1.テーマ:教育セクターへの協力に関する有識者評価 |
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2.国名:フィリピン共和国 |
3.評価者:黒田一雄
広島大学 教育開発国際協力研究センター 助教授 |
4.調査実施期間:2002年2月27日~31日 |
5.視察対象プロジェクト:
(1)第5次教育施設拡充計画
(2)マニラ首都圏サンファン町ストリートチルドレン施設支援計画
(3)理数科教育向上パッケージ協力チーフアドバイザーの教育省派遣 |
6.評価結果:
フィリピンでは、無償資金協力における校舎建設、理数科教育分野の技術協力、有償資金協力による教育セクター支援、草の根無償等の様々な日本の教育協力が展開されている。今回の評価調査の目的は視察対象のプロジェクトと共に、その連携を評価することであった。
(1) | 第5次教育施設拡充計画-本プロジェクトは、高い妥当性を有し、目標達成度、効果といった側面からも高い評価がなされた。効率性の観点からは、他の国での一般無償資金協力による校舎建設と同様に、比較的高価な建設単価が問題とされた。しかし、過去10年以上に及ぶこの分野での協力の過程で、活発な議論がなされ、改善への積極的な努力もなされていた。 |
(2) | ストリートチルドレン施設支援計画-高い妥当性を有しており、提供された機材は有効に活用されていた。 |
(3) | 理数科教育チーフアドバイザーの派遣-学校レベルの教員再研修システムの開発による、現場の理数科教育の向上のための既存プロジェクトの調整と案件形成に大きな役割を果たしていた。 |
(4) | スキーム間の連携- 1)技術協力パッケージの各コンポーネント間の連携、2)技術協力と無償資金協力による校舎建設の間の連携、3)無償資金協力と有償資金協力による教育施設拡充の連携・補完、4)技術協力と草の根無償との連携、の4つの観点からスキームの異なるプロジェクト間の連携を検討したが、いずれも十分な連携とはなっていなかった。フィリピンへの教育協力に対するグランドデザインや、スキーム間・関係者間の情報の共有・調整・分担・協働の必要性が強く認識された。 |
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7.提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点等):
(1) | 校舎建設の建設単価の問題
一般無償資金協力による校舎建設の単価は、比較的高額である。一方その耐久性や安全性が高いことも広く認知されている。
関係者の努力により、コストの削減にはこれまでも、大きな努力がなされてきた。今後は、日本の校舎建設による教育協力の目標・特徴・役割に関する議論をオープンにし、二国間援助として適当な校舎建設のあり方について、校舎建設向きの新しいスキームの開発等も含めて柔軟な検討を行うべきである。。 |
(2) | 連携の問題
今回の評価調査では、スキーム間・援助機関間の連携がいかに難しい課題であるかが明らかになった。JICAの中でも国別アプローチのための機構改革が進展し、JICAとJBICとの連携に関しても最近活発な議論がなされている。ドナー協調が今後の国際協力のキーワードの一つとされる時代であるにもかかわらず、同じ国からの教育協力がスキームや機関を超えた有効な連携・整合性をもっていないことは、大きな問題であり、今後の早急な対応が望まれる。
機関を超えた連携のために必要なのは、関係機関がそれぞれの特性を生かしたオールジャパンの国別教育セクター協力の指針策定を共同で行うことと、それを基としたプロジェクトデザインである。関係機関の間で進められている情報共有とプロジェクト連携に関する協議の一層の徹底も必要であろう。
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8.外務省の一言:
外務省は、ODA大綱やODA中期政策を踏まえつつ、主要な被援助国に対して、援助の目的、重点分野等を具体的に記した「国別援助計画」を順次策定しています。フィリピンについても、2000年8月に国別援助計画を策定し、各種援助形態の有機的連携による援助資源の効果的投入に努めています。また、フィリピン政府との経済協力政策協議等を通じて、フィリピンにおける援助需要を踏まえた連携の強化や効果的・効率的な援助の実施に努めています。
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