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平成14年度 外務省・NGO共同評価
NGO事業補助金制度の評価

1.テーマ:平成14年度 外務省・NGO共同評価
  (NGO事業補助金制度の評価)
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2.国名:
 フィリピン共和国
3.評価調査団:
(NGO側)
塚本和泉: 国際協力NGOセンター
(日本国際ボランティアセンター ラオス事業担当)
柴田貴子: 名古屋NGOセンター
(外務省側)
宮崎慶司: オーバーシーズ・プロジェクト・マネージメント・コンサルタンツ株式会社 企画課長
斎藤幸子: オーバーシーズ・プロジェクト・マネージメント・コンサルタンツ株式会社 企画課課長代理
山川隆一: 外務省経済協力局民間援助支援室 外務事務官
(オブザーバーとして参加)
 
4.現地調査期間:2002年8月11日~28日
5.視察対象プロジェクト(NGO事業補助金交付NGOプロジェクト):
(社)銀鈴会 医療事業(障害者復帰対策)
喉頭摘出者に対する発声法訓練を通じての社会復帰支援(マニラ市)
(特非)地球ボランティア協会 地域総合振興事業(人材育成・女性自立支援・医療)
社会的に恵まれない女性と子供を対象に、保健医療、教育、生計事業に関する指導及びサービスの提供を通じての、生活改善の促進(国内20ヶ所)
(特非)今光教平和活動センター 保健衛生事業(保健・啓発)
貧困地区の未就学児に対する栄養補給のための給食サービス、母親に対する健康管理のための保健・衛生知識の普及、生活指導(国内3ヶ所)
(特非)日本フィリピンボランティア協会 地域総合振興事業(保健衛生、医療、地域産業向上、女性自立支援)
ダバオ市にある地域医療福祉総合センターの支援(貧困集落における無料医療巡回、給食の提供、母親学級等)、移動児童図書館活動、山の小学校の保健室整備、指導者養成など(ダバオ市)


上記4プロジェクトの他に、(特非)国際ボランティアセンター山形、(特非)ICA文化事業協会、(特非)AMDA、神奈川県海外ボランティア歯科医療団、南太平洋に歯科医を育てる会の5団体も今回の調査対象であった(アンケート調査のみ)。
6.評価目的:
 外務省とNGOの連携事業のひとつである「NGO事業補助金制度」を評価対象とし、本制度をその目的、プロセス、効果から総合的に評価し、今後のNGOと外務省の協力・連携のあり方についての提言を行うことを目的とする。
7.評価フレームワーク:
 本調査ではNGO事業補助金制度を、1)目的(NGO事業補助金制度の目的が妥当であったか?)、2)プロセス(NGO事業補助金制度のプロセスの適切性・効率性はどうか?)、3)効果(NGO補助金制度の目的が達成されたか?)の3つの視点から分析し評価を行った。対象国及び分野に関しては、NGO事業補助金制度において最も実績のある国のひとつであるフィリピン国の保健分野に絞ることとし、また、NGO事業補助金制度の中の3つのスキームのうち、「開発協力事業」に限定して調査を行った。残りの2つのスキームである「国際ボランティア補償支援制度」「NGO海外研修支援制度」は調査対象外とした。上記基準を満たす調査対象となるNGO事業補助金交付プロジェクトは9事業(9団体)であったが、実際の調査協力を得られた団体は7事業(7団体)で、そのうち4事業(4団体)については実際のプロジェクト現場の視察を含む現地調査を行った。
8. 評価結果
(1) NGO事業補助金制度の目的の評価
 NGO事業補助金の2つの目的、すなわち目的 1)「被援助国に対して、国家レベルの協力では対応が難しい、きめ細かな援助を可能にする」、目的 2)「本邦NGOの組織能力を強化する」について、目的の妥当性の視点から検討した。目的 1)については、ODA大綱、ODA中期政策、我が国の国別援助計画という上位概念との整合性と、また、相手国のニーズとの整合性を検証した。目的 2)については、ODA大綱、ODA中期政策の上位概念との整合性を検討した。
 その結果、上記2つの目的は上位概念及び相手国のニーズとの整合性があり、妥当なものであった。
(2) NGO事業補助金制度のプロセスの適切性及び効率性の評価
 NGO事業補助金のプロセスは、1)申請手続き、2)書類審査と採択の通知、3)完了報告書、補助金の支払い、4)プロセス全体を通じての関連する情報公開、の4段階からなるが、各手続きについて、各手続きと本制度の目的、我が国の上位概念(ODA大綱、ODA中期政策)、我が国の法・規則との整合性という評価基準に基づき、評価を行った。
 その結果、一連のプロセスは、我が国の補助金制度という枠組みに従い、NGO事業補助金の2つの目的にも整合しており、適切であった。しかし一方で、手続き的にも形式的にも補助金金額の確定に重点が置かれ、プロジェクトの成果についてのモニタリング及び評価がプロセスの中に充分に取り込まれていないと判断された。成果の面についても申請から報告に当たり、一貫して確認するための様式設定と手続きが必要であると考えられる。また情報公開に関しても、充分ではなかった。一方、プロセスの効率性に関しては、全体的に、国の補助金事業という枠組みと募集要領で定めたスケジュールの下で、時間的にも、コスト的にも効率的に行われていた。ただし、書類の不備、書き直しという点で多少の無駄も見られたので、より効率的な実施のためには、NGO側の事務能力の強化が必要であると思われる。
(3) NGO事業補助金制度の効果の評価
 NGO事業補助金制度の効果を確認するために、補助金交付を受けたNGOプロジェクトをケーススタディーとして、NGO事業補助金制度の目的 1)及び 2)がどの程度達成されたのかについて検討した。目的 1)の達成度については、「草の根レベルの成果が出ているか」、「地域住民のニーズにかなった事業であったか」、「地域住民の参加が得られ、自立発展性があったか」、「女性の裨益効果があったか」という4つの基準で、上記4つのNGOプロジェクトをケーススタディとして取り上げ、検討を行った。
 その結果、上記4つの基準は、4事業においては達成されており、目的 1)は達成されていたと認められた。しかし一方で、「地域住民のニーズ」及び「住民参加、自立発展性」の2つの基準の達成度については、プロジェクトにより差異が見られた。事業効果を高めるためにも、プロジェクトの審査に当たっては、この2つに重点を置くことが重要と考えられる。目的 2)の達成度については、財政基盤の強化及び組織能力の強化において一定の成果が認められた。
9. 提言:

