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チュニジア国別評価

1.テーマ:チュニジア国別評価

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2.調査対象国:チュニジア
3.評価チーム:
(1)評価主任
 今里 義和(東京新聞前論説委員)
(2)アドバイザー:
 墓田 桂
 (成蹊大学文学部国際文化学科専任講師)
(3)コンサルタント:
 株式会社三菱総合研究所
4.調査実施期間:2007年6月~2008年3月

5.評価方針

(1)目的

 本評価は、2002年に策定された対チュニジア国別援助計画を中心とする日本の対チュニジア援助政策を全般的に評価し、今後の日本の対チュニジア援助の政策立案及び援助の効果的・効率的な実施に資するための教訓や提言を得ることを目的として行われた。また、評価結果を公表することで国民への説明責任を果たすとともに、同国政府関係者や他ドナーに評価結果をフィードバックすることで、今後の同国の開発の参考とし、かつ日本のODAの広報に役立てることを目指している。

(2)対象・時期

 本評価では、原則として、2002年の対チュニジア国別援助計画策定以降の日本の対チュニジア援助政策を対象として、主として「政策の妥当性」、「結果の有効性」、及び「プロセスの適切性」の観点から総合的に検証を行った。
 第一に、政策を評価する際に対象となる日本の対チュニジア援助に関する基本政策は、2002年に策定された対チュニジア国別援助計画とした。
 第二に、結果については、現行の対チュニジア国別援助計画が策定された2002年10月以降を基本的な対象期間としつつも、援助効果の発現には少なくとも数年の期間が必要であることから、2002年10月以前に開始された援助活動についても、一定年数をさかのぼって評価対象に含めることとした。
 第三に、プロセスについては、政策と同様、原則として2002年10月以降に行われた援助活動を対象として、評価を行うこととした。

(3)方法

 本評価を行うにあたり、まず、評価の視点、評価項目、評価指標を示す評価の枠組みを作成した。その上で、国内文献調査、国内インタビュー、チュニジア現地調査を行い、最終報告書を作成した。

6.評価結果

(1)「政策の妥当性」に関する評価

 「政策の妥当性」に関する評価においては、日本の対チュニジア援助政策の妥当性について、被援助国の政策・ニーズ、上位政策、他ドナー・国際社会の援助政策の3側面から評価を行い、いずれの側面においてもおおむねその妥当性が確認された。
 まず、日本策定の対チュニジア国別援助計画における重点分野と、チュニジアの第10次開発計画は整合的であり、かつ、他ドナーの援助計画とも整合的であった。さらに、日本の新旧ODA大綱の基本方針ともに、対チュニジア援助計画と整合的であった。また、日本の外交政策の基盤である「平成19年度日本の重点外交政策」及び、対チュニジア国別援助計画においても、対アフリカ外交に対する積極的な姿勢が窺われ、両者の整合性が認められた。
 しかし一方で、民主化の促進や基本的人権状況への取り組みに改善の余地があることや、日本の対チュニジア援助政策のガイダンスとなるべきマグレブ地域に対する日本の外交方針が必ずしも明確ではないといった点が確認された。

(2)「結果の有効性」に関する評価

 「結果の有効性」に関する評価においては、産業レベルアップ、水資源開発・管理、環境という重点分野を中心とする日本の援助が着実に効果をあげていることが確認された。
 産業レベルアップ支援については、チュニジア政府主導の「レベルアップ・プログラム」を側面支援すべく、円借款による直接的支援とインフラ整備による間接的支援、JICA単独の技術協力、更にはJICA・JBICの連携による総合的な協力が行われていることが評価される。
 水資源開発・管理への支援については、技術協力とアンタイドで積極的に供与されている円借款に対し、チュニジア側から高い評価を得ている。ただし、地方部における下水道普及率の引き上げと都市部における老朽化した下水網の更新が今後の課題である。
 環境への支援については、環境の改善につながるプロジェクトへの積極的な支援とともに、負の環境インパクトをできる限り軽減する日本の援助方法が評価されている。
 さらに、三角協力については、取り組みの初期段階であるものの一定の成果を上げている。両国政府の積極的な姿勢を示す枠組み文書やチュニジア政府側の積極的評価と日本に対する期待、更にはUNFPAによる肯定的評価が、これを裏付けている。
 一方でこのような日本援助の成果について、チュニジア国内において必ずしも周知されていないことも課題として確認された。

