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タイ・「東北タイ大規模苗畑センター」及び「東北タイ造林普及計画」
(国連食糧農業機関(FAO)との合同評価)

1.評価対象プロジェクト名:
「東北タイ大規模苗畑センター」、「東北タイ造林普及計画」

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2.国名:タイ
3.援助形態:
(1) 「東北タイ大規模苗畑センター」(無償資金協力、91~92年度、29億8千万円)
(2) 「東北タイ造林普及計画」(技術協力、92~98年度、研修員受入れ22人、長期・短期の専門家派遣44人)
4.評価者:
小林英治 富士大学教授(現在下関市立大学教授)
加藤正勝 FAO企画・予算・評価部評価課長
ダルモ・スパルモ FAOアジア太平洋事務所森林官
5.現地調査実施期間:2000年2月19日~28日
6.プロジェクトの分野:環境、社会配慮、林業
7.プロジェクトの目的:
 東北タイでは森林の伐採が急速に進み、環境および住民の生活に悪影響が出てきた。このような状態を改善するために、政府は1988年より東北タイ緑化計画を策定するなどの 取組みを実施してきた。こうした流れを受けて、本件は植林を通じて当地域の環境の保全および貧困軽減を含む住民の生活向上を目的として実施された。
8.評価結果:
 (1) 予定された4カ所の大規模苗畑センターが建設され、造林のための苗木の生産および配布に役立った。センターで生産された各種苗木のうち、合計8,940万本が燃料に使う木が不足している2,410村に配布された(達成率約9割)。
 (2) タイからの研修員受入れおよび専門家派遣が予定通り実行され、苗畑造成・植林・訓練技術などの移転が行われた。住民たちの訓練を行うために143のコースが準備され、約6千人(うち女性1、380人)が受講した。造林普及活動のために展示林が造成され、各種パンフレット類が作成・配布された。
 造林普及活動により、東北タイ全体の約1割の村、特に燃料に当てる木が不足している村の41%が恩恵を受けた。経済的・社会的効果を判断するには時期尚早であるが、住民の造林活動の活発化や植林からの収入などに造林普及活動を通じた効果が出始めている。
  
9.提言(今後のフォローアップ、改善すべき点等):
 (1) 今後住民参加によるコミュニティ・フォレストリー(村落林業)を通じて緑化活動を進めることが重要であり、住民の動機付け、訓練、造林普及活動などに一層取り組まねばならない。
 (2) 特に造林普及活動は本計画中の弱点であり、タイ政府は造林普及活動を重点的に展開するために、予算・人員の措置をとる必要がある。
 (3) 配布後の苗木のモニタリングを十分に行うことが必要である。
 (4) 現地実施機関であるタイ王立森林局は造林活動を効果的に進めるために、他の政府機関やNGO等との連携を強化する必要がある。
 (5) 苗木配布を一部有料化することで回収された費用を活用し、苗木の質およびサービスの向上させるとともに、センターの自立的発展を促すことが重要である。
10.外務省からの一言:
 本プロジェクトは、無償資金協力・プロジェクト方式技術協力・青年海外協力隊・NGO等が、それぞれの得意分野で有機的に連携し、数量で評価可能な実績を残した優良プロジェクトのひとつと評価している。植林の推進において国際パルプやキャッサバ市況の影響を受けたことや、植林樹種(ユーカリと郷土樹種)の問題があったものの、東北タイ地方において、4つのセンターの地域を中心に確実に効果が現れ始めている。

なお、この評価報告は評価者が第3者である個人の責任において作成したもので 、外務省の意見ではありません。

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