7.提言
(1)「対セネガル国別援助政策」のあり方に関する提言
目的および目標の明確化
援助の一貫性、透明性、予測可能性、効果を高めるために上位目的を明示するとともに、5年間程度を目処にした具体性のある中期目標を設定する必要がある。中期目標は、セネガル自身の開発目標に沿って、可能な限り数値目標を含めて提示することが望ましい。
「選択と集中」の徹底
セネガルでは準メジャードナーの日本が成果・インパクトの高い援助を行なっていくには、思い切った絞り込みが欠かせない。選択と集中にあたっては、セネガルの開発ニーズを中心としながら、これまでの日本の実績や比較優位性、他ドナーとの協調などを勘案して決めるのが適切と言える。以下に、分野を基準に絞り込んだ場合と、課題を基準に絞り込んだ場合の「試論」を以下に示す。
分野を基準とした場合: 開発ニーズが高いと思われる分野は、農業や民間セクター支援で、日本が実績、比較優位をもつと思われる分野は、水供給や水産、人的資源開発分野である。
開発課題を基準とした場合: PRSPなどから「持続可能な経済成長」、「貧困削減と格差是正」、「キャパシティ・ビルディング(能力強化)」が開発課題と思われる。「持続可能な経済成長」は、農漁業の振興、民間セクター支援や経済インフラ整備、職業訓練、環境保護により、「貧困削減と格差是正」は、基本的社会サービスの提供(教育、保健衛生、生活用水)やジェンダー主流化、NGOとの連携により、そして、「キャパシティ・ビルディング(能力強化)」は、行政官や地域住民を対象とした人材育成などによって達成されうる。
現在主流となっている課題別アプローチを取る場合には、以下のように内容を絞り込む必要がある。貧困削減と格差是正には、持続可能な経済成長(零細農業意・零細漁業の振興、中小企業支援、農村インフラ整備など)に絞り込む、基礎教育・ノンフォーマル教育、農村部の保健医療に絞り込む、人材育成を地方・草の根レベルに絞り込む、などである。
取組み姿勢の明記
開発課題への取り組みには、「留意する」といった曖昧な表現ではなく、取り組みの方針・姿勢を明確にすることが望まれる。また、条件や環境が変化し当初の方針・姿勢を修正する場合には、理由を明確にして修正する。
援助形態の検討
有償資金協力(円借款)への慎重な対応: セネガルは重債務貧困国(HIPCs)のひとつなので、有償資金協力の実施にあたっては、債務の持続性などを慎重に検討して対応する必要がある。日本として債務負担能力があると判断する場合には、その判断の根拠を示す必要がある。
財政支援の試み: 当面はプロジェクト型支援を基本としつつも、財政支援に試行的に取り組んでいくことが望ましい。セネガル政府のオーナーシップを高めるため、そして、財政支援の動きが強まるセネガルで、消極的な姿勢のままでは日本援助の重点分野・課題においてリーダーシップを取れない恐れがあるためである。アカウンタビリティーの問題などにも配慮し、他国の先駆的取組みに学びながら、漸進的に取り組む必要がある。また、プロジェクト型支援と組み合わせて実施していくことが望ましい。
援助手法の駆使
各種連携の強化: 援助の効果・効率を高めるために、ドナー間・スキーム間・セクター間連携、NGOとの連携など各種連携について強化していくことが望まれる。スキーム間連携は成果を上げており、セクター間連携も潜在性が高い。活発かつ成熟したNGOセクターが存在し、地方分権化が進むセネガルでは、NGOとの連携を強化することが適切と言える。
南南協力の推進: 西アフリカおよび仏語圏アフリカの中心的国というセネガルの優位性を活かし、地域内の南南協力を推進していくことが望ましい。東アジアの経験に学びたいというセネガル側の強い意欲をにこたえ、アジア‐アフリカ間の南南協力に積極的に取り組んでいくことも望まれる。
セネガルとの枠組み合意と定期政策協議
セネガルとの枠組み合意: セネガルのオーナーシップを高め、両国間のパートナーシップ強化のため、セネガル側と開発協力に関する中期の枠組み合意を行い、枠組み合意に準拠して国別援助計画を策定することが望ましい。枠組み合意では、5年程度の達成目標、開発課題・分野、達成方法、中間レビューや評価のスケジュール・基準、双方の役割・義務などを明確化する。また、日本側が期間中のおおよその援助額を提示することによって、セネガル側は予測可能性を高めることができる。
定期政策協議: 上記枠組み合意や国別援助計画の策定・見直しには、ハイレベルの政策協議を開催する必要がある。中間レビュー実施にも同様である。ハイレベル協議では、現地ODAタスクフォースの主体性を尊重しながら、外務本省やJICA本部も参加し、ODA上位政策や諸イニシアチブとの整合性を確保する。それ以外の年は、現地ODAタスクフォースがセネガル政府と年次協議を行なう。
定期政策協議の開催や枠組み合意・国別援助計画の策定にあたっては、正統性や透明性を確保すべく、市民社会(NGO)をはじめとするステークホルダーの参画を得る。
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