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パキスタン・インダスハイウェイ建設事業

1.評価対象プロジェクト名: インダスハイウェイ建設事業
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2.国名: パキスタン・イスラム共和国
  実施機関名:国道公団(NHA)
3:援助形態: 有償資金協力
 第一期:88年度    85.16億円
 第二期:90年度   207.78億円
 第二期追加:93年度 182.14億円
4.評価実施機関名: 在パキスタン日本国大使館
5.現地調査実施期間:2001年2月21日―25日
6.プロジェクトの分野:運輸、交通
7.政策目的又は政策の方向性:
 経済基盤整備、特に不足している経済インフラの整備
8.当該プロジェクトの目的:
 ペシャワールーハイデラバード/カラチを結びインダス河右岸を走る国道55号線約1200kmの改良・整備により、パキスタン南北を貫く基幹道路としての機能を十分に発揮させ、あわせて従来より立ち遅れているインダス河西岸の経済発展を図ることにより、パキスタン地域経済のバランスのとれた発展を図る。
9.評価結果:
 当該プロジェクトは、3期に分かれ、借款はそのうち第1期、2期分総延長約760kmに対し供与している。7月末の借款期限までに第1、2期工事は完了の予定。南北回廊を軸とするパキスタンの交通ネットワークの強化の観点、その中での南北縦貫道の占める重要性から見て妥当な事業であった。本事業の実施により、定期観測データによると事業着工前と現時点では交通量が約3倍増となり、この間のパキスタンの道路交通量全体の伸び(71%増)を大幅に上回っており、効果があったといえる(図表1参照)。また、大雨によりしばしば道路が流されていた北部の主要都市間約200kmは、本事業により交通が確保された他、シンド州内陸部からの米の出荷についても、大消費地であるカラチへの出荷が即日可能となる等、地域経済の発展にも寄与している。
10.提言:
 パキスタン政府からは、2000年1月第3期事業への借款供与要請がなされている。未着工の第3期の工事区間は、都市部区間が多く、1、2期区間を上回る大幅な移動時間の短縮が見込める。さらに、全線が完成すればパキスタン南北を貫く大動脈となり、物流、医療・教育へのアクセス改善などに留まらず、国土全体において産業・人口の流動、再配置、新規立地等のダイナミックな効果が見込まれる。当国の道路分野に対する協力としては、北方地域の大動脈となっているカラコルムハイウェイに対する中国の協力が有名であり、完成後20年以上を経た現在でも中パ友好のシンボルとして、当国で広く知られている。本インダスハイウェイ事業も完成の暁には、事業規模や国土縦貫主要幹線道であり、日本の経済協力のシンボルとなる。加えて、インダスハイウェイ通行上の隘路を解消すべく我が国借款で、我が国コントラクターにより建設が進められているコハット・トンネルは排気システム等国際標準のトンネルであり、道路トンネル自体がほとんどない当国において、我が国経済協力のみならず我が国の技術力、存在感をアピールできる。ODA広報の観点からも第3期借款供与要請に対する検討が望まれる。他方、本インダスハイウェイは、物流の大動脈としてトラック輸送に利用されているが、多くのトラックが過積載であり、取り締まりの強化等適切な交通政策の実施が必要である。本プロジェクトの詳細な経済効果などの分析や交通政策等、政策提言・指導が期待される。
11.外務省(本省)からの一言:
 道路整備においては、ハードの整備に加え、建設後の維持・管理に対する人造り等の支援も重要であると考えおり、今後の取り組みを検討していきたいと考えています。
図表1 N-55における事業前後の交通量(日交通量:台/日)
調査箇所 事業着手前 1990年 事業完成後 2000年 伸び率
(1)Jampur 1,321 3,895 2.95
(2)Vohowa 457 1,397 3.06
注)(1)Jampur:インダスハイウエイ建設事業第8工区(パンジャブ州)
  (2)Vohowa:インダスハイウエイ建設事業第9工区(パンジャブ州)
(1)(2)のいづれもパキスタンの全国平均の交通量の伸び(年5%→11年間で71%の増)を大きく上回る。調査箇所(1)は本事業の第3期区間で未整備区間に位置するが、第2期までの整備効果により、N-55全線の長距離トリップが増えた結果と考えれられる。


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