1.テーマ:国別評価 |
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2.調査対象国:ベトナム |
(1)評価主任:
大野 泉* (政策研究大学院大学 教授)
(2)アドバイザー:
島村 真澄*(政策研究大学院大学 助教授)
三浦 有史*(日本総合研究所 主任研究員)
(3)コンサルタント:
寺田 幸弘* (財)国際開発センター 主任研究員
三井 久明 (財)国際開発センター 主任研究員
尾形 恵美* (財)国際開発センター 研究員
等々力 博明*(財)国際開発センター 研究員
*=現地調査団メンバー |
4.調査実施期間:2006年7月29日~2007年3月31日 |
5.評価方針
(1)目的
本評価調査は、ベトナムに対する日本の援助政策の目的、効果、及び策定・実施プロセスを検証し、援助政策の見直し及び今後のより効果的・効率的な援助の実施の参考となるための教訓・提言を得ること、さらに評価結果を公表することで説明責任を果たすことを目的とした。
ベトナムに対する日本の基本的な援助政策は「対ベトナム国別援助計画(以下「援助計画」と略称)」である。現行の「援助計画」は2004年4月に策定されたが、ベトナムでは2006年6月の国会で社会経済開発5ヵ年計画(2006~2010年)が承認され、中期開発ビジョンが明らかになった。トップドナーであるわが国としても、ベトナムの開発課題の変化への対応、及びベトナム政府のオーナーシップ重視と援助協調といった観点から、現時点で現行の「援助計画」の改定作業に取り組む必要性がある。
(2)対象・時期
評価の対象・時期は「平成16年4月に策定された対ベトナム国別援助計画策定以降のわが国の対ベトナム援助政策」であった。
(3)方法
外務省評価ガイドライン(ODA評価ガイドライン 第三版、2006年5月)に基づき、主に「目的の妥当性」、「結果の有効性」、「プロセスの適切性」の観点から総合的に検証した。
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6.評価結果:
日本は、ベトナムに対して2004年4月に「援助計画」を策定し現在まで援助を実施して来ている。本評価調査は、同「援助計画」の下で2004年4月以降に実施された援助事業を対象に、外務省「ODA評価ガイドライン(第3版)」に基づき、「目的の妥当性」、「結果の有効性」、「プロセスの適切性」の3視点に基づき実施した。
(1) |
目的の妥当性
現行の国別援助計画と新ODA大綱、新ODA中期政策、及びベトナムの第7次・第8次社会経済開発五ヵ年計画との間には、重点分野・重点事項はもちろん、援助実施プロセスについても共通する部分が多く、おおむね整合していることが確認された。また、「選択と集中」の観点から重点的に取り組むとされた分野では、おおむね集中的なインプットがなされてきたことも確認された。 |
(2) |
結果の有効性
ベトナムの数々の社会、経済指標を見ると、順調な経済成長を背景に貧困削減に大きな成果をおさめており、定量的、定性的にみてトップドナーであるわが国の支援が大きく貢献していることが伺われる。また、援助協調を通じて多国間(マルチ)と二国間(バイ)の両者のチャネルを通じて支援に取り組んできたことも、わが国の援助の有効性を高めることにつながったと考えられる。 |
(3) |
プロセスの適切性
プロセスの適切性は、政策の目的の妥当性や結果の有効性を確保するようなプロセスが取られていたかどうかを検証する基準である。「ベトナム政府との中期的なビジョンの共有」、「一貫性のある援助政策の立案と実施」、「成長促進に向けた補完的・重層的な支援」、「手段としての援助協調の活用」の四つに取り組んだことでプロセスの適切性は確保され、更に、それらは(1)と(2)の達成に貢献した。 |
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7.提言
(1) |
WTO加盟に伴い新たな社会・経済的課題が発生してくることが予想され、これに対応する支援を今後は重視していく必要がある。多様化する開発課題に対応した支援アプローチを採用し、幅広い関係者の知見を活用していくことが望まれる。 |
(2) |
「選択と集中」に関し、重点分野/課題を三段階方式でメリハリをつけたことは意欲的な試みであり、継続する意義はある。同時に、今後、予想される開発課題・ニーズの急速な変化に鑑みて、これを固定的な扱いにせず、ある程度は柔軟性を持たせるための仕組みづくりが必要である(中間レビューの実施など)。 |
(3) |
ベトナムの現地ODAタスクフォースの役割は極めて重要であり、セクターの課題分析能力の強化を含め、同タスクフォースの機能を更に強化していく必要がある。ベトナムでの取り組みを持続的にし、他国にも広げるためには、セクター援助戦略マトリックスを活用する人材の配置(現地)や育成を含め、本省・本部からの支援が必要である。 |
(4) |
日越間で援助の基本方針・方向性についてはビジョンが共有されたが、今後は5年後の到達目標といった開発ビジョンについても共有していくことが求められる。今後の国別援助計画では成果指標を設定することが望まれる。 |
(5) |
ベトナムでは援助協調を手段として活用し、効率的な援助の実施、国際援助コミュニティーへの知的発信を含め、様々な意義と効果があった。本省・本部の課題として、同国での取り組みを活かして、援助協調を支える知的集積や国際的ネットワーク構築のあり方を検討する必要がある。 |
(6) |
マルチとバイのチャネルを通じ、政策支援と個別案件、援助協調を組み合わせた補完的かつ重層的な支援は極めて有効であり、ベトナムに限らず、他国においても様々な分野での展開が期待される。 |
(7) |
ベトナムで試行的に導入された「援助規模の検討メカニズム」は意欲的なアプローチだが、五項目の検討過程の客観性など改善すべき点もある。本省・本部は運用上の課題や他の重点国への適用可能性という観点も含めてベトナムの経験をレビューし、現在、関心が高まっている国別の援助予算配分のあり方を検討する参考にしていくことが望ましい。 |
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注)ここに記載されている内容は評価実施者の見解であり、政府の立場や見解を反映するものではありません。