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セネガルの水分野における日本のODA評価
(被援助国政府・機関による評価)

1.テーマ:セネガルの水分野における日本のODA評価
2.調査対象国:セネガル
  現地調査国:セネガル

評価実施者:EMAP(現地コンサルティング会社)
アマコドゥ・ンジャイ氏(Mr. Amacodou NDIAYE)
ママドゥ・ンジャイ氏(Mr. Mamadou NDIAYE)

4.評価実施期間:2005年8月15日~2006年3月31日

5.評価方針

(1)目的
 本評価の目的は,1)日本国民及び被援助国国民へ日本のODAの説明責任を確保し,2)効率的なマネジメント及び有効なODAを支援するため,日本政府及び被援助国政府にフィードバックを提供し,3)被援助国の評価能力向上を促進しつつ,日本のODA政策の被援助国政策への整合性を高めるため本評価より教訓を得ることである。

(2)対象・時期
 本評価では,過去10年間(2000年~2010年)に日本のODAにより支援された下記のプロジェクトを評価の対象とする。

A) 地方村落給水計画(12次)

B) 地方村落給水計画(13次)

C) 安全な水とコミュニティ支援活動フェーズ1(PEPTAC1)

D) 安全な水とコミュニティ支援活動フェーズ2(PEPTAC2)

E) 水の防衛隊(W-SAT)

(3)方法
 本評価プロセスは,被援助国政府・機関による評価ガイドラインに沿って実施された。概要説明及び情報収集会合を日本国大使館にて実施し,文書分析及び評価枠組みを設定した。中央政府レベルでの主要アクターと会合及び意見交換を行い情報収集し,現地調査を行った。最後に,得た情報を整理・分析し,報告書を作成した。本評価の評価項目は,「目的の妥当性」,「結果の有効性」,「プロセスの適切性」である。

6.評価結果

(1)「目的の妥当性」に関する評価
 日本のODAは,アフリカ開発会議(TICAD),対セネガル国別援助計画,水セクター改革及び水分野でのMDGs達成のための水と衛生のミレニアムプログラム(PEPAM)の枠組みで形成されている戦略に一致している。日本の支援は様々な地域で展開され,対象地域は全ての地方村落である。日本は給水施設の施設整備を支援し,また維持管理センター関係者への研修を中心として支援しており,特に同センターのサービス及びメンテナンス強化を目的として実施されている。日本のODAは,貧困地域(タンバクンダ州,マタム州,ケドゥグ州)にも影響を与え,利用者水管理組合(ASUFOR)の経済開発活動を通じて貧困削減に貢献する開発機会を提供している。

(2)「結果の有効性」に関する評価
 地方村落給水計画(12次及び13次)は,対象村落や周辺の住民,或いは家畜等への安全な飲料水のアクセスを形成し,また,村落全体における雇用と収入源の創出にも役立っている。更に,こうしたインパクトに加えて,PEPTAC1及び2は,水の従量制導入,受益者の施設管理への関与,給水施設維持管理センター及びオペレーターの能力向上,現金管理の向上,野菜栽培や家畜飼育導入,或いは安全な水管理の実践の普及といった様々な効果をあげている。W-SATは,啓発活動を通して衛生分野に貢献していることが確認された。
 総合的なインパクトとして,本件評価対象プロジェクトは,セネガルの水分野におけるMDGs達成のためのセネガル政府自身の尽力,富の創出を通した貧困削減,男女平等の促進,機材整備による同センターの能力強化,研修を受けた管理者の能力強化にも寄与している。

(3)「プロセスの適切性」に関する評価
 プロジェクト策定・実施のプロセスについては,インフラ整備のプロジェクトに関しては適切であると評価される一方,技術協力プロジェクトについては,外部環境の変化にも対応し,適切にプロジェクトを管理していくことが必要である。技術協力プロジェクトが将来的に十分な成果を得ていくためにも,より長いスパンでこれを実施していくことが期待される。

