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「サモアの教育分野に対する日本のODA(2002~2006年)」評価

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「サモアの教育分野に対する日本のODA(2002~2006年)」評価  

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2.国名:サモア独立国  

3.評価者他:

(1)サモア財務省、援助調整・融資管理部
 ヌーミア・シミ 次官補佐
(2)サモア財務省、財務部(分野企画)
 ベンジャミン・ペレイラ 首席企画官
(3)調査実施コンサルタント:KVA Consult Ltd
4.調査実施期間:2006年11月~2007年2月

5.評価方針

(1)目的 2002年から2006年のサモアの教育分野に対する日本の支援について、第三者による評価を実施し、教育分野の改善のためのサモア政府の諸施策、及び日本のODA並びに他ドナーの支援の効果を包括的に評価することを目的とする。

(2)対象 日本政府のODA戦略、サモア政府の「国家開発戦略2002-2006年」及び「教育の戦略的政策と計画」における開発課題、他ドナーの教育支援を評価対象とし、サモアの教育分野に対する日本のODAプログラムで以下のものに焦点を当て評価を実施した。

(イ)無償資金協力

  • 「一般プロジェクト無償資金協力」(職業訓練学校拡充計画)
  • 「草の根・人間の安全保障無償資金協力」(以下、「草の根無償」という)(小学校校舎の建築・増築・改修と教育機材の整備、職業訓練学校施設の整備:27件:2002-05年実績)

(ロ)技術協力

  • ・専門家(3名:2005-06年実績)、シニア海外ボランティア(19名:2005-06年実績)、開発調査団の派遣-サモア国立大学(NUS)、職業訓練学校(SP)、教育・スポーツ・文化省、ドンボスコ職業訓練センター(DBTC)
  • JOCV(50名:2005-06年実績)の派遣-NUS、SP、DBTC
  • 機材供与-遠距離教育のためのICT機器設備の供与
  • 研修員受入れ事業(26名:2002-06年実績)-行政官、技術者、研究者の専門的知識の取得と技術の研修、日本政府(文部科学省)奨学金留学生事業(14名:2002-06年実績)
  • フォロー・アップ事業(NUS-ICT専門家派遣)

(ハ)他ドナーによる教育分野への援助-マイクロプロジェクト、融資事業等

(3)調査方法

  • 評価の枠組みと手順(机上調査、インタビュー、実地調査)の確定
  • 評価項目と基準の確定
  • データ・情報の収集
  • 概要の取りまとめ・報告書の作成
  • サモアの今後の取り組み、日本のODAの効果的な実施のための提言を行う。

6.評価結果

(1)プログラム目的の妥当性

  • サモア政府の「国家開発戦略2002-2006年」と「教育の戦略的政策と計画」における最終目標は「サモアが持続的な経済成長を遂げ、教育、医療水準が向上し、文化・伝統的価値が深化した環境において、全国民が質の高い生活を享受する」ことである。開発課題の一である「教育水準の改善」は、「教師養成の訓練と教員の質向上」、「学習指導要領及び教育機材の向上」、「教育設備の向上」、「民間及び公的教育機関の連携強化」、「政府教育部門の管理能力強化」の基本方針により成り立っている。
     これらの教育分野における基本方針は、サモア政府が掲げている、幼児教育、成人の識字率改善と技能習得、継続教育の向上、貧困の削減などの開発目標と整合的である。
  • 日本の教育分野に関するODA政策は、2000年に世界教育フォーラムで採択された『ダカール行動枠組み』、次いで2002年のG8サミットで採択された『成長のための基礎教育イニシアティブ(BEGIN : Basic Education for Growth Initiative)』における基礎教育重視の考え方をその柱の一つとしている。特に「基礎教育の普及と質の向上」に関する考え方は、サモアの教育分野に対する我が国ODAの事業目的と整合的である。
    • 「教育水準の改善」:サモアポリテクニック(工芸学校)への無償資金協力、草の根無償(小学校の校舎改修、教材整備)が多大な貢献をした。
    • 「教師養成の訓練及び教員の質向上」:専門家、ボランティア派遣、研修、奨学金・留学生事業等が多大な貢献をした。
    • 「サービス部門のニーズに合致した教育システム」:サモア経済におけるサービス部門拡大に即応した職業訓練教育施設の拡充。
    • 「村落の貧困削減」:職業訓練教育施設、村落部の小学校校舎の建設
    • 「公平なアクセス」:草の根無償により小学校校舎を改善し、1995年から2005年の就学率向上に寄与した。
    • 「教育分野の質」:技術協力及び草の根無償が教師養成の訓練及び教員の質向上に貢献した。
  • 他ドナー(EU、ADB等)のマイクロプロジェクトによる校舎建築や教育機材の供与は、日本のODA事業と補完的関係となっている。

