1.テーマ: 途上国の女性支援(WID)イニシアティブ |
2.国名:ホンジュラス・グアテマラ |
3.評価者:
和田 泰志:アイ・シー・ネット株式会社 シニアコンサルタント
岡 智子:アイ・シー・ネット株式会社 アシスタントコンサルタント
学識経験者(アドバイザー)
橋本 ヒロ子:十文字学園女子大学 社会情報学部教授
細野 昭雄:現職:在エルサルバドル国 日本大使
(本調査開始時は神戸大学 経済経営研究所 教授) |
4.調査実施期間:2002年10月 -2003年2月 |
5.評価の方針:
(目的)
1995年第4回世界女性会議(北京会議)においてわが国が発表した「途上国の女性支援(WID)イニシアティブ」をWID/ジェンダー政策とみなして評価を行い、これまでのWIDイニシアティブに係る取り組みについて、成果と課題を抽出し、今後のWID/ジェンダー政策のよりよい企画立案と実施に向けた提言を示す。
(対象)
「WIDイニシアティブ」を評価対象とし、WIDイニシアティブの重点3分野である「教育」、「健康」、「経済・社会活動への参加」について、グアテマラ及びホンジュラスをケーススタディ国として評価する。
(評価手法)
WIDイニシアティブが策定された当時の考え方である「WID(開発における女性)」という考え方に基づく枠組みと、現在主流となっている「ジェンダー主流化」という考え方に基づく枠組みの2つの評価の枠組みに基づき、政策の基本的理念、政策のプロセス、政策の成果の3つの観点から評価を行った。
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6.評価結果:
(1) |
WID的視点による評価
(イ) |
政策の基本的理念の妥当性
WIDイニシアティブは、ODA大綱およびODA中期政策との整合性は確保されており、妥当であると評価できる。また、北京会議の場で、開発における女性の参加及び受益に配慮し、WID分野の支援の拡充に努めることを表明したことは妥当であった。 |
(ロ) |
政策の策定過程の妥当性
WID/ジェンダー分野の有識者や実施機関(JICA、JBIC)の知見を生かす過程は保存されている資料では必ずしも確認できなかった。仮になかった場合は、そのようなプロセスを確保すれば、より効果的であったと思われる。 |
(ハ) |
政策の実施過程の妥当性
・ |
調査対象国においてWID/ジェンダー分野の案件形成に努めていることから、調査対象国における実施過程の妥当性は高いが、担当官のWID/ジェンダー分野に対する認識を高めるための組織的なバックアップ体制があれば、より妥当性が高くなったと思われる。 |
・ |
グアテマラにおいては、1995年当時の国家政策にも、WID/ジェンダー分野に取り組む必要性が明記されており、当該分野への支援は妥当であった。ホンジュラスにはジェンダー格差があり、NGOを中心に市民レベルで関心が高まっていたことから、支援は妥当であった。 |
・ |
大使館と実施機関現地事務所が現地でより一層連携することにより、日本側の主体的な取り組みが可能となり、さらに妥当性が高まったと思われる。 |
・ |
WID/ジェンダー分野の支援推進のための社会・文化的要素への配慮については、両調査対象国ともに、担当官レベルおよび実施機関で当該国のジェンダーに関する情報収集に努めており、それらの情報は案件形成や実施手法の検討に活用されていることから、妥当性は高い。 |
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(ニ) |
政策の実施過程の連携度
・ |
グアテマラ及びホンジュラスともに、援助スキームが効率的に組み合わされており、連携度は高い。ただし、これらの援助スキームへの組み合わせとWIDイニシアティブで設定された目標との関連は不明確であった。案件形成時からWIDイニシアティブで設定された目標との関連を明確にし、援助スキームを組み合わせれば、連携度はより高まったと思われる。 |
・ |
個別案件レベルでは他ドナーとの協調が行われている。政策レベルでわが国の取り組みに関する情報を発信し、他ドナーとの情報交換も緊密に行いながら個別案件レベルでの協調の方途を探ることで、政策レベルからプロジェクトレベルまでより包括的なWID/ジェンダー分野の取り組みにおける協調が促進され、WIDイニシアティブで掲げられた目標の効率的な達成にも貢献すると思われる。 |
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(ホ) |
政策の成果の有効性及びインパクト
・ |
教育分野:グアテマラの小学校の種々の指標は改善傾向にあり、この進捗が継続すれば、2010年には男女格差は解消されると考えられる。グアテマラの女子教育プロジェクトは、WIDイニシアティブが掲げる目標達成のための手段を講じて取り組んでおり、その結果や経験がJICAやカウンターパートにもフィードバックされていることから、評価できる。 |
・ |
健康分野:必要とされる手段をほぼ網羅する形でプロジェクトは実施されており、達成度は高く、継続中の案件については引き続きその着実な実施が必要である。活動の経験や結果がカウンターパート機関に蓄積され、現在も活用されていることから、インパクトも高いと判断できる。 |
・ |
経済・社会活動への参加分野:評価対象案件はまだ始まったばかりで評価できる段階にない。 |
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(2) |
ジェンダー主流化の視点による評価
(イ) |
政策の基本的理念の妥当性
WIDはジェンダー平等を達成するために必要で補完的な手段であるとの認識が、現在の国際的なジェンダー主流化への取り組みにおけるWIDの位置付けであることから、WIDイニシアティブは今でも有効なイニシアティブである。ただし、日本のWID/ジェンダーの取り組みがWIDイニシアティブの重点3分野に限定して理解されることなく、ジェンダー平等の実現への取り組みの一つとして理解されなければならない。
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(ロ) |
政策のプロセスの有効性
ジェンダー問題は全ての分野・課題に横断的なものであり、取り組みにあたっては相手国政府や他ドナーとの連絡・調整・協調が重要となってくるため、今後、ジェンダー平等を促進する上で、積極的な政策協議や他ドナーとの協議が課題である。 |
(ハ) |
政策の成果のインパクト
女性問題関連の法律・制度の整備支援を通じてナショナル・マシーナリーの組織能力向上を図り、女性の経済・社会活動への参加の促進が可能となるよう、実施にまで配慮することが重要である。
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7.提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点等)
(1) |
WID的視点による評価から導き出された提言
提言1: |
今後、WIDイニシアティブを見直す際や他の重点課題政策を策定する過程で、有識者と実施機関の知見を活用する。 |
提言2: |
実施機関との連携を強化し、WID/ジェンダー案件とWIDイニシアティブとの関連を明確化し実施するために、WID担当官制度の一層の活用・発展を図ることを検討する。具体的には、WID担当官の機能の明確化、WID/ジェンダー研修の実施、WID/ジェンダーの取り組みに関する勉強会の実施、WID/ジェンダー広域担当官の拠点大使館への配置等について検討する。 |
提言3: |
他ドナーとの意見交換を積極的に行うことが望ましい。 |
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(2) |
ジェンダー主流化の視点による評価から導き出された提言
提言1: |
WIDアプローチからジェンダー主流化に発展している国際的状況を反映して、ジェンダー主流化の視点を強化したWIDイニシアティブに改訂し、名称もたとえば、GAD(Gender
and Development)イニシアティブとすることが望ましい。 |
提言2: |
被援助国政府の関係機関との連携を図り、ジェンダーに配慮した優良案件を発掘、実施する。 |
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