1. テーマ: トルコ国別評価 |
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2. 調査対象国:トルコ共和国 現地調査国: トルコ共和国 |
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3. 評価チーム: (1)評価主任:望月克哉 (アジア経済研究所新領域研究センター 専任調査役) (2)アドバイザー:内藤正典 (一橋大学大学院社会学研究科 教授) (3)コンサルタント: グローバルリンクマネージメント株式会社 |
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4. 調査実施期間:2008年6月~2009年3月 | |
5. 評価方針 (1)目的
(2)対象・時期 トルコは日本の「国別援助計画」の策定対象国でないため、1998年の経済協力政策協議で確認された4重点分野等を中心に援助を実施している。そのため、本評価では、同協議が実施された1998年から2007年までの期間に開始、継続あるいは終了した有償資金協力、無償資金協力、技術協力等、全ての援助事業を対象とした。なお、経済協力政策協議が2008年7月に10年ぶりに開催されたため、同協議については、本件評価の対象とした。 (3)方法 「ODA評価ガイドライン」第4版(2008年4月)及びその後のODA有識者会議における議論に基づき、「政策の妥当性」、「結果の有効性」、「プロセスの適切性」の3つの視点から総合的に検証し、評価を行った。具体的には、検討会を開催しつつ、評価の実施計画の策定、国内文献・インタビュー調査及び現地調査、最終報告書の作成を行った。 |
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6. 評価結果 (1)「政策の妥当性」に関する評価 「政策の妥当性」については、日本の対トルコ援助政策について、日本のODA政策、トルコの国家開発計画、トルコ側の現時点でのニーズ、国際的な優先課題、他援助機関の援助政策の5つの側面から評価を行い、いずれの側面においてもおおむね妥当性は高いとの結果が得られた。しかし、日本の対トルコ援助政策の重点分野のうち、「南南協力」についてはトルコ自身による周辺国への支援が拡大していること、「格差是正」についてはトルコが独自の大規模事業を展開していることから、新たな協力の在り方を検討する必要がある。さらに、トルコ側関係機関からの支援の要望が高い科学技術分野での協力についても今後検討が必要である。 (2)「結果の有効性」に関する評価 「結果の有効性」については、日本の対トルコ援助の5つの重点分野別の有効性を中心に検証を行い、それぞれ成果を上げていることが確認された。各プロジェクトの主な成功要因としては、トルコ側の政策及び産業界のニーズとの合致、長期・継続的な支援による過去の技術協力の成果や知見・経験の活用、トルコ側の高いオーナーシップ、日本の比較優位性の高い分野への支援(特に地震・防災分野、先端技術移転)、スキーム間の連携による相乗効果などが挙げられる。また、本評価では、過去10年間におけるトルコの急速な経済社会開発等に果たした日本の援助の貢献について分野横断的な検証を試みた。その結果、イスタンブールにおける都市交通環境の改善及び経済社会開発に対する成果やインパクトの発現見込みや、研修事業を通じたトルコの人材育成に対する日本の貢献などの点が確認された。 (3)「プロセスの適切性」に関する評価 「プロセスの適切性」については、日本の対トルコ援助政策の策定・実施プロセス共に、おおむね適切であった。特に、実施プロセスにおいては、日本側によるスキーム間の連携による相乗効果の発現や、両国間の良好なコミュニケーションが特筆できる。一方、トルコ側政府関係機関及び他の援助機関関係者の間においても、日本の支援については十分に周知されていない点や、援助実施手続きにおける一層の改善・円滑化、草の根・人間の安全保障無償資金協力及び文化無償資金協力に関するさらなる効果測定のためのモニタリング・評価体制の改善、ジェンダー主流化の視点に立った援助の推進など、いくつかの課題が存在している。 |
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7. 提言 (1)重点分野における「選択と集中」 日本の対トルコ援助重点分野については引き続き支援を行いつつも、今後は地域や援助スキーム及び重点分野内の「選択と集中」の強化を行い、効率的・効果的な成果の発現を図ることが必要である。具体的には、日本の比較優位性の高い分野(環境エネルギー分野、工業・先端技術分野での人材育成、地震対策)への協力や、草の根・人間の安全保障無償資金協力によるトルコ東部・南東部への支援などが考えられる。 (2)中東地域の安定と発展に資するための南南協力の推進 対トルコ援助政策の重点分野の一つである南南協力は、高い評価を得ている。開発協力という一面だけでなく、外交政策ないし地域協力の観点からも、今後は中東地域の安定と発展のための「第三国への共同支援」等を重視した協力関係の構築が必要である。 (3)これまでの協力成果の有効活用と維持 トルコは、近い将来、援助卒業国となる可能性が高いため、卒業までの期間に、これまでの協力成果の有効活用という視点を踏まえた支援が必要である。具体的には、帰国研修員の積極的な活用のほか、有償資金協力による協力成果の有効活用や維持のためにも、技術協力による施設の運用改善のための連携支援やフォローアップが有効である。 (4)限られた援助スキームの特性をいかした協力 近年の大幅な経済成長に伴い、トルコにおいては活用できる援助スキームが限定的となることから、援助スキームの特性を最大限にいかしつつ、スキーム間の連携を図ることによって、協力効果の向上を目指すことが必要である。 (5) 新しい援助スキームの活用 トルコ側からのニーズの高い、先端技術分野における大学との学術交流の推進に関しては、先端技術・科学技術分野に関する新しいスキームである「地球規模課題対応国際科学技術協力事業」の活用などが検討できる。具体的なテーマとしては、対トルコ援助の重点分野である環境分野や防災分野などに関する研究課題などが考えられる。 (6)「トルコにおける日本年」の好機をいかした交流事業の推進と広報の強化 2010年に開催される「トルコにおける日本年」を契機として、良好な二国間関係を一層強化するため、ハイレベル対象のODAセミナーの開催、若年層を対象としたメディアを通じた対日広報の実施や、両国間の若手人材の学術交流の実施などが有益である。 (7)援助政策の策定・実施プロセスの改善 日本側の援助政策の策定・実施プロセスに関しては、現地ODAタスクフォース主導による政策協議の実施、JICAトルコ事務所の人員体制の整備、援助実施手続きにおける一層の改善・円滑化、より成果の達成状況が測定できるようなモニタリング・評価体制の構築、ジェンダー主流化の視点に立った援助の推進などが必要である。 |
注)ここに記載されている内容は評価実施者の見解であり、政府の立場や見解を反映するものではありません。