広報・資料 報告書・資料

パプアニューギニア・
インフラ整備分野の支援評価

1.テーマ:インフラ整備分野
2.国名:パプアニューギニア
3.調査団員他:
(監修)
 熊谷 圭知 お茶の水女子大学 文教育学部
 川上 照男 あずさ監督法人 新規事業部
(調査団員)
 大根田洋祐 (株)三菱総合研究所 海外開発事業部 専門研究員
 平石 和昭 (株)三菱総合研究所 海外開発事業部 主席研究員
 石里 宏  (株)三菱総合研究所 海外開発事業部 シニアコンサルタント
 林  保順 (株)三菱総合研究所 海外開発事業部 研究員
(現地調査オブザーバー)
 槇 隆人 外務省経済協力局無償資金協力課
4.調査実施期間:2003年9月~2004年3月
5.評価方針:
(1) 背景
 パプアニューギニアは、わが国の二国間援助実績(支出純額累計)で、大洋州地域最大の受け取り国である。同国は、インフラ整備分野を優先政策のひとつとして位置付けており、同国に対するインフラ整備分野の支援をより効果的かつ効率的に実施するためにも、これまでの取り組みおよび実績をレビューすることが求められている。
(2) 目的
a. パプアニューギニアのインフラ整備分野に対する我が国のODAを改善するための教訓・提言を得ること。
b. 評価結果を公表して説明責任を果たすこと。
(3) 対象、方法
 評価対象は、1997~2001年度において、パプアニューギニアのインフラ整備分野に対して実施された我が国ODAとし、(i)目的の妥当性、(ii)結果の有効性、(iii)プロセスの適切性という観点から評価を実施した。
6..評価結果:
(1) 対パプアニューギニアのインフラ分野支援における目的の妥当性
イ) 我が国の援助は、ODA大綱及び中期政策に沿ったものであり、同国の国家計画で経済インフラ整備を優先的な政策の一分野として位置付けていることから、被援助国とのニーズとも整合していた。また、我が国が参加している対太平洋州地域の支援に関する国際的な合意とも合致していた。
(2) 対パプアニューギニアのインフラ分野支援における結果の有効性
イ) 1997~2001年度には、運輸分野、道路分野、放送分野、水供給分野あわせて、総額328.6億円の資金が投入された。その結果として滑走路と空港ターミナルビルの新規整備、道路、橋梁の整備、放送スタジオ、中継所の設立、ポンプ・ステーション及び浄水場の建設などが行われた。
ロ) 次に、これらの活動による効果を、同国の「国内交易、交流の推進」及び「地域生活基盤の安定化」の観点から、空港貨物取扱量、通行所要時間、放送受信可能地域などの指標を設定して測定した。その結果、これらの指標の変動要因は様々であり、我が国援助の効果を正確に測ることは困難であったが、少なくとも、次のような効果が確認された。
 「国内交易、交流の推進」については、わが国ODAで建設された横断道路により、これまで海上交通に依存し、迂回を余儀なくされていた区間で陸上交通が可能となったことから、当区間の交通所要時間が6~8時間短縮された。また、わが国の援助によって東ニューブリテン州国営ラジオ放送局が修復され、これまで受信が不可能であった地域のサービスが復旧した他、放送時間も1日5~6時間から17時間に延長された。また、「地域生活基盤の安定化」については、約6.9万人の住民が浄水普及の受益者となっており、これは全国の上水道受益人口増加分の約13%にあたる。
 社会・経済全般に及ぼす波及効果については、パプアニューギニアの経済に対する我が国ODA量が小さいことから、直接の効果は確認できなかった。またGDPのマイナス成長、インフレの進行など、同国の経済動向は依然厳しいものとなっている。
(3) 対パプアニューギニアのインフラ分野支援におけるプロセスの適切性
イ) 援助方針の策定については、国家計画・地方開発省(DNPRD)と定期的に公式な協議の場を設けており、要請案件の選定・採択プロセスは適切であった。他ドナーとの連携に関しては、一般的な情報交換を行っているものの、それぞれの案件同士を連携させるなど、具体的な協議は実施していない。
ロ) 草の根無償案件については、案件の完遂チェックや事業効果について、現状では十分なモニタリングが行えていない恐れがある。
7.提言:
(1) 援助政策の企画・立案・実施の各段階において、関係ドナー間での調整、連携に配慮する。
(2) パプアニューギニア政府の調整能力向上(キャパシティビルディング)のための更なる支援を行う。例えば、日本の地方自治体での長期研修、JICAスキームを利用した国家計画・地方開発省(DNPRD)の研修プログラムを強化することが挙げられる。
(3) 草の根案件の実施状況および効果測定に関する管理体制を強化する。例えば、現地有識者を活用した管理体制の形成など、草の根案件に対する日本大使館の体制強化を図ることが望まれる。


このページのトップへ戻る
目次へ戻る