7.提言

(1)日本側への提言
 ”PEPAM JAPAN”として2つの柱(都市部・地方部)での展開により,日本の支援の可視性の向上に貢献すると考える。第1の柱(地方部)は,南部における地理的集中を基盤としたインフラ整備及び設備メンテナンスの実施。これらは地方で実施され,地方給水支援を重点的に行う。第2の柱(都市部)は,都市部におけるパイロット事業型の都市排水整備支援で,2都市(ダカール州及びカオラック州)での展開を検討する。都市衛生に関しては,セネガル下水道公社(ONAS)と都市衛生局の2つの主要アクターが存在する。

A) 政策レベルでは,PEPAMとの更なる統合及びセネガル政府との政策対話への更なる参加が必要である。これにより,日本が今後支援を集中させる地域及び日本が支援を実施している分野での問題解決に繋がると考えられる。例えば,機材の使用条件を設定せずに維持管理センターへの機材や重機の供与を実施した場合,機材の私的利用を誘発し,機材サービスの恩恵を受けるASUFORの弱体化に繋がる可能性もある。したがって水分野における政策対話促進は問題解決への糸口となるものと考えられる。

B) 組織レベルでは,プロジェクト管理ユニットの設立を通じて,セネガル側の更なる関与並びに日本の国会及び国民への説明責任を果たすことを軸に,パリ宣言原則(オーナーシップ及びアラインメント)の更なる適用が求められる。

C) 維持管理局(DEM)に関しては,PEPTACの枠組みで開始されたコミュニティ開発活動を継続し,今後増加が見込まれる浅井戸の維持管理に関し,受益者及び民間企業を巻き込んだ形でサービスの持続性を維持することができるよう,給水設備管理の使命を果たす上で必要な組織強化が必要である。

D) 都市衛生局に関しては,政府がドナーに提出する要請書の準備を行う上で,ONASとの密な連携を図ることが望ましい。これにより,現在ルクセンブルグとのパートナーシップによりティエス州,ルーガ州,サンルイ州にある「低コスト飲料水・衛生センター」(CREPA)で実施されている民間企業によるメンテナンスのように,施設メンテナンスに係る現地民間企業の参画が促進されると考える。

E) 「水分野のプロジェクト資金の20%を衛生分野に割り当てる」ことを推奨するセクター政策に合致するよう,地方衛生と地方給水協力事業の更なる統合が求められる。

F) 支援対象地域に関しては,ケドゥグ州,タンバクンダ州及びマタム州で実施された村落給水開発調査で提案されたプロジェクトの実施を通じて,引き続き同地域に支援を集中させることが有効と思われる。同地域は,他のドナーとの二国間援助では十分にカバーされておらず,その意味でも日本のODAは有効であろう。

G) プロジェクト実施期間については,開発プロジェクトにより達成された成果が維持され,より持続的に運営されるために,4~5年間程度が妥当と思われる。

H) パートナーシップの点では,民間企業及び市民社会(NGO含む)とともに実施していく形が望ましい。PEPAMにおいては,2年間の衛生ネットワーク構築の下請け業者促進プロジェクトを終了した欧州連合(EU),及びダカールでの衛生分野の支援を予定している世界銀行との協議が有効であろう。

(2)セネガル側への提言

A) 地方での井戸の改善,国家的状況,進行中の調査及び既存の選択肢を考慮した管理モデルの検討が必要である。

B) 運営予算の増加,ASUFOR支援のための組織化と維持管理専門家の雇用による給水施設維持管理センターの資金及び人的資源の強化が求められる。

C) 都市衛生では,ONASと新設の都市衛生局の権限の整合性を図る必要がある。

D) 衛生への公的資源の投入を増加させる必要がある。

注) 上記は,評価実施者の評価報告書を基に在セネガル日本国大使館にて要約し,和訳したものです。記載内容は評価者実施者の見解であり,日本政府の立場や見解を反映したものではありません。


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