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対ニカラグア国別評価

1. 対象国名: ニカラグア共和国
■面  積 129.541平方キロ(日本の約3分の1)
■人  口 481万人(1998年世界銀行)
■一人当たりGDP 508USドル(2000年)
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2. 我が国の対ニカラグア援助実績の概要:
 1991年から1999年までの我が国の対ニカラグア援助累計額は、有償資金協力・無償資金協力・技術協力を合わせて560.83億円であり、我が国は1999年には約69億円の援助をニカラグアに供与している。我が国の対ニカラグア援助重点分野は、社会開発・貧困対策、社会・経済インフラ、環境、民主化・経済安定化支援の分野であり、幅広い支援を行っている。
3. 評価調査団:
 狐崎 知己 専修大学 教授
 竹内 恒理 つくば国際大学 助教授
 盛  信博 (株)コーエイ総合研究所 調査研究部部長
 池野 雅文 (株)コーエイ総合研究所 研究員
 山田 和子 (株)コーエイ総合研究所 研究員
4. 調査実施期間: 2001年9月17日~2002年3月15日
5. 評価目的:
 日本のニカラグアへの援助の効果を総合的に分析するとともに、今後のニカラグアに対する援助政策選定の際に参考となる情報を提供すること。
6. 評価結果:

<全般的評価>
 一般に、我が国の対ニカラグアODAは、直接住民に裨益する草の根無償事業からニカラグア社会経済全体に影響を及ぼす無償資金協力事業に至るまで、その目的を概ね達成し、所期の効果が発現している。

 政府関係者の我が国ODAに対する評価は極めて高い。また、事業裨益者のみならず、国民一般も我が国のODAの有益性を認識し、評価している。我が国ODA事業の記念切手シートが1999年及び2001年の2度にわたり発行されており、ニカラグア政府としても広報に努力している。

<重点分野別評価>
社会開発・貧困対策分野: 初等教育、保健医療、貧困対策における事業は効果をあげているものの、戦略の工夫により効果増大が見込める。
社会・経済インフラ整備分野: ニカラグアへ民間投資を呼ぶためにはインフラ整備が不可欠である。これまでの我が国援助により主要国道の橋梁が建設され、インフラのボトルネックが解消され、これによりニカラグア経済活動の活性化に貢献した。
環境分野: 首都圏の水道は日本の支援が一手に引き受けており、その裨益効果は大きい。
民主化・経済安定化支援分野: この分野については我が国ODAの明確な援助方針が打ち出されていないが、ノンプロ無償の見返り資金を活用した地雷撤去支援が評価されている。
7. 提言:
 重点分野別に見ると、現在の我が国援助の重点分野は網羅的である一方、個別案件から抽出された教訓が活かされにくく、またプロジェクト間の連携を考慮した新規案件形成が行われていない。今後は、ニカラグアの開発計画(SGPRS)に合致させつつ、限られた援助資源の有益性を最大化することを目指し、より具体的な分野に絞り込んで重点分野として設定し、戦略目標、中間目標、プログラム・プロジェクト目標に体系化することが望ましい。重点分野別の具体的な提言は以下の通り。

1) 教育:複数のスキームの組み合わせなどによる援助の連携が望まれる。技術協力では現在中心となっている青年海外協力隊にその他の技術協力スキームを組み合わせる事も有効と思われる。
2) 保健医療:サブ・セクターを絞り込み、援助目標を明確にするべき。既存供与機材・施設の保守管理へのフォローアップも資金援助や技術協力でする必要あり。また、プロジェクト方式技術協力と青年海外協力隊員との連携等による他地域への展開も必要。
3) 貧困対策:ニカラグアは農業国であり、貧困層の7割近くが農村に居住しているため、農業・水産業への技術的・資金支援は直接貧困層の所得向上に繋がる。
4) 道路・橋梁:幹線道路から未整備地方道支援への地方戦略性が必要。同分野マスタープラン作成への支援、道路・橋梁管理に係わる日本の技術移転も効果が高いと思われる。
5) 農業・農村開発:農業生産性の向上が不可欠であり、農業技術の知識と経験を有する機関との連携、農業技術の普及制度の確立、見返り資金を利用した完了事業の補完や新規案件実施が望まれる。
6) 水供給:不均衡な配水是正の為、給水事業組織・制度強化及び再編支援が必要。また、生活環境改善(含む公衆衛生)、生計向上、環境保全案件などのセクター横断的実施は有効だと思われる。
7) 防災:防災体制の整備、防災事業に従事する技術者育成のための人的資源開発支援が必要。
8) 民主化支援:法制度整備に係わる専門家派遣などの技術支援が望ましい。
9) 経済安定化支援:対外債務の削減、投資効率の向上、財政赤字の縮小などマクロ経済改善の為の包括的かつ一貫性のある支援プログラムを作成し、経済成長安定化を支援すべき。また、直接投資を促すべく、インフラ整備も支援するべき。

 援助供与形態別に見ると、無償資金協力ではプログラム・アプローチに沿った援助形態を決定することが必要である。技術協力では資金協力と技術協力を組み合わせることにより、相乗効果によるより大きなインパクトを得られるであろう。

 国別援助計画の実施に関しては、(1)援助戦略の体系化及び具体的な目標設定、(2)中・長期的視野を持った目標数値と目標年の設定と評価システムの導入、(3)重点分野別モニタリング指標選定とベースライン調査の実施、を提言する。
8. 外務省からの一言:
 我が国は、1990年の内戦終結以降大幅に援助を拡充してきており、ニカラグアにおける最大の援助国のひとつとして、草の根無償、一般無償、ノンプロ無償、食料増産援助、技術協力、見返り資金と、多方面で積極的にニカラグアの経済社会開発に協力しています。これらの援助は、ニカラグア政府の指導者から一般住民に至るまで高く評価されています。しかしながら、ニカラグアは依然中南米における最貧国の一つであるため、これまで重点的に援助を行ってきた太平洋地域のみならず、援助の手が行き届きにくい内陸部、カリブ海側についても援助を拡充し、同国における貧国削減のための努力を支援することが重要であると考えます。
 また、我が国は、対ニカラグア経済協力の一層の効率化・透明化を目指すため、今後5年間程度を目途とした日本の援助指針となる「国別援助計画」を策定中です。右をもとに、ニカラグア政府自身の貧困削減・経済成長に向けた自助努力を一層効果的に支援していく方針です。これからは、国際金融機関を通じる協力や、貿易・投資分野における、民間部門の協力とタイアップし、当国の経済発展及び両国の協力関係促進に努めてゆきたいと考えます。


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