1.テーマ: 「スリランカの道路・橋梁整備に対する日本のODA」に関する評価 |
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2.国名:スリランカ | |
3.評価者他: (1)スリランカ政府道路開発公社
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4.調査実施期間:2007年1月~2007年3月 | |
5.評価方針 (1)目的 スリランカに於ける道路・橋梁整備事業に関し、日本のODAによる支援を受けて実施された案件の効果、効率性等を評価し、将来の同事業の計画策定、実施の改善に資することを目的とした提言を行う。 (2)対象 本件評価の対象は、日本のODAによる支援を受けて実施された以下6つの道路・橋梁整備事業とする: (イ)ベースライン道路事業 - フェーズ I and II、 (3)調査方法 評価調査対象の6事業を「妥当性」、「効率性」、「効果とインパクト」の3つの視点により評価する。「妥当性」、「効率性」に関しては、道路・橋梁事業の管轄当局、特に道路開発公社から得た情報を基に、「効果とインパクト」に関しては、評価チームが実施した経済・社会開発上のインパクトに関する調査の結果を基に評価する。 |
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6.評価結果 (1)事業の「妥当性」 評価調査対象の6事業は全て、スリランカ政府内で道路・橋梁整備に関する最も優先度の高い事業としての扱いを受けていた。また、「ベースライン道路事業」に関しては、交通需要予測の見直しを踏まえ一部片側2車線道路から全線片側3車線道路へと更に拡幅するなど、柔軟に対応することによってニーズに的確に対応したことも評価できる。他の5事業に関しても、評価調査を通じて、道路・橋梁整備に関するスリランカ政府の優先課題、地元住民のニーズをよく反映したものであることが確認できた。 (2)事業の策定・実施過程の「効率性」 10年以上前に実施した事業については、事業実施過程の「効率性」の評価の為に必要な情報が、スリランカ政府関係当局からは十分には得られず、「効率性」の評価について情報のギャップがある。事業の計画策定過程の「効率性」に関しては、特段大きな問題はないと言える。全ての6事業は、設計等技術的な要請事項に関し適切な手法を採用し、また、最新技術の導入と高品質の投入を行っていた。他方、実施段階での「費用」と「時間」の効率性については課題があった。評価調査対象の6事業のいくつかでは最終的な費用が見積もりより大きくなったが(現地通貨建て。円貨換算では概ね予算内)、その最大要因は、スリランカ側で道路・橋梁整備に伴う用地取得に時間を要したため、インフレの影響等を受けたことによる。 (3)事業の「効果とインパクト」 評価対象事業の交通量は、概ね想定した需要に沿って交通量が増加していることが確認できたほか、代替ルートの混雑緩和等の効果も発現している。また、評価チームが実施した経済・社会開発上のインパクトに関する調査結果等により、評価対象の6事業全てに関し、対象地域の住民が事業の効果・インパクトについて肯定的な評価をしていることが明らかになった。対象6事業が直接的にもたらした便益の内主要なものに、「輸送状況の改善」がある。対象6事業地域の全てに於いて、「交通渋滞」、「輸送時間」、「輸送コスト」の問題が緩和していることが明らかになった。また、輸送設備の改善は、不動産価値の上昇、事業収入の拡大等の経済的効果をもたらしている。更に、対象6事業の全てが、「公共交通」と「保健・教育施設へのアクセス」改善に貢献していることが確認された。 しかし、環境に対する効果については様々であり、検証が難しい。交通渋滞は緩和されているが、他方、輸送インフラの改善に伴い通行車両の数自体が増加しているので、騒音や大気汚染に関する状況はあまり改善していない。但し、事業が実施されなかった場合は、環境は更に悪化していたことが想定される。 対象事業の維持管理状況に関する情報は多く入手することは出来なかった。これは、事業ごとの維持管理費用が予算化されていないというスリランカ政府側の事情に起因する。維持管理費用は、道路開発公社の経常費用の予算から需要に応じて配分するというシステムになっている。対象6事業の輸送インフラは最近完成したばかりなので、維持管理費用を多く要しないことから予算割り当て上の優先順位は低くなっている。 |
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7.提言 スリランカ政府に対する提言は、以下のとおりである。 (1)事業の査定や設計段階で、歩行者用の地下道に対する住民のニーズの把握に努めるべきであった。今後、特に歩行者の通行量が多く予想される交差点を設計する際には、計画段階から、歩行者用の地下道の導入の可能性も含め、中長期的視点に立った計画策定が望ましい。 (2)事業実施前には橋梁の老朽化が深刻になり交通規制を行う必要があった。このような事態に至る前に、老朽化した橋梁を特定する為の診断を行い、計画的な修復や架け替えを実施すべきである。このことは、特に、道路網中の要路に位置する橋梁(ビクトリア橋等)に当てはまる。 (3) 今回の評価では、1980年代・90年代の古い事業の計画内容や実施の記録が十分得られないものもあった。事業の事後評価を適切に実施し、有効な提言やフィードバックを行えるようにするためには、フィージビリティー・スタディー、設計、事業終了時の報告書は必須である。その為には、スリランカ側の事業実施機関においてこれらの報告書が適切に保管されている必要がある。 (4)また、主要な道路・橋梁の開発事業を実施する際には、将来の事後評価の実施を円滑にするため、交通量、道路の状況、交通事故の発生状況等に関するデータを系統的な方法により収集し管理することが望ましい。 |
注)上記は、評価者が作成した英文の評価報告書を元に要約して大使館にて日本語訳したものですが、記載されている内容は、評価実施者の見解であり、日本政府の立場や見解を反映するものではありません。