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タンザニア・バガモヨ灌漑農業普及計画

1.評価対象プロジェクト名:
 バガモヨ灌漑農業普及計画

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2.国名:タンザニア
3. 援助形態:
95~98年/個別専門家派遣/専門家 派遣16名
4.評価者:高橋基樹 神戸大学大学院助教授
5.現地調査実施期間:2000年9月20~23日
6. プロジェクトの分野:農業(灌漑農業普及)
7.プロジェクトの目的:
 コースト州ルブ川流域の未開発地域において、灌漑稲作技術を導入・普及させ、同地域の小規模自営農家の所得向上のために寄与、貢献する。実験圃場8haに加えて、農民が入植するための灌漑水田100haを造成する。
8.評価結果:
(1) 灌漑稲作技術の導入によって生産性が顕著に増加した。非灌漑の従来農法による稲作の場合1.5t/haだったものが、5.5t/haへと約4倍近く上昇した(2期作)。灌漑稲作技術が灌漑地区の外へも普及したため、周辺地域の収穫量が1.5t/haから2.5t/haに向上した。同地域の農家の年間収入(約500米ドル)は、世界最貧国のひとつであるタンザニアの平均国民所得の数倍に上る。雇用の創出、住居の改善、就学状況の向上などにも好影響があった由。
(2) タンザニア側にとっても吸収しやすい小規模、住民参加型のプロジェクトである。タンザニア側の予算の不足、洪水、実験圃場の狭さ等が原因で、灌漑水田の造成は40ha、入植農家は訓練希望農家の300家族に対して128家族に留まった。
(3) 灌漑稲作導入の問題点は、高いコストであり、その合計が収益の約6割に及ぶ。ディーゼル・ポンプで水を汲み上げる揚水式であることがコストをより大きくしている。
9.提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点等):
(1) 対象地域の灌漑の必要性は大きく、訓練の為の入植を希望する農民の数も多い。現地政府機関の評価も高く、更なる援助を実施することを希望している。条件さえ整えば貧困削減、食糧増産にインパクトの大きい援助を行い得ると考えられるので、更なる援助を真剣に検討すべき。
(2) 今後は、タンザニア側の援助受け入れ体制の整備、特に予算や人材確保を強く促し、現在進行中のタンザニア政府の行財政改革を注視する必要がある。また、農民組織が十分に機能せず、灌漑の運営がうまく行かない場合も他に多いため、農民水利組合の発展支援を検討すべき。
(3) 対象の造成地以外への水田の拡大を図るためには、タンザニア自体の普及訓練、灌漑地造成能力の飛躍的向上が必要である。また、コスト削減の観点からポンプで水を汲み上げる揚水式に代えて灌漑水路を用いた自然流下式を採用することが望ましい。
10.外務省からの一言:
 このプロジェクトの成果を踏まえ、タンザニアに対する地方開発(農民のための小規模灌漑)についての開発調査を実施し、更なる協力の可能性を検討する予定である。


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