフラの効果的な利用を容易とすることにより、国民の生活水準の向上に貢献している。

7.提言(今後のフォローアップ、改善すべき点等):
 今後の日本の対ザンビア経済協力は、以下につき配慮する必要がある。
(1) 貧困削減:貧困削減に資するためには、特に地方農村開発への支援が引き続き必要である。また、これまでの援助経験及び将来予想されるインパクトを考慮すると、農業、教育、保健医療等が日本の重点分野の援助では、現在ザンビアで策定中の貧困削減戦略ペーパーの内容も注視していく必要がある。
(2) 農村開発及び農業開発:農村開発及び農業開発を達成する上で、小規模農家の生産性向上への援助、農業開発計画の策定支援、農業生産性の向上・農業技術の定着への支援及び肥料、農業用資機材等の農業投入財を導入のための小規模金融機能を強化するための支援が重要である。
(3) HIV/エイズ等感染症対策:特にHIV/エイズ問題はザンビア国の開発にとって、健康上の問題のみならず社会経済的な問題として捉えなければならない。この観点から、HIV/エイズ対策へは優先的に援助を実施しなければならない。また、HIV/エイズ等感染症対策以外としてはプライマリー・ヘルス・ケアに対する支援を拡充することが望ましい。
(4) ベーシック・ヒューマン・ニーズとしての社会インフラ開発:国民が最低限の生活水準を維持するため、また、貧困削減のためにも、保健所、診療所、病院、学校及び農村道路等の必要不可欠な社会インフラが一層拡充されることが期待される。
(5) 教育:基礎教育の量的拡充と共に質的向上を一層推進しなければならない。そのためには、教師教育を通じて教員の資質を向上させて行くことが非常に効果的であろう。
(6) キャパシティー・ビルディング(能力開発)及び技術移転の必要性:日本の今までの援助経験から、アフリカ地域での援助を成功させるためには、キャパシティー・ビルディング(組織能力開発・強化)が必要である。長期的には、キャパシティー・ビルディング及び技術的ノウハウの移転はザンビアにとって大きな効果を上げる。
(7) ドナー間の調整の必要性:援助の効果を一層高めるためにも、他のドナーとの協力関係をより促進していかなければならない。このドナー間の協力関係の結果、日本と他のドナーとの共同プロジェクトが生産的な成果を上げている。この成功例として、国境地域HIV/エイズ予防日本―米国共同プロジェクト等がある。
 また、日本は、「オーナーシップ」及び「パートナーシップ」を基本理念としたセクター・プログラム(SP)アプローチを支持しているが、その議論に積極的に引き続き関与していくことが望ましい。
(8) NGOとの連携促進:NGOとの連携は効果的な開発援助を実施する上で重要である。一般的に、ザンビアでのNGOの活動は保健衛生、人的資源開発及び環境保護等の分野であり、これらはザンビアの社会経済開発上も重要となる分野である。
(9) オーナーシップ:より効果的な開発援助の実施のためにはザンビア国民が開発案件に対する当事者意識を持つことが極めて重要であろう。
8.外務省の一言:
(1) 全般的評価として、我が国の対ザンビア援助が幅広い分野で効果をあげ、ザンビア側からも評価を受けているという調査報告は喜ばしい。今後も一層ザンビア政府・ザンビア国民に歓迎される協力への一層の努力を行っていきたい。
(2) HIV/エイズは、評価調査団が指摘しているとおり、医療問題を超え、国家の存亡をもかけた社会・経済問題に発展しており、国家規模の対策が緊急に取られる必要がある。我が国としても、国家エイズ対策委員会への支援、日米コモンアジェンダの下、HIVハイリスクグループに対する予防啓蒙活動を既に実施しており、来年3月には「HIV/エイズ及び結核対策プロジェクト」(プロ技)を開始する予定である。こうした実績を踏まえながら協力の幅を拡充したい。
(3) なお、この評価結果については、11月16日に大使館主催で評価セミナーを開催し、評価調査団(半澤団長他)よりザンビア側政府関係者や援助関係者等(約130名が参加)に対して説明を行い、意見交換を行うことで、共通認識の向上に努めた。


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