1. テーマ:チリ及びキューバ:南南協力支援
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2.国名:チリ、キューバ |
3.評価者: |
細野昭雄
(神戸大学経済経営研究所教授)
津田文代
(外務省経済協力局国別計画策定室事務官) |
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4.調査実施期間:2001(平成13)年3月8~31日 |
5.視察対象プロジェクト:
「日本・チリ・パートナーシップ・プログラム(JCPP)」に基づく対キューバ南南協力プロジェクト「キューバ水産養殖振興に係わる協力手法の研究支援」
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6.評価結果:
チリを南南協力を行なう相手国とする妥当性はきわめて高い。相対的に高い学術及び科学技術水準並びに南南協力の経験の蓄積がすでにあること、また多くの分野での日本からの技術協力の実績があることによるものである。当該案件に関しても、チリが水産養殖における技術の優れた拠点を有しているということ、しかも、日本からの協力の実績があるということは、チリが南南協力国として優れた条件を有していることを意味している。一方、キューバでは、水産量の増加を実現するために、養殖を発展させる必要性が高い。現在、沿岸漁業による生産の拡大は困難な状況にあり、魚の国内自給が困難となっており、海外からの水産物輸入に依存せざるを得ない状況にある。従って、キューバにとっては、外貨の節約及び国民の蛋白源の確保という観点から、水産養殖の発展は緊急を有する重要な優先的課題であると考えられる。また、キューバは、比較的教育水準が高いこと、淡水魚の養殖に既に実績があることから、技術吸収能力はかなり高いと考えられる。以上の点から、本事例案件に関し、協力国としてのチリ、受入国としてのキューバの妥当性はきわめて高いことが確認された。
南南協力の支援を実施する日本にとり重要なことは、これまで実施されてきた技術協力の経験やチリで蓄積されている移転技術が更に他の途上国に移転され、日本からのこれまでの技術協力が生かされるということにある。このような観点からも本事例案件のような協力は非常に妥当性が高いと考えられる。
なお、チリとキューバの間には自然条件、社会経済条件の相違はあるものの、それらは、本事例案件の場合、障害とはならないことも確認された。
日本・チリ・パートナーシップ・プログラム(JCPP)は、中南米諸国に対する日本の南南協力支援のモデルとして注目すべき事例が多いが、なかでも本事例案件のプロジェクトのようなケースは、上記のように、妥当性が高いことに加え、チリ側スキームを初めて用いたものであること、また、南南協力支援において各種技術協力スキームを組み合わせて活用した包括的な協力であるという2点から特に注目されるものであり、しかも、それが、成功裡に実施されたことは高く評価される。
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7.提言
南南協力支援は少額の予算で非常に高い効果を挙げており、今後の拡充が望まれるが、南南協力支援をより一層充実させ発展させていくためには、今後、それをより円滑に行うことを可能にするような制度面での整備が必要であると考えられる。具体的には、以下の通りであるが、検討に速やかに着手することを提言したい。
(1) |
今回のキューバへの南南協力支援で見られたようなチリ側のスキームを用いることが容易になるような制度面での整備が望まれる。その場合には、例えば専門家派遣の際の待遇やその専門家の事故などに際しての責任体制、その他様々な協力に関わる基準を南南協力のパートナーのスキームで行い易くするような制度の整備が必要であると考えられ、このことについて検討を行うことを提言したい。 |
(2) |
JCPPのような事業を、多年度にわたってコミットできるような制度の整備も必要であると考えられる。 |
(3) |
南南協力支援の実施に際して、現地の事情を良く理解している必要があり、かつ現地でパートナーとなる国や、協力の相手国との緊密な協議を行う必要がある。 従って例えば、「草の根無償資金協力」のように現場にある程度の裁量権を与え、権限委譲を行うように予算の執行の方法や計画や評価などを行い得るよう制度の整備を行う必要があると考えられる。 |
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