1. テーマ:ラオスにおけるジェンダ-関連ODAに対する有識者評価 |
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2.国名:ラオス |
3. 評価者:船橋 邦子
アジア女性会議ネットワ-ク、コ-ディネ-タ-
元大阪女子大学女性学研究センタ-教授
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4.調査実施期間:2002年2月19日~3月31日 |
5.視察対象プロジェクト:
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ラオス女性連盟(LWU)の運営管理能力強化とジェンダ-に関する意識啓発プロジェクト(WID基金、98年) |
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ジェンダ-研修センタ-建設計画(草の根無償資金協力、99年) |
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女性識字教育センタ-建設計画(草の根無償資金協力、98年)
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女性自立向上事業(開発福祉支援事業、98~01年) |
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6.評価結果:
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援助の主な成果、妥当性
4件のプロジェクトは、女性のエンパワ-メントを目的とするものだが、法識字を含めた識字教育、ジェンダ-問題に対する意識改革、職業訓練による女性の自立支援などにおいて、セミナ-受講生、職業訓練を受ける機会を得た女性、つまり直接の受益対象者が力をつけることが出来た点では評価できる。但し、受益者選別過程の方法を含め情報の公開性、公平性、透明性の問題は今後の課題である。
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事業実施にかかる有効性
ジェンダー研修センター建設計画の一環である、研修のためのガイドブックは県女性連盟の副会長他、女性連盟とJVCの協力により作成されたものだが、イラストが多く、分かりやすい内容で構成されている。予算の関係上、県内103村を対象となっているが、今後同様の支援が県内あるいは他県の必要な地域に拡大することが期待される。
女性識字教育センター(LRC)は、UNESCO、アジア文化センター(ACCU)の識字部門(アジア・太平洋の15の地域に存在)と連携した組織である。完成したセンターには、コーディネーター2名がNGO、政府、他の組織とネットワークを形成しながら、NFEDCの一環として、事業を進めている。担当者はACCUの国際会議に出席し、ACCUの情報収集、指導方法などの研修を受けた結果、低識字率の原因の一つは、非識字者の能力、ニーズにあったカリキュラム不足と分析した。その結果、カリキュラム開発を、村から派遣された参加者によるワークショップにおいて、自分たちの村が抱えている問題を発見し、その解決方法などを議論し、それらをベースとして作成するというプロセスでなされるようになった。これは、参加者にとって自らのエンパワ-メントになる有効な方法である。
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(3) |
事業実施の継続性、自立発展性
施設の完成を伴う事業には継続性、自立発展性の芽を十分に見いだすことができる。例えばジェンダー研修センターの場合、カムアン県女性連盟の国会議員(2期目)を含め、県女性連盟の代表、副代表など優れたリーダーを中心にネットワークの絆が強く、会員の女性たちが活動主体として、積極的に事業に取り組み、今後の活動へと継続性をもっている。
LWU組織強化に関しては、その成果は評価できるものの、一定のレベルに達したスタッフは限られており、自立するまでには引き続き同様の支援が必要であろう。 |
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7.提言
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ジェンダ-関連プロジェクトの体系化とネットワ-ク化
各プロジェクト間で目に見えたネットワークが形成されてはいないが、ラオス女性連盟の会員がなんらの形でかかわっているなど人的関係が、どこかでつながっていて全体として、ラオス女性のエンパワ-メントになっていることを把握できた。今後は、明確な意図を持ってジェンダ-関連プロジェクトの体系化とネットワ-ク化が実施されることが望まれる。 |
(2) |
地域バランスへの配慮と全国規模の展開
ジェンダーに特化した案件に対する予算の枠組みは、極めて少ないが、小規模でも女性のエンパワ-メントにつながり、現地の人々の満足度が高い、草の根無償資金協力タイプの援助を地域的に公平に、全国的に広げていくことができれば、人間開発という目的に適った援助がより有効性をもって機能しうるのではないかと思う。 |
(3) |
受益者選別過程の公平化、透明化
ホワイホン職業訓練センターでは対象者を障害者、貧困層の女性と限定し、人選を県の労働局に依頼している。受益者がビエンチャン近郊に偏りがちであることについては、現地の女性からも批判の声が聞こえた。WID基金による、少数民族を対象としたプロジェクトがタイでは存在するように、今後は、例えば識字センターなどが、最も識字率の低いモンの女性たちなどを対象に取り組む必要があるのではないか。また、首都圏に偏ることなく、より公平に、より広い地域の女性を対象とするためには、情報をいかに公平に提供できるかのシステムづくりがもとめられる。女性一般を対象とする方法から、社会的、経済的に、より支援が必要な女性たちの声を反映した案件を、現地の女性グループ、団体、NGOとパートナーシップを築きながら形形成することも極めて重要である。それが可能になれば、受益者の地域的偏りも是正されるのではないだろうか。 |
(4) |
ジェンダ-指標の導入
ODAの全てのプロジェクトに、ジェンダーに敏感な視点の導入、ジェンダー指標を導入する。たとえば港湾建設の完成が女性と男性の生活に及ぼす影響について、事前に調査するなど、ODAが両性間に及ぼす影響についての事前調査、プロジェクト実施前後の意識調査、両性間の格差を正確に把握するためのジェンダー統計の整備、各案件に両性間の不均衡を是正するための予算を組み入れていく等の方策が肝要であろう。 |
(5) |
日本国民に対する広報
国内でのODAに対する認識を変えていくために、今後、日本の農業女性、学生などがラオスにでかけ交流する機会をつくり、日本のODAが、ジェンダー関連プロジェクトのように現地のニーズに合致し、有効に使われている実態を理解する機会をつくることが重要ではないかと考える。その意味で、既に導入されているODA民間モニタ-制度の一層の活用が期待される。 |
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