(2)プログラム策定・実施の適切性

 サモア政府と日本政府は、教育分野における優先事項を特定し、緊密な連携を図ったため、上記のプログラム・プロジェクトがもたらす効果は大きなものとなった。特に、一般プロジェクト無償案件のサモアポリテクニックに関しては、広範な事前協議が行われ、また、草の根無償では、ニーズの優先順位に従い新校舎の建設、増築・改修工事が行われた。更に、他ドナーと調整が行われた結果、重複はなく事業が実施された。
 規模の大きい案件については、サモアの能力開発を促進する目的で地元施工業社の使用を提言する意見もあった。
 他ドナーと比較して、日本の教育分野に対する支援が顕著である為、サモア政府と教育分野に関する政策協議を他ドナーと共に実施する際には、日本がより主導的な立場をとることが適切である。

(3)成果とインパクト

(イ)教育の効率性の向上:

  • 日本のODAを通じ、学習指導要領の開発、教育機材の改善、職業訓練教育の向上などによって、言語能力、学習能力に改善がみられた。
  • 特に、サモアポリテクニック、DBTC、ラムムアオ・プナオナ・テクニカルセンター(LPTS)で提供される職業訓練教育の質が改善された。
  • 日本の無償資金協力により、またサモア国立大学(NUS)とサモアポリテクニック合併により設備が近代化され、施設として最大限の機能を発揮することが可能になった。

(ロ)入学者の増加:2002~06年の間、初等教育に40,000人、中等教育に15,000人、中等教育終了レベルに2,500人、合計で57,500人が学校に入学したと推定される。少なくともその中の8,000人の生徒の就学は、サモアポリテクニックの一般プロジェクト無償案件、草の根無償案件、技術協力(専門家・ボランティア派遣、研修)、奨学金・留学生事業などを通じた日本のODAによる直接的貢献と見なされる。

(ハ)社会経済の不均衡の減少: 草の根無償により公共サービスの利用が高まり、貧困削減にインパクトを与えた。

(ニ)公式な開場式・署名式の開催や、記念標識の建設により、教育分野に対する日本のODAに関する認知度を高めることになり、大きなインパクトをもたらした。特に、地方での草の根無償案件の広報効果が大きい。

(4)持続性とオーナーシップ (イ)日本のODAにより学校校舎と設備の質が改善され、建築基準の質確保に寄与している。特に村の小学校は、サイクロンの季節には避難場所として利用可能な耐性を有している。

(ロ)日本のODAにより学校委員会の管理能力が改善しており、組織力及び持続性の強化に寄与している。

(ハ)研修参加者の同窓会が設立されたことは、当事業と奨学金・留学生事業に対する関心を持続させるために効果がある。

  以上のとおり、生徒や教員等のソフト面に与えたインパクトが大きく、ほとんど全ての学校の調査対象者から、教育を巡る状況は改善しており、日本のODAに対する評価は総合的に高いとの回答を得た。

7.提言

サモア政府に関する提言

(1)常設の教育分野を担当するタスクフォースを設置し、今後の方針、戦略、政策に関し検討し、定期的に内閣開発委員会(Cabinet Development Committee)に報告する。

(2)教育分野の政策と国家開発戦略の関連性を明確にする。

(3) サモアの教育戦略・政策と太平洋地域の同分野での地域的取り組みの連携を図る。

(4) ドナー国(機関)との公式定期会合を開催する。

(5)中等教育終了レベルでの教育予算の効果・効率性を高めるために、複数年次計画およびその予算を策定する。

日本政府のODAに関する提言

(1)草の根無償の被供与団体の中で、プロジェクトの維持管理に関するオーナーシップ・規律を示した団体に対しては、引き続き、教育の質、効果、効率性を改善するための教育機材供与等のソフト面での支援を検討する。

(2)一般教育、専門的技術教育における教員の質を向上させるために、技術協力スキームの専門家・シニア海外ボランティアの数を増やし、奨学金・留学生事業を強化する。

(3)日本の援助関係者で教育に関する常設のタスクフォースを設置し、日本のODA投入に際し改善が必要な教育部門を特定するための協議の場をサモア政府と持つことを検討する。

(4)日本は教育分野の調査ミッションを派遣する際、その時期につき他ドナーのミッションと連携が図れないか、検討する。

(5)将来の『被援助国主導の評価』実施に備え、日本は教育分野の分野別計画・政策協議に参加する。

注)上記は、評価者が作成した英文の評価報告書を元に要約して大使館にて日本語訳したものですが、記載されている内容は、評価実施者の見解であり、日本政府の立場や見解を反映するものではありません。

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