(3)「プロセスの適切性」に関する評価

 「プロセスの適切性」に関する評価においては、日本の援助政策の策定・遂行・フォローアップに至る一連の過程でおおむね適切な手続きが踏まれていることが確認された。対チュニジア国別援助計画の策定プロセスや日本政府とJICAやJBICによる定期的な現地ODAタスクフォースの開催などが好例である。
 しかし一方で、日本の対チュニジア国別援助計画の内容が十分に共有されていないことが確認されたり、個別の援助実施手続きの迅速性や権限委譲について問題点の指摘や要望がよせられたりするなど、今後改善すべき点があることも確認された。

7.提言

(1)中東、アフリカ等周辺地域との外交関係強化のための対チュニジアODAの位置付けの明確化と活用

 ODAが重要な外交ツールの1つであることを踏まえれば、日本外交における対マグレブ外交の位置付けを明確にした上で、マグレブ地域内におけるチュニジアの位置付け、さらには対チュニジア外交政策上のODA政策の位置付けを明確にすることが望ましい。また、近い将来中進国入りする可能性の高いチュニジアに対して今後供与すべきODAの対象分野、内容についても総合的に検討する必要がある。

(2)チュニジアの強みを生かした三角協力の戦略化と実施

 チュニジアを日本と中東、アフリカ地域との関係強化のための重要拠点として位置付けた場合、三角協力はそのための有効な手段となる。同国を重要な地域援助推進のパートナーと位置付け、援助国に成長することを促すための協力を行うことが期待される。

(3)格差是正、民主主義・人権状況改善等の課題解決に向けたODAの活用と工夫

 チュニジアに残る地域間や所得層間の経済格差の是正のために貧困層・社会的弱者層に直接裨益(ひえき)する草の根・人間の安全保障無償資金協力が今後とも活用されるべきである。また、チュニジアにおいて高い経済水準、政情の安定状況がみられる一方、民主化の遅れ等も指摘されている。チュニジア政府との対話を重視した上で、他ドナーとも協調しつつ民主主義・人権状況の改善を促すような工夫を援助の中に取り入れていく必要がある。

(4)チュニジア国内における日本ODA広報の強化

 日本の対チュニジア援助の貢献・成果がチュニジア国民に周知され、チュニジア国民の親日感情の高まりにつながるよう、しっかりとした広報が行われる必要がある。例えば、電子メール・ニューズレターといった手段を通じた情報発信強化に努める一方で、親日的なジャーナリストに対して一層積極的に記事を書いてもらうように依頼することも一案である。

(5)援助プロセスの改善と相互理解促進による日本-チュニジア間の連携強化

 今次評価で指摘された日本の援助プロセスの問題点については、変更できるところは変更し、変更できないところは相互理解を促す努力をすることで、両国間の連携強化を図っていくことが望ましい。例えば、情報共有面では、対チュニジア国別援助計画の英語版を作成して頒布することがチュニジア政府や他ドナーとの相互理解に大きく資するであろう。

(6)シニア海外ボランティアの有効活用のための制度改善

 チュニジアでは従来シニア海外ボランティアの派遣数が多く、現地での援助活動に貢献してきているが、ボランティア事業の位置付け、現地側と志願者側理解との相違等に起因する問題も発生している。このような問題を回避するために、シニア海外ボランティアの位置付けの明確化と運用の改善が望まれる。

)ここに記載されている内容は評価実施者の見解であり、政府の立場や見解を反映するものではありません。

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