1.評価対象プロジェクト名:
カニェテ農学校改善機材供与計画
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2.国名:ペルー
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3.援助形態:
草の根無償97年度、9.7百万円
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4.被供与団体:
プロシップ バジェ・グランデ
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5.評価者:
荒木 光彌 (株)国際開発ジャーナル社編集長
中畝 義明 (社)世界経営協議会研究調査部長
幡谷 則子 アジア経済研究所地域研究2部副主任研究員
橋本 吉之 アイ・シー・ネット(株)企画部プログラム研究員
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6.現地調査実施期間:2001年1月20日~2月5日
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7.プロジェクトの目的:
カニェテ市はリマ南方140キロに位置する農業を主産業とする町である。同市にあるカニェテ農学校は、1992年にイタリア、スペインの資金援助を得て開設された3年制のペルーで唯一の実践を旨とする農業専門学校である。新しい農業技術の普及、地域青年の地元への定着を目的とし、生徒は1学年平均30名で1カ月の内2週間を学校に寄宿し農業理論を学び、他の2週間は自家農地で農業を実践する教育方式をとっている。
1)寄宿舎の整備(3階建て施設の3階部分の内装の完成)、2)コンピュータの配備、3)図書館の整備(農学技術関連文献、参考書類の整備)、4)一般教育用機材の整備等により、近年の農業技術革新へ対応した学校として充実させることを目的とする。
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8.評価結果:
(1) |
寄宿舎の3階部分の内装が学校側の資金不足により未完成であったが、草の根無償により内装が完了し、寄宿方式による教育が支障なく行えるようになり、当初予定した目標を達成した。寄宿方式による学習は、点在する生徒の通学の時間を省き、農業理論等の学習に効果をあげている。また、生徒が共同生活、衛生知識、食事マナー等を学ぶ上でも効果をあげている。 |
(2) |
供与された図書は、図書館の拡大、アップデートに貢献し、生徒、先生、卒業生に農業技術における疑問点の解決に活用されている。図書館は卒業生や地域の農業専門家にも利用可能であり、図書が地域レベルで活用されている点波及効果も大きい。 |
(3) |
コンピュータの供与により近代的なコンピュータセンターが設置された。供与以前は、他の学校のコンピュータ施設を借りざるを得ず、必要なカリキュラムを満たすことができなかった。現在は、システム演習の継続的実習が可能となり、卒業生にも新たにコンピュータ実習を行える等授業は充実し成果をあげている。また、生徒は予算、生産コスト、資本投入計画など農地管理のシュミレーションが行えるなど、実践的な効果も得られている。 |
(4) |
卒業生は、ほとんどが、農業に就き学習の成果を生かし農業生産を拡大するとか、農場へ就職し技術が認められ高い月収を得るとか、農家の子弟の農業技術向上、所得向上に貢献している。農業生産が拡大した卒業生の家庭では、子供が勉学の機会を得られるようになっている。 |
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9.提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点等):
(1) |
スペイン、イタリア、EU等から資金援助を得ている組織力のあるNGOプロジェクトの資金不足部分に対し草の根無償が供与され、効果的に活用され、農学校の整備に貢献した。運営NGOの組織はしっかりしており、自己資金も充当され建物は立派で、施設も整備されたものとなっている。草の根無償は、政府の資金不足により実施が難しいプロジェクトを実施し、行政の隙間を埋め、貧困層に裨益するところに意義がある。本件のように行政は関与していないが、NGOがしっかり実施しているプロジェクトも草の根無償の対象範囲とするのか、考えさせられるものがあった。草の根無償の上限が拡大されたが、草の根無償と一般無償の役割分担を明確にすることが必要と思われる。 |
(2) |
上記に関連し、各在外公館の草の根無償の対象範囲に関する意見交換、また、対象国への援助政策とリンクさせ、案件に戦略性、メリハリをつけることも必要と思われる。 |
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10.外務省からの一言:
(1) |
通常の草の根案件にしては、設備等がかなり充実したものであったが、農業学校としての中心的役割を果たす学校への援助となっていた。 |
(2) |
一般無償と規模の大きな草の根無償との役割分担については、援助を受ける側のニーズも踏まえ、現地が必要とする支援を行えるような形で整理していく必要があると考えている。 |
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