提言1: 手続きの適切性を向上させるための提案 =申請書と報告書の様式の改善

 「申請書」の改善
案件概要(1)の「事業の目的及び内容」を400字程度で記載するよう文字数の例示を行う。さらに、「期待する成果」、「成果達成をはかるための指標」(定量的・定性的)もその中で記述する。
案件概要(2)に、審査に際し重要となる「基本的考え方」の4つの視点を盛り込む。すなわち、「草の根レベルの事業としての特徴、プロジェクトの選定理由」「地域社会のニーズ(地域・地区の開発計画を添付する)」「計画段階、実施段階、実施後の住民参加の度合い」「女性の裨益」をその記載項目に追加する。また、「プロジェクトの背景と必要性」に、継続案件である事業の場合は本年度の位置づけを明確に記入する。
 「事業完了報告書」の改善
「成果」の達成度を明らかにするために、報告書のフォーマットについて、現在の但し書きに、以下を追加する。「地域ごとの成果(申請書に記載した「期待する成果」とその達成度)」、「プロジェクトの自己評価(計画の妥当性、効率性(時間、費用)、有効性、インパクト、自立発展性)(定量的+定性的)」、「今後の方針」を記述する。


提言2: 目的 1)の効果を高めるための提言 =事業の審査基準の4項目(4つの基準)の中で、「地域社会のニーズが十分把握されていること。」「地域住民の自助努力による自立を促し、地域住民の参加があること。」への優先順位付け。


 審査基準における優先付け
申請事業の審査に当たり、4つの基準のなかでも「地域社会のニーズが十分把握されていること」「地域住民の自助努力による自立を促し、地域住民の参加があること」の2項目に優先順位をおき、審査することを提案する。これにより、目的 1)「被援助国に対して、国家レベルの協力では対応が難しいきめこまかな援助を可能にする」ことの達成度が高まると思われる。


提言3:プロセスの適切性の向上のための提言 =事業結果の報告と公開

 事業結果の報告と公開
ODA大綱の「内外の支持を得る方法」でも述べられており、国民に対するNGO事業補助金制度のPRのために、簡単にPRできる配布資料を用意し外務省の出先機関に置いたり、国際協力フェスティバル等の場を利用して、広報を充実させる。
ODA中期政策の「情報公開の推進」の項にも「情報公開の幅を広げるだけでなく、より分かり易く、使いやすい形での情報提供に努め、また、インターネット等の積極的な活用により情報へのアクセスを改善する」とあるように、提出される報告書等の情報をより有効に活用するために、情報の電子化、データベース化を進め、自由に検索、閲覧が可能なシステムつくりを開始する。


提言4:効率的・効果的な事業実施のための体制強化 =モニタリング・評価の導入

 NGOによる自己評価の義務づけ
事業完了報告の際にNGO自身による評価を義務付ける。そこでは申請時に明記された「期待される成果」とその達成度、及び事業によるインパクトについての評価は必ず含むこととする。この活動は、ドナーに対するアカウンタビリティ(説明責任)の強化、情報公開の促進のみならず、この活動を通じてのNGO組織能力の強化にも貢献すると思われる。
 現地大使館におけるモニタリング・評価の実施
現地大使館においてモニタリング・評価を行う。具体的には、現地大使館にてNGO担当のローカルスタッフを採用し、そのスタッフがプロジェクトを半年に一度は訪問し、事業進捗確認、情報交換を行い事業の改善を支援することが、より効果的かつ効率的な方法であろう。また現地大使館のスタッフに限りがある場合は、評価専門のコンサルタントや、ローカルコンサルタントなどの外部専門家を活用することにより、現地大使館のモニタリング・評価機能の強化を進めることも可能である。


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